見出し画像

PCオーディオに挑戦⑦:DSD256

☆プロローグ

別にDSDの再生が自分の機器が得意だとは思わない。むしろ苦手なのではないかと疑っている。しかし、DSDであると、ついつい、ありがたがってしまう。好きなのである。あの丸みを帯びた濃密な聴感が。オーディオのデータの種類としてDSDが良いのか、PCMが良いのかということはさかんに議論されているが、映画であれば明らかにPCMが望ましいのだろう。映画の試聴は映画館、スクリーンを備えたホームシアター、そしてスマホを使った視聴に至るまで、ch数までもが異なるのだからそれぞれに合わせて調整できる必要がある。DSDはそれが難しい。2chピュアオーディオでは映画と同じレベルでユーザーの調整というのは不要であろうと思うのだが、それでもDSDかPCMかという論争は尽きない。

DSD256を再生していて特有のノイズが入ることに気付いた。PCオーディオを始めた今に至るまで気付かなかったのだが、DSDファイル再生と同種のノイズがSACDでも入っていたかもしれない。音源を買ったmoraのサイトではDSDは次のように説明されている。

「DSDの原理上発生する超高域の量子化ノイズは、サンプリングを上げることで影響を低減することが可能。」

市販されているファイルで最高のサンプリングレートであるDSD256のファイルを再生してノイズを感じているのだから、機材を使って何らかのアップサンプリングを試してみる必要があるのだろうか?DACでのアップサンプリングではなく、roonのデバイス設定を触ってみるべきかもしれない。ただ、アップサンプリングという方法を私は基本的に信じていないので、あまり乗り気にはなれないのだが。あるいは、DSDのサンプルレートをどうとかするという小難しいことよりも、ゲインの問題なのだろうか?意外とこれは効くかもしれない。ゲインのup/downを試してみることにしよう。ただ、ゲインの低い音が好きではないので、この解決策もあまり乗り気ではない。(笑)

以下、高額なDSD256の作品をいくつか購入したので、現時点での印象を書いておこう。簡単にまとめれば、上でDSD256の小言をぶつぶつ書いたが、やっぱりDSDが好きだし、PCオーディオを始めて本当によかったと思う。じゃあ文句を言うな!という話なのだが、貪欲なんです。(笑)


☆マイスターミュージック

マイスターミュージックのHPより。平井さんが握っているのが『「エテルナ・ムジカ(永遠の音楽)」という名を冠したマイクロフォン」』で、使い込んで、なんと20年超とか。

平井義也さんという元SONYミュージックの方がトーンマイスター(音の匠、つまり卓越した音響技師の意味のドイツ語)としてレーベルを主催している。曲や製作年代や楽器の固有性を捉えられるようにワンポイントマイクを設定して、DXD384kHzで録音するというのが特徴のようだ。DXDというのはPCM的なもののように思われる。DSDはその特性上、マルチトラック編集ができない。しかし、Pyramix(ピラミックス)というDAWは「DXD」という編集可能な状態で操作するようである。要するにPCMということなのだと思うが、不詳である。

平井さんは「世界に数ペアしかない、特殊な銅からハンドメイドで制作されたデトリック・デ・ゲアール製(スウェーデン)マイクロフォンやクラシック音楽専用にチューニングした機材を用い音楽ホールでレコーディングを行っております。 高解像度のサウンドに加え、専門の立場からのアプローチによる細かな編集作業を重ね、音源制作を行ってい」るとのこと。この稀少なハンドメイドのマイクロフォンの「最大周波数帯域は8Hz ~200KHz、指向性も単一指向、無指向、双指向と自由に変えることが出来る」代物で、左右chを合わせて、DXD384kHzということらしい。

そのDXD384KHzのPCMとDSDがmoraにあり、DSD256でアルバムを2つダウンロードしてみた。moraにはマイスターミュージックのレーベルでflac 384/24のものもあるので、また次回に試してみよう。

①マリア・エステル・グスマン『大聖堂』

媚びが少ない、ストイックな演奏がいい。

moraの作品紹介には、「ロドリーゴにして「セゴビアの後継者」といわしめ、その完璧なテクニックと高い音楽性で、「ギター界の女王」と称えられるマリア・エステル・ グスマン。その経歴は華々しく、11歳でスペイン国営放送局主催コンクール優勝、1986年アンドレス・セゴビア国際コンクール優勝を初め、世界の主要13の国際ギターコンクールにて優勝、2012年にはセゴビア財団より、アンドレス・セゴビア賞のメダルを授与されている。」とある。

