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あんことワインと人

始めに断っておきますが、あんことワインが合います、みたいな話ではありません。悪しからず。


本屋で「あんこの本」が目に入った時、あ、そういえばあんこのこと好きだけど何も知らないな、あんこもきっと深めたらいろんな多様性が見えてくるんだろうな、とブワッと頭の中を駆け巡り思わず手に取りました。

美味しい美味しくないくらいは意識していたもののあんこのディテールについて考えたのは初めて。どうやって作るのかすら何となくしか知らない有様です。しかしあんこを巡る人たちへの取材を通したあんこ愛溢れる文章を読んで、ああ、あんこもワインも大して変わらないんだなあという感想を抱きました。


1. 味わいの解像度

あんこでもワインでも、テイスティング(ワイン的に言うと)でその味わいをどこまで分解できるかという問題があります。味わいをどのくらいの解像度で細部まで見ることができるか、と言い換えてもいいかもしれません。

「あんこってそういえばそれぞれ味違うよね。」レベルだった私には「美味しい、美味しくない」「好き、嫌い」程度のブラウン管レベルの判別しかできませんが、いつも意識的にあんこを食べてらっしゃる方はもっと精密な4Kレベルの味わい分けもできるはずです。
また、一般的な小豆と丹波大納言を比較すれば私でもどう二つが異なっているかという分析はきっとできるでしょう。同様に製法についても味わいの差を作る様々なポイントがあるはずです。

ワインにおいても、多くの人にとってドイツのリースリングの違いはなかなか分かりづらいですが、その違いが分かるようになると「ラインガウとモーゼルとラインヘッセンで全然違うでしょ?」「ラインガウの中でもこの畑とあの畑で全然違うでしょ?」となるわけです。「このワインは大樽、このワインはステンレスタンク」みたいに生産者やヴィンテージなど変数は他にもあります。変数を探りながらテイスティングするのがワインのひとつの楽しみだということもできるでしょう。


2. 人の味わい

とはいえ、個人的にはそんな分析的なテイスティングはそこまで面白くないとも思うんですよね。この本で面白いのは、あんこそのものよりも人にフォーカスしていくところだと思います。それぞれのお菓子の紹介もほどほどにそのバックボーンに踏み込んでいく。ああ、こういう人がこういうことを考えて作っているのかと思うと、添えられたあんこのお菓子の写真を見るだけでその味が想像できそうな気がします。

対して、ワインも生産者を反映したものだということができます。テロワールを反映したワインが良いワインだとされる昨今ですが、この場合のテロワールとは「その土地らしさ」と言い換えられることも多いように思います。

しかしあんこであれワインであれ、小豆や葡萄は自然にはあんこにもワインにもなりません。間を介在する人の存在、それこそがあんこをあんこたらしめ、ワインをワインたらしめるのではないでしょうか。

「その土地らしさ」と合わせて「その人らしさ」についても目を向けていきたいですね。その点あんこもワインも変わらないというのは今更ながら発見でした。

さて、今日はどこのあんこを食べに行こうかな。

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