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FOCAL, Sopra no.2…by LUXMAN

☆プロローグ

軋むような異音にはずっと気付いていた。ただ、オーディオルームの異音というのは出どころが分からないことが多い。FOCALのスピーカーのことでLUXMANのサービスの方と最初に話したのは、2年前だった。異音の正体を突き止めて、どういう対応をするべきなのかをはっきりさせたいということで、問題箇所の切り分けをすることになった。ただ、切り分けの作業でははっきりせず、それきりになっていた。

2ヶ月前、映画を観ていて、また見つかった。

『DIVE ダイブ 海底28メートルの絶望』(2023)という映画のDVD。製作はドイツだが英語圏の役者で撮影はマルタ。海中のスリラー。サラウンドで爆音にすると凄まじい没入感で怖いのだが、60分を過ぎたところでSR、右サラウンドスピーカーのことね、から聞き覚えのある異音が。リピートしても異音。うーむ、いかんなと。

またしばらくして、「PCオーディオに挑戦⑦:DSD256」にて次のように書いた。

「私のスピーカー、Focal, SOPRA no.2は調子が悪く調整の必要があるのだが、それでもウーファーが遅れを取るような音源は、音楽ソフトでは、ごくごく稀である。しかし、このマイスターミュージックのまさかクラシックギターの録音による高速の低音の襞にSOPARA no.2のダンピングの効いたウーファーユニットがあっぷあっぷしていた。。。」

3:00~3:20で異音がする。

これはクラシックギターである。爆音にしているわけでもないのに、クラシックギターのソロでスピーカーから異音がするというのはまずい。これでやっと重い腰をあげて、再びLUXMANに助けを求めることにした。腰が重いというのはスピーカーの修理なんてねえ、考えただけでも大変だし、絶対にスピーカーに異音の原因があると断定することだってできないでしょう?

前置きが長くなった。見てもらった結果を先に述べると、ウーファーユニットを交換することになった。ウーファーユニットの何がというのははっきりしていない。何台のユニットを交換するのかもはっきりしていない。2年前に相談した折には、ミッドのユニットを交換する必要があるかもという話になっていた。ミッドから異音がする気がしたのだ。なお相談は2年前も、今回も、Y氏であり、LUXMANのFOCALスピーカー担当。私のスピーカーを私よりも丁寧に触ってくれるし、磨いてくれるお方。オーディオの魂が宿るのはスピーカーだからね、ぜひお任せしたいと思える人だった。LUXMANはまだまだFOCALの日本代理店を続けるみたいだから、これを読んだFOCALユーザーの方は安心してください。そしてトラブルの際にはまず買ったオーディオショップに相談してくださいね。相談できない店では買わない方がいいですよ。私はダイナミックオーディオのA氏に感謝を。

さて、最初に作業の展開を書く。次に、スピーカーの異音に気付くまでの紆余曲折をかいつまんで書く。「ルームチューニング②」で他所宅のボイスコイルについて書いた次に、よもや自分のスピーカーのユニットについてこのような記事を書くことになるとは思いもよらなかった。。。

☆LUXMANのサービスのY氏との半日

先ほどマリア・エステル・グスマンのクラシックギターの話をしたが、もちろん聴いてもらったが、異音がしない!Y氏が来訪すると決まってから3回も異音を確かめたのに。(今、もう一度確認したら出た(^^)) それで今日の課題曲はこちらに。

ビリー・アイリッシュの楽曲

冒頭は30回くらいかけたな。この曲は昔CDで聴いていた時は認識していなかったし、最近CDをリッピングしたのもただビリー・アイリッシュが好きだから。さらに低音のソリッドさを確認したいなと思って、44.1kHz/24bitのflacを一曲ダウンロードしたのも異音の確認が目的ではない。しかし、おかしいと思って、リピートして、爆音にすると、おかしいのだ。「異音」の話だが、初めてラックスとコンタクトをとった2年前以降も、オーディオの試聴に10回くらいは来客があるが、スピーカーの異音について勘付いた人はいないはずだ。(^^) まあ、ボロを出す曲はこちらからはかけないからだが。そう言えば、あるごりごりのオーディオマニアがこのビリー・アイリッシュを聴かせてほしいと言ってきたこともあったな。(^^)

