PCオーディオに挑戦①: canarino filsの試聴
☆プロローグ
パワーアンプから始まっているのだが、ホームシアターライフを一新する。主な変更はメイン電源を200Vから100V主体にすること。また、DSDベースのマルチチャンネルサラウンドは真っ当な解決策が見つかるまで凍結。音楽は2chで牙を研ぎ、いつの日かの到来を待つとしよう。私のオーディオライフの出自がマルチチャンネルなので、これまで私はユニバーサルプレイヤーとAVプリ以外に選択肢はなかった。これからは上流も色々と選べる。それでPCである。
☆オリオスペックPC
オリオスペックのcanarino fils(カナリアの子供という意味か)というオーディオ用ハイスペックPCの試聴を1万円+交通費を払うとできるということなので、お願いした。なお、購入した場合には1万円分の値引きしてくれるというシステム。代表の酒井さんがPCを持って来てくれた。以下はその試聴記である。
まず、canarino filsは今に始まったブランドではない。最新型はDB4という機種である。これはキューブの全周がヒートシンク様のデザインになっており、冷却は良さそうだが、この種のフィンが細かいのは共振が起こり、音が劣化する可能性がある。使ったことはないので、分からないが、リスクは十分にある。例えばエアコンの室内機は中に細かいフィンを仕込んでいる。あそこに音が飛び込むと最悪の音質劣化になる。リスニングルームの定在波の吹き溜まりのような箇所にエアコンがあることは多い。お気をつけくださいな。
そういう経験から類推するに、DB4の実物を見せてもらってちょっと心配になった。また、DB4は差し替えるだけでグレードアップできるUSBカードやLANカードが1枚しか使えない。将来的な拡張性の選択肢は狭い。その辺の懸念は事前に話し合っていたし、オリオスペックとしてはcanarino filsの魅力を多面的に伝えたいところであろうから、スロットが3つあるcanarino fils9 Rev.5で試聴となった。
こちらの要望:
・ダウンロードやリッピングした音源のUSBを通した再生が卓越しているのかどうか確かめたい。
・嫁も操作できる実際的な簡易さが欲しい。
・PCの汎用OSが信頼できなかったので、RoonのOS (Roon rock)のようなオーディオ用途にカスタマイズしたい。
酒井さんの提案:
Roonを使い、OSをRoon rockにして、タブレットやスマホで操作する。また各種のインターフェースカードに変えること、電源を変えることで、オプションの効果を確認する、というもの。そういわれた訳ではないが、まとめるとそうなる。canarino fils9 Rev.5のOSをRoon rockと汎用のOSで切り替えられるようにしてきてくれたので、Roon rock以外も試せたのかもしれないが、そこは今回は確認していない。PCオーディオでは汎用OSこそが問題なので、Roon rockにする、すなわちRoonに全振りする、である。
☆試聴に使った音源
①マキシマムザホルモン、「予襲復讐」、「鬱くしきOP 〜月の爆撃機〜」(作詞・作曲: 甲本ヒロト)、「F」のリッピング
②一青窈、「ハナミズキ」の96kHz/24bitのWAV
③ユリア・フィッシャー、「ツィゴイネルワイゼン」、96kHz/24bitのWAV
④福間洸大郎、「英雄ポロネーズ」、11.2MHzのDSD
他
☆いざ、試聴
①スタート
PC: canarino fils 9 Rev.5 & OS: Roon rock
インターフェースカード:
SOtM, tX-USBhubIn 低ノイズPCI Express to USB Adapter Card
電源: 2回路
GaN192WファンレスACアダプター x 2
音源: 背面に挿したUSBメモリのハイレゾ
感想:
