HEY-SMITH (2023.11.17) at 横浜 BAY HALL / "Rest In Punk Tour"
HEY-SMITHのライブって言葉で伝えるのが難しい。ライブハウスで全身で感じ取る以外にほかないと思っている。でも、どうにかしてここに残したいと思い、書く。
HEY-SMITH、横浜BAY HALL公演の記録。
ひとつ前のZepp Shinjuku公演で幕を開けた、アルバム「Rest In Punk」のリリースツアー。全55公演、来年の6月まで続く行程は圧巻の一言。こういう行程を組めるのもHEY-SMITHがライブバンドである確固たる証拠。また、10月にはファイナルシリーズ以外の公演の対バンが一斉に発表され、お馴染みのバンドの名前から、恐らく初対バンになるであろうバンドの名前、更には海外のバンドまでとその幅の広さもまた恐ろしい。そして軒並みソールドアウトしているHEY-SMITHの勢いたるや。
横浜公演の対バンは、Voodoo Glow Skulls。アメリカのスカコアのレジェンドバンドである。対バンするに至ったきっかけは、MCで話されたので後述する。HEY-SMITHの音楽が好きな人は恐らく好きであろうVoodooの楽曲。1曲目の『Human Pinata』から矢継ぎ早に曲が繰り出され。途中、「I say "HEY-SMITH", you say "Fuck You"」と、「HEY-SMITH、Fuck You」コールアンドレスポンスも挟み、とにかく曲を畳み掛けていく。最後の『Voodoo Anthem』では、1995年発表のアルバム「Firme」のジャケットにも描かれたキャラクターまでステージに現れ、熱狂の渦の中45分のステージはフィニッシュ。
転換になるが、オープンしてから転換中はとにかくHEY-SMITHの楽曲がエンドレスで流れ続ける場内。転換中のSEってあまり自分たちの曲って流さないイメージがありますが、それを根っこから覆すような流し具合。こういう場面で知ってる曲しか流れ続けないってある意味新鮮。
そして機材準備も整い、流れていた「Longest Day」が途中から音量が上がり、始まりを知らせる。曲が終わると共に場内暗転。いつものSE、Mad Caddiesの「Villains」が流れ、メンバーがステージに現れる。猪狩秀平(Gt,Vo)は、グレーのBEASTIE BOYSのTシャツを着ている。何気に黒じゃないTシャツを着ている猪狩を見るのは、個人的に初めて。
1曲目は『Money Money』。そして『Still Ska Punk』と続く流れは、実にリリースツアーらしい。元々クラブとして使われていた場所だけあって、踊れる曲がとても映える。『Still Ska Punk』もそうだし、このあと演奏された『Fog And Clouds』や『Into The Soul』もめちゃくちゃ会場に合っている。勢いそのままに『Living In My Skin』が演奏されれば、「暴れる準備できてるのか!」という猪狩の煽りから『OVER』がタイトルコールされれば、地鳴りのような歓声と演奏。ステージ中央でもイイカワケン(Tr)と満(Sax)が向き合って頭を振り乱し、既に会場全体渾然一体。最高以外ほかない。
MCも早々に次々と曲が連打されていく。『Say My Name』から『Be The One』と続き、Yuji(Ba,Vo)は歌い出し直前にも関わらず、ベースを上から大きく振りかざし、勢いそのままに歌い始める。続いて『Fog And Clouds』が始まれば、イイカワケンのソロパートでは、フロアのみならず、ステージ上のメンバーの視線も彼に全集中。久々の『Buffalo Soldier』では、またシンガロングが起こる。とにかく全体通して踊って、歌って、踊って、歌っての応酬で会場の熱量が下がることなど皆無。
「アルバムが出るまで5年もかかってしまいました。外タレでもこんなにあくことない。でもこうして来てくれてるなかには、この5年の間に知ってくれた人もいるんだよね?」という猪狩の言葉に「シングル出してる!」というフロアからのツッコミ。そしてそのツッコミを拾うも「ダルイ客やなあ(笑)」とこれはもう愛のある返しと言っていいだろう。
『Into The Soul』から始まった次のブロックでも、またフロアを踊らせたかと思えば、続く『California』ではまたシンガロングが巻き起こる。「踊って歌って、次はまた踊る曲!」と『Fellowship Anthem』を繰り出す。とにかく管楽器隊の3人は自身の楽器を鳴らしているとき以外は、ステージ上を縦横無尽に動き回る。イイカワケンの大きい身体から繰り出されるダイナミックなノリは迫力があるし、かなす(Tb)も小さいながらも全身から音楽を届けているようで、その熱量たるやイイカワケンに劣ること知らず。満はもう何にも形容しがたい「満」という世界観ができあがっていて、説明など無用である。
これも久々の『THEME OF HEY』が演奏された後、「じゃあここらへんで愛の曲を1曲やろうかな。」と猪狩が話せば、大半が「The First Love Song」と予想し、フロアの大勢が頭上で手でハートを作る。しかし、「多分思ってるその曲じゃない(笑)」とすかさず猪狩がつっこむ。ここで演奏されたのはアルバムから『Be My Reason』。前日のツアー初日Zepp Shinjuku公演でアルバムから唯一演奏されなかった楽曲がここで初披露される。「Today is the day」、「Please be my reason」というワードがとにかく印象的な、プロポーズの曲。そして、「じゃあまた歌いましょうか!」と『Summer Breeze』が続く。MCを挟むも、この『Be My Reason』~『Summer Breeze』の流れがどことなく心地よい。
