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ドイツの失業保険②

さて、コーチング後も1か月に一度は連邦雇用エージェンシーから呼び出しだ。

★3回目呼び出し
通知を見てびっくり。
また担当者の名前が違う。それに今度は建物も組織名も変わっている。
行き先自体は家から近くなり、自転車で通えるようになったから便利といえばそうなのだが、、、なぜこの別の機関に行かなければならないのかわからないし、それになぜこうも頻繁に担当者が変わるのだろうか、、、腑に落ちない。
でも、とにかく言われたコーチングをちゃんと受けたのだから文句を言われる筋合いはない!、と思うことにした。

さて、指定の日にその新しい建物に行き、まずは全体説明をうけた。
要するに、連邦雇用エージェンシーと同じ組織なのだが、もっと個人的に、こと細やかに相談に乗り、支援するためにつくられたのだそう。同じ建物内には、仕事を探すために自由に使用してよいPCやプリンターが置かれた部屋があったり、コーチングも受けられるようにもなっているとのことだった。

確かに中央の役人は、窓口という役割のみで、大して役に立たなそうだった。コーチングを受けてみて、少なくとも私のケースに関して言えば、役人だってあのくらいのアドバイスは、ちょっと研修かなにかをうければできるだろうに、と思った。
でも、何事も分業というか、専門分野や担当がきっちりしているドイツだから、自分の仕事以上のことはしないのだろう。
いずれにしても、ちょっと期待が膨らんだ。ここでなら、もっとちゃんと話ができるかもしれない。

★4回目呼び出し
新たな担当者との初顔合わせ。
コーチングで作成しなおした履歴書や職歴書などの応募書類、いろいろな資格証明書、前職の職務評価、とにかく思いつく限りの書類を持って行った。

、、、ちょっと期待して臨んだ呼び出しだったが、すぐに私は失望した。

まず、また引継ぎがなされていなかった。
だから、またゼロから失業までの経緯を説明しなけばならなかった。
さらに、コーチングの結果も-絶対に報告書があがっているはずだが-その担当者の女性はまったく目を通していなかっただけでなく、どうだったのかと聞いてくることもなかった。
どうやら、彼女は、外部の機関のコーチングなど、あてにならないと考えているようだった。

なるほど、だから、内部にコーチングができる機関をつくったのか、と思った。確かに経緯の見えない外部の組織による報告に懐疑的になるのもわかる。人は自分以外の人間がしたことを-専門分野がかぶっている場合には特に-肯定的にはとらえられないものなのかもしれないし、とりわけその担当者は自分が正しいと信じて疑っていないタイプのようだった。だから、自分の目の届かないところでなされた判断など、目を通したくもないのだろう。
ただ、私にとっては、それは連邦雇用エージェンシーないしはその担当者の問題であって、私の問題ではない。私は言われたとおりに受けただけだ。そこはもっとちゃんと尊重するのが大人の対応ではないだろうかと思った。

さらに、彼女は私の応募書類にも、もっといい書き方がある、とケチをつけた。私はつい怪訝な顔で、「でも、それはコーチングで作成したものですが」と言ったら、「わかっているけど、10人いれば10通りの書き方があるのだ」と言った。
彼女は自分で言っていて同時に気がつかないのだろうか、、、あなたの「いい」と思う書き方もその10のうちの一つに過ぎないのだ、ということを。

一事が万事、そんなかんじだったから、私の頭の上には何度も?????マークがうかんだ。

とにかく難癖をつけることしかしないのだ。
応募先も応募書類も用意し、とにかく労働市場に足を踏み入れるつもりでいます、そのための職種もいくつか考えてきました、と、説明しているのに、彼女はPCでパンパンと条件を入力し、結果をバンと見せて、ほら、あなたのやろうとしていることはこんなに競争力が高くて、難しいものなのだ、だから、もっと違う仕事を探さないと、と言う。
もう、わけがわからなかった。

その担当者に何か「答え」があって、私がその方向に誘導されないから苛立っているのか、仕事のノルマでもあるのか、よくわからないが、とにかく乱暴だった。

その彼女と出会ったのはたったの1時間前。私は自分のこれまでの人生と自分のやってきたこと、私よりも長くドイツに住んでいる周りの友人からの情報、そんなものをすべてひっくるめて考えてここに臨んでいる。なのに、それを頭ごなしに否定するとは何事だろう。何様だろう。
マウンティング?
弱いものいじめ?(私は彼女よりも「弱い人間」だとは思わないが、支給してやる側と受給者とではそもそも対等ではない)

ひとまず、時間が来たからと終わりになった。が、翌月もこの人と対峙しなければならないことを考えると、かなりのストレスを感じた。

★5回目呼び出し
今、こうして思い出しながら書いているだけでも、腹が立ってくる。

前回の流れで、とにかくきちんとした仕事につながる道筋と、具体的に就活をしている証拠を示すこと必要だと思ったため、ちょっとアリバイ的ではあったが、この間に1社に履歴書を送った。
同時に、たまたま、目指している業種・職種にとって業績につながりそうな話を日本の大学教授からいただいたため、収入にはならない(労働契約も給与もない)がやらせてもらうことにした。つまり、それに関わることで履歴書に新たな1行が加われば仕事を得やすくなるはず、という意味で、私にとっては一種の就活だった。

これらを担当者に報告すると、1社に履歴書を送ったという話は完全スルー。
大学教授からの話で従事していたことについては、急になにかを思いついたかのように、「それはいつからいつまでの期間、どの時間帯にやっていたの?」と聞いてきた。
彼女の意図はわからなかったが、聞かれたままにだいたいの期間と時間を伝えた。すると、「じゃあ、その期間、あなたは仕事を始められる状態じゃなかったわけだから、給付は返還してもらいます」と言ってきた。

もう、なんだ、こいつ?だった。
私はいつだって仕事が見つかったのならすぐに始められる状態だった。それに、そもそも私はそれを、仕事を得るチャンスを拡大するためにしていたわけで、それは連邦雇用エージェンシーの意図と一致しているはずだった。

そう言おうとしたら、その担当者は「あなたには抗議することはできません」とぴしゃり(これは実際には正しくない。抗議する権利は誰にでもある)。要するに、何も言い訳をさせてはもらえなかった。
また、そのダメだという作業に従事していた期間と時間についても、私は最初、だいたいのことを言ったまでで、そういうことであれば、家に帰ってちゃんとスケジュール帳なり、メールのやりとりなどを見返さないとはっきりしたことは言えない、と言ったら、「でも、あなたはさっき、こう言ったでしょ」と全く聞く耳を持たない。

そもそも最初から、こちらの仕事探しを支援しようという姿勢が全く見えない担当者だった。
私が、連邦雇用エージェンシーに送りこまれたコーチングの結果に従って、こういう方針でやっていこうと思う、と言っても聞く耳を持たない。新しい提案をしても、それがどんなに難しいことかを並べ立てて拒否するだけ。それでいて、ほかの提案をするでもなく、「で、どうするの?」と言って詰め寄ってくる。
失業保険の給付をなんとか止めようとしているようにしか見えなかった。ノルマがあるのか、特別報酬があるのか、とにかくその担当者と話をしていると、彼女が私のためにいるのではなく、私が彼女のためにいる、という気がした。

そして、案の定、失業保険給付を止める手紙が届いた。
無論、抗議した。


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