とにかく微妙なわけ。

でも、Y氏はちゃんと認識してくれた。ウーファーを優しく押してボイスコイルの当たり具合を確かめが、触診に異常はない。ネジがおかしいはずだと私は予想していたので、我が家に4本あるSopra no.2のたくさんあるネジをY氏は一本ずつ確認してくれて、一台、SRのスピーカーターミナルの付いているパネルのネジ6本中、4本がおかしい、しかし、パネルのバタつきは、ない、と。むうぅぅ。すると、ユニットをとめるネジを隠しているリングを外すとなる。リングを外してネジの具合を見てもダメなら、いよいよユニットを外す、ご開帳、ということになる。

ウーファーを押して、ボイスコイルの具合を確認するY氏。

ということでまたビリー・アイリッシュを爆音で再生しながら、本当にリングを外すのか、Sopra no.2のあちこちを2人で触ったり押したり。で、「やりましょう」と。Y氏がなかなか格好良く思えてきたぞ。

デカい音なのにサラウンドSPのウーファーに耳を寄せてくれるY氏。

結局、FLのリングを外すことに。慎重に。傷つけないというのが無理な構造であるが、Y氏が1回目のトライ。2回目は私がトライ。再びY氏が3回目をトライしリングが外れた。Y氏がネジを確認。異常なし。ウーファーはダブルなのでもう一つリングがあり、外して、もう一度ネジを確認。この間にビリー・アイリッシュの冒頭を繰り返す。異音はそこにある。しかし、異常が見えない。リングを外しても異常に接近していない。

ユニットの周りのリングは「えぐい」外し方になるとY氏は言うが、とても丁寧にやってくれた。外すとユニットをキャビネットに固定するネジが出てくる。

ネジを取る。ユニットは想像よりもずっと重たい。上のユニットを抜くと、ネットワークからの内部ケーブルが、臓器からの血管のように、露出する。このケーブルがキャビネットの内部で何かに当たっているのかもと、Y氏。それで上部ユニットをY氏が持ってビリー・アイリッシュ。(^^) 重量級のユニットを両手で掲げて、どうですか?と尋ねるY氏の写真を撮ってから、キャビネットの空洞を横目に覗きながら、ばたばたする音が聴こえた、異音が見えた。ユニットだったんだ。Y氏が抱えた手の上でファストン端子に伸びている銀色の髭のようなケーブルがばたついて、ウーファーのカップともふもふの間で音を出している、ように見えた。

1つ目のウーファーユニットを外した。
エンクロージャーの中の配線の具合を確認

ストロークの幅がおかしいのか、ボイスコイルから伸びてくる端子のついた銀髭ケーブルの取り付けがおかしいのか、分からない。とにかくそこは弄れないのでユニット交換という方向性を確認。ユニットはフランスから2〜3ヶ月かかる可能性があるのはOK。ユニットは一発10万にはならないという。で、下のユニットも外して、Y氏と私で1つずつびろーんと内部ケーブルが伸びた状態で、ビリー・アイリッシュ。どっちのユニットが異音を出しているのか分からない。FOCALの自慢のユニットの位相はピッタリですねー、でもダブルウーファーだけじゃなくて、2ch両方ともで合っといてくれないとねー。

内部配線と吸音材
FOCAL自慢のウーファーユニットはずっしりとした重量級。。銀の線が当たっているのか、ストロークの長さが問題なのか、ストロークの動作をする機構に問題があるのか
ボイスコイル
ウーファーを2つ取った。

という調子で、Y氏はもちろんだろうが、私もあんまりビリー・アイリッシュをどかどかかけて嫁がむくれるのではと疲弊した。この先のユニット交換の件を具体的に確認して、外したのを戻す。またビリー・アイリッシュ。えー、異音がないとY氏と目を合わせる。いやいや、異音はある、ちゃんと。(^^) やれやれ。で、サラウンドの方も見てほしいと、ケーブルを繋ぎ変えて、ビリー・アイリッシュで確認。異音。嬉しいような、とほほなような。Y氏とビリー・アイリッシュに乾杯して、今、普通に音楽を聴いています。ええ、皆さんも私のSopra no.2に異変が隠れているとは思いもよらないでしょう。しかし、これは根治させるべきだ。爆音ビリー・アイリッシュだけならば、まあビリーを聴かなければいいだけだが、クラシックギターでアヴェマリアで異変を感じるのだから。