クラシックギターなのかフラメンコギターというのかは分からないが、ガットに指先が当たる姿が容易に浮かぶ録音。私のスピーカー、Focal, SOPRA no.2は調子が悪く調整の必要があるのだが、それでもウーファーが遅れを取るような音源は、音楽ソフトでは、ごくごく稀である。しかし、このマイスターミュージックのまさかクラシックギターの録音による高速の低音の襞にSOPARA no.2のダンピングの効いたウーファーユニットがあっぷあっぷしていた。。。ギタリストも立派だけど、マイスターミュージック凄いね~。もう少し色気がほしいとろこだが、PCMにしたらどう変わるのだろうか楽しみだ。ホールに流れる空気の音はちゃんと聞こえるが、冒頭に記したようなDSD由来?のノイズはあまり感じない。。。

②藤村俊介、早川りさ子、松井久子、『ハバネラ ~チェロ小品集~』

元N響の藤村俊介さんのチェロがメインで、ハープを2台従えており、ハーピストは早川りさ子さん(N響)と、松井久子さん(日本フィル)という。当然、チェロを中心に据えながら、ハープという大きな楽器を2台使って、どこまでハープの固有の音波を捉えるかなのだが、ハープ音が膨らみがちで、色気が薄れる。チェロは擦れる細かく煌めく音から、ふくよかな胴鳴りまで、しっかりした音像を結ぶ。しかし、ハープは茫洋としており、あの艶めかしい独特の音色が表現されているとは思えない。地獄の底に沈んだエウリュディケーへと続く恋の道を切り開くのがオルフェウスのハープだからね、ハープは奥深いところで死の音を宿しており、それがこの世の者の手にかかると独特の艶かしさとなる。ここでのハープはオルフェウスのよりもでかいのであろうが、深いところから響いてこない。そういう細かさが、想像ではなくして、耳に届く音として表現されていない。無論、これが現状の私のシステムの諸問題を示しているということを否定しない。ところで、DSD的ノイズはここでも軽い。。。

③新イタリア合奏団、ヴィヴァルディ:「四季」他

新イタリア合奏団の『四季』はどうもたくさんあるようだ。私が彼らの日本公演に行った年のコンサートの音源もあったが、新録にした。演奏に関しては、いうべきことはない。コンマスのフェデリコ・グリエルモがvirutosityを発揮すると、すべてを持っていくことになる演奏も四谷の会場で聴いたのと同じものである。圧巻である。録音なのだが、マイスターミュージック一流のワンポイントマイクは15名くらいの規模の演奏をどう捉えるのかであるが、演奏家の輪はしっかりできていた。少し小さく感じたので、8人くらいまでしか音像を形成できてなかったかもしれない。これは私のシステムの問題の可能性が高い。前回の『PCオーディオに挑戦⑥』の最後に触れた問題であろう。そこで拡散を試してみた。

拡散・吸音材の配置をセンターラインに乗せて、高さを60cm上げた。もう一本が背後に隠れている。背の高いの脇に黒い影が見えるが、あれは本当に影。倒れてきたらどうしようという圧迫感が強く、定位は確かめられなかったが、音数が増えていた。この音質改善は面倒だ!
これが普段の様子。arteのcolumnを使っているがこの手のものはヘルムホルツ共鳴器となるので、ノイズ源ともなる。それで上にぽこっと乗っているのはマグネシウムである。マグネシウムを置くだけでも、共鳴する拡散・吸音材の固有音を消せる。

今更なのだが、DSDがもたらすと想定されるノイズフロアは、やはり、低い。


☆Another Answer

前回の「PCオーディオに挑戦⑥」で紹介した山本剛「MISTY」に先行するキング関口台スタジオでのダイレクトカット録音が試みられた『Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio』からの別テイクに、PCM192kHz/32bit (floating)で新たに録音された4曲を加えたもののようだ。『Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio』の別テイクの4曲はおそらくはDSD録音なのだと思われる。

それのDSD256を聴いた。非常に懐の深い漆黒のなかから井筒が歌いかける。鳥肌ものの顕現である。しかし、いくつかのSACDでも聞き覚えのあるノイズがある。山本剛の「MISTY」よりも、井筒のパフォーマンスは闇を必要としている。roonでは「MISTY」よりも井筒のアルバムのダイナミックレンジは広い。ぬっと浮かび上がり、ビブラフォンが響き渡る。マイスターミュージックの録音環境よりも、このキング関口台スタジオのブースを活用しただろうスタジオ録音は静かであろうが、より多くノイズを感じる。音のしっとりとした艶はマイスターミュージックのものよりも好みであるが、尚更に、ノイズが許容できない。

さて、これはどうしたものか。














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?