私が英語書を108冊書くことになった理由
長沢寿夫(ながさわ としお)
第1回 君、英語教えられる?
私は23歳のころ、兵庫県の川西池田(宝塚の近く)に住んでいました。
ある日、自転車で走っていたら、急に誰かに呼び止められました。
その時はどなたかを知らなかったのですが、近所のブックスオガタという書店のご主人でした。
そのご主人は急に、
「君が英語を教えられるって聞いたんだけど、できるの?」
と聞いてきました。
「中学生向けの学習教材を買ってくれた人に、ひと月に一度、家庭訪問をして英語を教えるというのを今度はじめるんだけど、君、英語を教えられる?」
と。私は
「はい、教えられます。できます」
とすぐにこたえました。
私は学生のとき、英文法がわからなくて困っていた時期がありました。その体験を活かして、できるだけかんたんに、どんな人でもすぐに英語がわかるようにしたい、英語を教えたい、という思いがふくらんでいたときでしたので、これこそまさに渡りに船です。その場ですぐ、二つ返事でその仕事を受けました。
そのレッスンではじめて教えたのは、「発音とつづり」についてでした。
「A B C D」を「ア ブ ク ドゥ」と覚える
音とつづりが、これでよくわかるのです。これがとても好評でした。
喜んでもらえたことで、英語を教えるということが本当に楽しくなり、やりがいがある仕事だと感じることができました。
私はこれをきっかけに、〈これから英語を教えることを仕事にしていこう〉と決めました。
私の生まれは、兵庫県の丹波篠山です。英語を教える楽しさを知ってから、当時住んでいた川西池田から実家の丹波篠山に戻り、家で塾をはじめることにしました。
最初は、もちろん1人も生徒がいません。
母も協力してくれて、近所の子どもたちに声をかけ、やっと生徒が5人集まりました。
その生徒たちに、私は、体験でつかんだ英語上達のコツを教えていきました。
はじめは、日本語を英語にする英訳の方法を集中して教えました。
のちに私が本に書くこととなる、英語を全部法則化するという教え方です。その最初の1つが
[か、とんぼ、つばめの法則]
です。
か、とんぼ、つばめを英語にするとき、どんな順番で並べたらいいか、それがすぐにできるようになるのがこの法則です。
並べなければいけないことばがいくつもあるときは、小さいものから大きいものに並べていけばよいのです。
か < とんぼ < つばめ
いかがですか。もう覚えてしまいましたね。
これでもう迷うことはありません。
こうして、独自の方法で、どんなに落ちこぼれてしまった子でも、絶対に迷わせずに、つまずかせないことを一番に考えて教えました。
学生からの評判もよく、どんどん生徒が増えていきました。
私は教えるのと同時に、英語を習いにも行っていました。30人ほどの先生に教えていただいたと思います。
今のようにインターネットで情報を調べることができないので、あちこち自分の足で歩いて、塾があれば訪ねて行って、英語を教えてほしいと頼んでまわりました。
中学英語を教えてほしいとお願いすると、ほとんどの先生がすぐにOKしてくださいました。
ですが、帰るときには、「きょうは授業料をもらうけれども、もう二度と来ないでほしい」と言われることがほとんどでした。
私は、自分が教えられるようになるために、中学英語についてたくさんの質問をしました。どんどん質問を重ねていくと、生徒からきかれたこともないものになっていくので、ほとんどの先生が、最後は答えられなくなっていました。帰るときには、「あなたのほうが力があるから」と言われて、それ以上教えていただくことができませんでした。
私は、それでも、中学英語のことを、そして教え方を学びたくて、どんどん新しい塾を探しては習いに行きました。
そうしてたくさんの塾の先生に英語を教えていただきましたが、ほとんどが同じような例文を使って同じような教え方している先生ばかりでした。私たちが中学や高校の授業で教えてもらってきたことそのままでした。
私は、これ以上習いに行っても仕方がないと考え、独自の教え方を見つけることにしました。
(第2回 誰にも真似できない私だけの教え方をみつける に続きます)