サラウンドスピーカーのターミナルのネジを確認するY氏

このnoteでの記事は、パワーアンプから始まった。初回は「新しい世界へ」と題した。次にPCオーディオに取り組み、100Vに変更する電源工事でちゃんと専用アースを活用した。定在波をスピーカーの背後の空間で調整する新プランをゆっくり進めている。だから、あと少し、自分にぴったりのDAC、PCMとDSDのそれぞれの固有性を表現できる2ch用のDACを新調すれば、、、リーチだって思ってた。終わりはないんでしょ、リーチって思わせてくれたらそれでいい。。。嗚呼、オーディオ道。(^^)

☆今日にいたるまで

Y氏は、「車の異音を探すのに似ていますね」と言っていた。昔、ディーラーでサービスをしている友人が、どことも知れないノイズ減をあちこち触りながら車中を探しまわるのはとても大変だと言っていた。異音の種類にもよるだろうが、走行しないと出ない異音かもしれない。走行すれば音は必ず出る。そうすると、走行中に出る通常の音が、当の異音をマスクするので、異音に気付きにくい。こうした車の異音は、耳鳴りに似ている。耳を両手でしっかり抑えると耳鳴りがする。あれは腫瘍等の病気でなければ、血流等の身体が通常出す音である。意識しない外界の音が身体の音をマスクしているから、耳当てをしたり防音室に入ると耳鳴りがするのである。それからまた、心臓や肺の動きが出す音を、通常、無視しているように、耳の周辺の身体の音を私たちは無視する。この2方面から、私たちは耳鳴りに出会うと驚くのである。

スピーカーの異音は無視できない。スピーカーには正確に音源を再現する以外の目的はないはずだ。しかし、このスピーカーの出す異音に、今回そうであったように、なかなか気付かない。異音がマスクされているのである。自分の状況以外にも、考えられる要因を列挙してみる。

①ボリュームが低い
小さな音だと実際上のS/N比を稼げず、ノイズが目立たない。これに関しては、ボリュームを上げてテストすればいいだけなので、実際に恒常的に行ってきた。

②環境騒音
防音室ならば外音を遮断してくれるわけだが、まだ足りない。リスニングルーム内ののあらゆるものが共振している。音を発しているのは、音源だけではない。リスニング環境の出す音は機器の異音をマスクする。リスニングルーム内を再生機以外はダンピングすることを徹底する必要がある。

例えば、私のルームにはLEDのライトが合計10個、高さ3m以上のところに付いている。ライトの中にはバネやコイル状の部品がある。ある時ライトに向かって大声で話しかけてみると、ライトの1つが鳴いているのに気付いた。全てのライトの鳴く部品にブチルテープをぐるぐる巻くと、話しかけてもライトは無音になった。

例えば、私のルームには120インチの張込み式のスクリーンがある。このフレームに向かって話しかけると、フレームが応える。びびょーんって。フレームの周囲にカーオーディオのデッドニングによく使われるレアルシルトをばんばん付けたが、鳴く。それで購入したアバックに相談すると、メーカーを呼んでくれた。私のはキクチのプチ高級スクリーン。するとメーカーの人は触れないと。実はスクリーンの取り付けネジが折れているが、それを交換するには全部外すことになるが、責任を持てないと。そこで数年前に施工した業者に連絡すると、実は、、、と抜かしやがる。すったもんだの末に、またキクチのチームとアバックの人が来てフレームを付け直し。その際にフレームの中のスプリングの鳴きを殺すために、ニードルフェルトを全周に仕込んだ。以来、フレームはどんな大声で話しかけても、応じなくなった。

スクリーンの再取り付けに来てくれたキクチとアバックの人々が、再設置する前に吸音材をフレームに付けておきたいと言い出した私の異様な要望に付き合ってくれたのであった。スプリングがニードルフェルトに埋没するくらいに充填すると、エコー様の異音はちゃんと消えた。大変助かりました。ありがとうざいます。グレースマットは極めて素晴らしいスクリーンだと思います。

