2022.12.09 at 横浜 F.A.D YOKOHAMA / COUNTRY YARD "Anywhere, Everywhere Tour" w/SHADOWS
COUNTRY YARD、5枚目のフルアルバム「Anywhere, Everywhere」、レコ発ツアー。またしても北海道から遥々横浜まで観に来てしまった。
今回のツアーの日程が上がった時に、北海道の地を指す場所は無かったのだが、既にどこで観ようか、なんて考えてる自分がいて、今考えると自分でも滑稽な話。
ただ、それくらいカントリーの音楽を浴びに行く事が日常に近いのかもしれない。
今回は翌日、翌々日と横浜で見たいライブが重なったこともあり、F.A.Dという選択肢に。
F.A.Dは今年6月に39degreesの企画(対バンはMy Hair is Bad)で来たばかりなので、こんなにまた短いスパンで来ることになるとは…。
F.A.Dは、なんだろう、「THE・ライブハウス」という雰囲気があり、一度行っただけでとても好きなハコになってしまった。ハコの大きさもそうだが、天井の高さ、壁一面に貼られたポスター、フライヤー、パス。それらを見てるだけで楽しい。
そんなハコで好きなバンドを観れることもまた然り。
本日の対バンは、個人的にお初のSHADOWS。
噂には聞いていたが、爆音(笑)。そして、バッキバキ重低音が身体にバシッと突き刺さるこのライブハウスの感じ、久しぶり過ぎて思わずニヤッとしてしまう。
ここまでハードコアなバンドを最近観てなかったのもあって、一気に引き込まれていったような感覚もあった。
『Into The Line』や『Chain Reaction』のイントロは音源を遥かに超えるくらい、ラウドでヘビィな鳴りで、でもその中にメロディックな部分もあって、想像よりも聴きやすい。
"ライブハウス=遊び場"という等式がしっくりくるバンドだなと。Hiro(Vo)がしきりに「遊ぼう。」と言っていたのも一因ではある。しかし、サウンドこそハードであるが、そのバンドとしてのスタイルは良い意味でラフな気がする。それもSHADOWSの良さなのかもしれない、とか観ながら思ってた。
転換を終え、後攻、COUNTRY YARD。
いつもなら、まずメンバー、機材を照らすかのようにステージ上に置かれたランタン状のライトが灯され、音が鳴り、始まるステージ。が、今回はまずは赤い照明がステージ全体を照らす。そして、ようやくランタンにも灯りがともされる。バンドが1曲目に持ってきたのは『Strawberry Days』。予想外の選曲に、良い意味で不意打ちをつかれたような気持ちだ。カントリーのライブの1曲目というと、どちらかと言えば、1曲目だけあって「幕開け、始まり」のようなイメージが個人的にはあった。
しかし、この『Strawberry Days』の放つサイケデリックな雰囲気は、その概念を敢えて覆してくるような選曲。とても新鮮であり、且つ赤い照明がステージを彩ることで、よりサイケデリックな雰囲気が増していたと思う。
「COUNTRY YARD、始めます。」
Sit(Ba,Vo)の言葉から、アルバムのオープニングナンバー『River』。8月の「Alarm Tour」でも先に披露されていたこの曲。音源を聴いてからまたライブで聴くことで、印象がこうも変わるのかと。サビの歌のメロディーとバンドが鳴らす音のシンクロ具合がすごい美しい。美しくも力強い。
『Where Are You Now?』、『I'll Be With You』とライブは続き、『I'll Be With You』では、早くも飛んできた人がSitのマイクにぶつかるというハプニングも。
アルバムのインタビューで、『River』から『Umi』までは1曲じゃ収まらない(書ききれない)、ストーリー性があるような趣旨の発言をしていた記憶があったので、『Where Are You Now?』の後に『I'll Be With You』が来た時は少し驚いた。
最初のMCは、SHADOWSのせいもあり、Hayato(Gt,Cho)の話題多めだったが、関東圏でのライブが久々であることを、Sitは楽しそうに話す。そして、
「ライブもPassion、人間もPassionなんだよ……受け取ってくれ。『Passion』」