時間の都合があってそれぞれ全編を聴いたわけではない。まず家で日常使いしているWINDOWSのノートパソコンより明らかに音がほぐれていていた。聴きやすく、解像度を高める以外には何にも奉仕しないが故に、結局CDに劣ることになる非音楽的な体験では、ない。しかし、ショパンはDSD256だが、ピアノの音に聞こえなかったのが、気になった。くすんでいて、ピアノの魅力がない。ホルモンの元気さも一青窈のボーカルもフィッシャーのピチカートも概ね良く、満足したので以下は福間洸太郎のショパン「英雄ポロネーズ」のDSD256についてのコメントが主になる。他が良くなかったということではなく、逆である。
②電源を細分化
PC: canarino fils 9 Rev.5 & OS: Roon rock
インターフェースカード:
SOtM, tX-USBhubIn 低ノイズPCI Express to USB Adapter Card
電源: 3回路
GaN192WファンレスACアダプター x 2
USBカードのオプション外部電源にiFi audio iPower 9V
音源: 背面に挿したUSBメモリのハイレゾ
感想:
DSD256のショパンが少し良くなった。他の曲もどちらかと言えば良くなった。安定感を感じる。CDやSACDの表現は追い込むと音像にまといつく微かな擦れを感じる。あれがなくなった感じ。音像が安定したのだと思う。
③主電源の2つをグレードアップ
PC: canarino fils 9 Rev.5 & OS: Roon rock
インターフェースカード:
SOtM, tX-USBhubIn 低ノイズPCI Express to USB Adapter Card
電源: 3回路
canarino DC power supply 12V x 2
USBカードのオプション外部電源にiFi audio iPower 9V
音源: 背面に挿したUSBメモリのハイレゾ
感想:
DSD256のショパンが、ピアノに聞こえた。ピアノが固有の音色を取り戻したのだと思う。福間洸太郎かどうかは分からないが、ピアノである。音楽の実在感が上がる。GaNからcanarino DC power supply 12Vにグレードを上げた効果は、ひょろひょろぐらぐら接点の2ピンの電源ケーブルから、オーディオ用の高級ケーブルに変えたというのとは、違う。
そもそもGaN192WファンレスACアダプターの品位は十分に高い。canarino DC power supply 12Vは広義には同じスイッチング電源である。GaNアダプターからcanarino DC power supply12Vに変えてみると、前者には速度や回数という何か形式的なピッチというのか、一定のパターンのようなものに音楽が乗って再生されていた、という印象を受ける。つまり、それぞれの音楽が持つ固有のリズムに対して、それほど窮屈ではなく割と自然な、しかし確かにその音源に固有のものではないという意味で、一種の枷(かせ)のようになっていたのではないだろうか。一青窈のボーカルのピーキーさはほぼ解消。
canarino DC power supply12Vはそのあまり目立たなない枷を取る。その変化は、素晴らしくないものが素晴らしくなったというものではなく、むしろ、何も気にならない素朴さである。とってつけた外的なものというよりも、飾らない内的体験へと至る電源のように思えたのであった。
④USBカードをグレードアップ
PC: canarino fils 9 Rev.5 & OS: Roon rock
インターフェースカード:
SOtM, tX-USBx10G 低ノイズPCI Express to USB Adapter Card
電源: 3回路
canarino DC power supply 12V x 2
USBカードのオプション外部電源にiFi audio iPower 9V
音源: 背面に挿したUSBメモリのハイレゾ
感想:
拡張された音楽空間に鮮明な音像が舞う。Z軸の大枠はcanarino DC power supply12Vへの変更で復元されていたが、鮮やかな音像がダイナミックに動き回る音楽空間になった。こうあるべきだ!