「次の曲は、お前は最高だという意味の曲をやります。お前の人生すべて俺が肯定してやる。」と「お前の人生全肯定ソング」と猪狩自身が名乗った『You Are The Best』。歌いだしから「Anytime do what you wanna do」と「どんな時もお前のやりたいことをやれ」と常々猪狩が口にしている言葉から始まるこの曲。いつだってHEY-SMITHというバンドは背中を押してくれるのである。
そして『Don't Worry My Friend』。いつも必ずあったタイトルコールがなかったのは、たまたまかもしれない。が、この曲の終わりの猪狩のガッツポーズはいつ見ても最高である。そして本編も終盤にさしかかる。『We sing our song』では、冒頭フロアを煽るも、既に完成されているフロアを「Beautiful!」と称賛し、曲に突入すれば、場内の様相はカオスそのもの。そして『True Yourself』に雪崩れ込む。間奏でお立ち台に立ち、ギターソロを弾く猪狩。そのまま、ラスサビ前のイントロのリフを弾いてる時の後光がさしているその出で立ちが半端なくかっこよかった。ギターヒーローってこういうことなのかと。そして、「俺たちあと2曲やって終わりです。もっと自由に!やりたいことやれよ!」の言葉からは、勿論『Let It Punk』。
「お前ら、また生きて絶対会いましょう。どんなに辛いことがあっても、生きて、生きて、生き抜いて、絶対また会いましょう」
そう述べ、覚悟を決めたかのように曲のタイトルを叫び、演奏に入った。『Rest In Punk』。正直、思いが溢れすぎてて真面目に聴こうものならば、聴いてる側も生半可な気持ちで聴けない。冒頭のサビを歌い終えた後の右手のアクション、途中のギターのミュートといい、とにかく思いが溢れまくっている。そしてギターを弾き終え、そのまま袖に戻っていった猪狩の後ろ姿が何より印象的だった。
フロアのワンモアの声に応え、ステージに戻ってくるメンバー一同。まず先ほど演奏した『Rest In Punk』について話す。「この『Rest In Punk』っていう曲は、これは俺たちの想いは伝わってるってことでいいのかな?とにかく想いが溢れまくってて、昨日はちゃんと歌えてなかったと思う。けど、今日は想いが溢れまくってる中でも、昨日よりは歌えたんじゃないかな。とにかく俺もとても大事にしている曲なので、みんなもそう思ってもらえると嬉しいです。」と話す。
少し個人的なことを書くと、最初にこの曲を歌詞カードを見ながら聴いた時、あまりの歌詞のストレートな感じと、それに対する曲の雰囲気に震えた。SATANIC CARNIVAL 2023で猪狩の口から出てきたHi-STANDARDに対しての想いがもうそのままに詰め込まれている。ゆえに溢れすぎている想いがすごくて、これライブでちゃんと聴けるのかって思った。アルバムツアーゆえに、このツアーでは演奏されるとしても、以降演奏することはあるのか、とも思った。猪狩のTwitterでは、ライブの日にリクエストを募っているが、そこでリクエストしたところで容易に演ってくれそうな曲ではない、みたいなことも思った。そしてライブで聴いた。演奏しているときの猪狩の表情を見ていたら、気づいたら涙で目が痛かった。でもこの曲を聴きたくて横浜ベイホールに来たし、聴くことができた。何よりこの日ステージで「この曲を歌い続ける」と宣言した猪狩秀平、そしてHEY-SMITHというバンドは、確実に自分たちの光なんだと確信できたと思う。
そして対バンのVoodoo Glow Skullsについても触れる。「もうレジェンド級のバンド。1995年とかにアルバム出してるようなバンド。俺らが一緒にライブしてるってとんでもないことやで(笑)。Voodooも何度かメンバーチェンジがあって、で新しく入ったメンバーは意外と年齢が近い(猪狩に年齢の概念あるのかというツッコミはなし爆)。でそのメンバーからヘイスミが好きで一緒にツアーをやりたいと言われ、こういうふうに実現できた。」続けて、「もうとにかくファンだし、なんなら昔、一時期バンドのSEにVoodoo使ってた時期もあった。だからお前ら、周りから何言われようとも、自分の信念貫いてやりたいことやれよ。そしたらいつかきっと形になる。」言葉の意味を身をもって体現する猪狩の言葉には重みがある。人を動かす人の言葉。「こうしてたくさんの人が来てくれて、こうしてライブできて夢のような時間です。じゃあ次の曲はそういう曲をやろうかな。」という言葉から演奏されるのは勿論『I'M IN DREAM』。そして『Goodbye To Say Hello』を演奏し、最後思い切り暴れろと言わんばかりに『Endless Sorrow』を投下し、フィニッシュ。
しかし、止まないワンモアの声。しばらくして再びステージに戻ってくるメンバー一同。「これだけ呼ばれたらやっちゃいますよ!」と2回目のアンコール、『DRUG FREE JAPAN』を投下、更に猪狩がTask-nの方を向き、その合図からとどめの『Come back my dog』。シャンデリアが点灯している中、至る所でサークルピットが発生していた様は、横浜ベイホールならではの光景だったと思う。
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