また例えば、ルーム内のスイッチが、、、制振材を貼りまくった。次は、防音扉の回転させて密閉するハンドルの付け根をデッドニングしないといかんのかと思っていた。

その他、諸々やった。床をかんなで削ったこともあった。ガタついて異音がするのかと。また、ルームとスピーカーの特性を理解する前にWELL DELTAを履かせたのも失敗だった。一時期、WELL DELTAが軋むような異音の原因だと疑ってた。落ちついたらまた履かせてみようかな。。。こうした諸々で私の防音室の内部は異音の切り分けをうまく進められなかった。少しずつ気付けるようになったが、それでも、音量をデカくしないと発生しない異音は、今回のように、なかなか対応するのが難しいですな。

このルームになって割とごく早い段階で、床上でスパイク&受けから、WELL DELTAを履くことにしたのは間違いだった。切り分けが出来なくなり、固有性を見失ってしまった。ただし、床に直にスパイク&受けよりも、スパイク&WELL DELTAの方が明らかに高音質になるのだから、脱がせる踏ん切りは無理。しかし、、、WELL DELTAとかのウェルフロート系って考えてみると、浮かせてやることで、その機器の固有性を解き放ってくれるわけだからね、鳥が先か卵が先かみたいな循環論だね。オーディオあるあるのアポリアだ。
KRIPTONの一番デカい鉄球入ボードの上にWELLDELTA。
ボードに載せてみて、床のがたつきが異様に気になって、かんなで凸凹を削ったこともあった。
毛氈(フェルト状の純毛)を敷いて、がたつきを緩和させる作戦を某ベルウッド氏から教えてもらった。氏が厚いのはダメだとしきりにいうので、毛氈の厚みも比較した。これは1cm厚。今は2mm厚。スピーカーをのせかえるのはほんとに大変だった。セッティングもし直すことになるしね。毛氈で高音質になったというより、劣化がほとんどなかった。それだけならばあってもなくても良いことになるが、毛氈があるとSPの移動が楽なので、SPセッティングが一気に加速するという恩恵があった。
セッティングのレベルが上がるとますます異音が気になって、WELL DELTAを外して、炭素剛のインシュレーターにしてみた。スパイク受けだけだとボードとの接地面接が小さく、ボードの表面に受けの縁が食い込んで不安定になっているのではと思ったから、taocのハイカーボン鋳鉄インシュレーターを噛ませた。これも安定に寄与して、激しいパッセージでもぶれなくなった。それ故に、時折の異音に悩まされた。(^^) ほんと、色々とスピーカーセッティングを試してきたが、これまでのオーディオ生活の半分以上になるかも。そして今日はっきりしたのは、床のデコボコとか、インシュレーターとか何とかではなく、ウーファーユニットなのであった。ぐはっ


③定在波
極めて面倒である。これは音を移動させるので、異音の発生源と異音がしている場所を離してしまう。定在波のコントロールを今後も研究しないといけない。理屈ではないので、ルームチューニングの記事を意識的に書くことにしよう。やはり、あやふやでも、書いてみて初めて気付くことは多い。既に自分が書いた定在波のdB数のデータを疑い始めた。やはり書くのは大事ですね。

定在波コントロールグッズを大量に自作した。大切なことはそれをどう設置するかだ。居間に並べて思案に暮れても、嫁は話しかけてくれたよ。


それで海の彼方のウーファーユニット待ちのSopra選手は、今もしれっと良い音で鳴っております。(^^) なんかウッドベースの軋む音が、Sopra選手の異音に似ているが、大丈夫。これは違う。ウッドベースの軋みは定位している。異音はバッフルから。散々、聴き込んだからな、異音くんのこと。くたびれたけど、楽しかった。

「SUPER AUDIOCD」のロゴが見えるが、普通にCDをリッピングしただけなので、44.1/16のWAVね。良い録音だ。トリオをブースで分けて録っているが、バラけていないし、自然だ。トリオがステレオ空間内にまとまりながら、異なる楽器の固有性が出ている。少なくとも2年前にCDで聴いてた時よりも再生レベルは圧倒的に高く感じる。まことにオーディオは謎が多い。


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