このSOtMの画期的なtX-USBx10Gは次のように商品説明されている。「過去 12 年間、USB 仕様は進化を続け、最大 20Gbps の速度をサポートするようになりました。ただし、この速度をサポートするには USB タイプ C ケーブルを使用する必要があります。つまり、タイプ A からタイプ B のケーブルのみを必要とするほとんどの USB オーディオ デバイスでは、直接使用することはできません。これにより、tX-USBx10Gは、別途変換ジェンダーを必要とせず、ハイエンドUSBオーディオ機器に使用されるType A - Type Bケーブルに直接接続できる仕様の中で最速の速度をサポートできるUSB 3.1 Gen 2×1仕様を採用しています。tX-USBx10Gのサウンド面での最も顕著な改善点は、歌手の声や楽器の質感が歪みなく非常に明瞭に表現され、まるでその場にいるかのように聞こえることです。また、互いに音楽をやり取りする演奏者の感情や、マイクが設置されて録音された場所までもが、よく分かりやすく表現されます。しかし、tX-USBx10Gを使用することでの最大の改善点は、細かな表現力の向上だけでなく、美しい音楽の味わいを生き生きと感じられるようになったことだと言えるでしょう。技術面でも音質面でも格段の進歩を遂げたtX-USBx10Gは、まさにサウンドの完成の段階にある。tX-USBx10G は、オーディオ システムで「音楽の魂」を感じることができる特別な体験を提供します。」最大10Gbpsをサポートするこの高速USBモジュールは、今時の光回線に匹敵する速度を実現するのであるから、USB DACとPCをUSBケーブルで繋ぎたい人を強力にサポートするのである!
しかしだ、DSD256のショパンは満足ではない。USB DACのレベルももちろんあるのだろうし、仮置きしたcanarino filsはパーツをとっかえひっかえしてその度に電源を切っている。DSD256ほどの巨大データを再生する準備が整っているわけではない。1000円のUSBケーブルというのも問題かもしれない。PCもその他全ての機器を接地していなかったのだから、アースの問題もある。コンセントの極性もあるかもしれんしね。スピーカーセッティングもやり直す必要があるだろう。背後壁とリスポジの距離比がよろしくないのではないか。
そういうことを電源の専用化を進めてSOtMの最新モUSBジュールを積んだcanarino filsは教えてくれている。DSD256のショパンの音が出過ぎており、PC以下の環境がそれについていってない結果、音楽空間が肥大化していた。馬はいいのだろう。この馬に乗るべきではないか。そしてDSD256を御せるように環境を整えればいい。優れたオーディオ装置の導入は人間の機能と感覚を拡張すべきだ。そうでないならば早晩消えていくことになる目新しさだけ、となるだろう。一青窈は一青窈がリスニングルームに比類なきリアリティーで顕現していた。情感がみなぎり、素晴らしかった。他も満足。
⑤USBメモリから内臓SSDに音源を移す
PC: canarino fils 9 Rev.5 & OS: Roon rock
インターフェースカード:
SOtM, SOtM tX-USBx10G 低ノイズPCI Express to USB Adapter Card
電源: 3回路
canarino DC power supply 12V x 2
USBカードのオプション外部電源にiFi audio iPower 9V
音源: 内臓のSSDストレージ
感想:
USBメモリから内臓SSDに音源を移したら、音は良くならないといかんのじゃないか?しかし、良くなったとは感じなかった。むしろ音像定位が不安定で、ぬるい再生音に思えた。これはどうしたことなのか。改めて、天板を外して筐体内部を見せてもらっていると、SSDがぶらんと固定されていない。酒井さんは各カスタマーの要望に基づいて色々と組み替えるし、現場で入れ替えられるようにしているので、そういう処置にしたのだろうし、製品版はちゃんと固定される。あくまで、試聴機は仮の設定。このぷらんとしたSSDが原因で、USBメモリと音質が同等であるか、むしろ、劣るという結果になったのであろうか。さすがにUSBメモリに劣るのは困る。
USBで接続する外部電源のケースにSSDを入れた方が良いのだろうか。しかし、また電源を増やすとコンセントやケーブル、設置するスペースやボードも取り、コストがどんどん傘増しになる。
☆ストリーミング
以下、ストリーミングの試聴。さほどにストリーミングがやりたいわけではないので、簡単に済ませた。ノーマルの音質と将来の拡張性は確認できた。
①そのままLAN直結
②高額のLANカードにして試聴
③LANカードの外部電源オプションを使い、主電源の2つと合わせると合計4つの電源回路で、Roon & Qobuzでストリーミング
USB DACに繋げることに資源を全振りして、LANはノーマルで将来やりたくなったら検討すれば良いのではないかと思った。
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