「Anywhere, Everywhere」が出たことで、前作「The Roots Evolved」がバンド的にも、観てる側も消化して、各々モノにしたような感じがある。少なくとも自分もそんな感じである。だからこの日鳴らされた『Passion』は、そう言った意味でも互いに呼応し合っていたように聴こえ、今までと少し違って聴こえた。
次の曲に繋がるAsanuma(Dr)のキックドラムが会場内に鳴り響く。このBPM、『One By One』。アルバム発売が発表された時、ティザー映像で流れていた曲がこの曲だった。故に、この曲がアルバムのリード曲なのかな、なんて想像でアルバムを聴いてたけど、そんな感じもせず(実際PVも無い)。ただ、今までのCOUNTRY YARDを踏まえると、この曲の持つ「COUNTRY YARDらしさ」たるや。
「行けんのか?!」のSitの煽りによって、『In Your Room』は、イントロが鳴った瞬間にフロアの沸点は一瞬にして遥か高い所まで達していた。
続く『Umi』で、満を持して自分はSitが初めて日本語歌詞を歌う姿を目の当たりにすることに。しかし、そこに違和感は全く無く、むしろ清々しささえ感じるようである。そして、浮遊感漂うバンドサウンドが、会場を包み込むように響き渡る。
Miyamoto(Gt,Cho)が、今日がツアーのセミセミファイナルだということを告げると、すかさずSitが「W杯と同時進行だよね(笑)」とツッコミを入れる。奇しくも、W杯の準々決勝もこのF.A.Dの日であり、そして、カントリーのツアーファイナルの18日もW杯決勝の日と被るという。また、
「今日の皆んなの顔を見てると、迷いなくここに来てくれたんだなってのが伝わるよ。」
人にはその人らしい言葉っていうものがあると思っているのだが、この言葉も実にSitらしい言葉。
そんな言葉の後、次のブロックで最初に鳴らされたのは、最初アルバムから『Life』。カントリー調のメロディをこのBPMで鳴らす、という所に新鮮味を感じる。アコースティックな感じなのに、音はしっかりバンドサウンド。そして、BPMは遅くないにも関わらず、穏やかに時間が過ぎるように感じるこの不思議な感じ。
立て続けに『Tonight』、『Two Years』と続く。
フロント3人が楽器を持ち替え、鳴らすはSitが曲中、何度も《We're Still Alive》と歌う『Orb』。そして、『Bed』、『Smiles For Miles』と緩急のついた選曲だが、このブロックが『Orb』で始まって、『Smiles For Miles』で終わるというのが個人的に良いなあと思った。『Smiles For Miles』のPVは何度見ても胸を打たれるものがある。歩みを止めない姿、そして、最後4人が円状に並び互いを見ながら演奏する姿も、つまり最高なのだ。
「久々にマイクが自分に当たって、ちょっとキュンとしちゃった(笑)。ドMなのか俺?」と笑いながら話すSit。
「今日はなんか、昔のように戻ろうじゃなくて、新たに1ページずつ前に進んでいこう、そんな雰囲気がSHADOWSの時からあって、とても良かった。」
先日、山口の周南RISING HALLでHump Backを見た時に、林萌々子(Vo,Gt)も「昔のライブハウスの面白い遊び方を知ってる人は、今はまだ楽しくないかもしれない。けど、あの頃に戻ろうじゃなくて、新しいライブハウス、シーンを作っていこう。」そう言葉を発していた。
それを聞いていたから余計に今日のSitの言葉も心に響いたし、今この時点でのライブハウスの現状はバラバラでも、段階が異なる訳で、目指す所は皆同じなんだ、ということを改めて思った訳なんだ。
最終ブロック、『Quark』、『Starry Night』とアンセムの連打にフロアの衝動は抑えきれない。後ろで見ていた自分からして、目の前で繰り広げられてるこの光景に少しグッとくるものがある。各々が楽しんでいればそれで良いのだ。
そして本編最後に鳴らされたのは『Dokoka』。
この曲を鳴らす前にSitが話す。
「COUNTRY YARDってバンドは現実維持が好きじゃないバンドで、まだまだやりたいこともたくさんあるし、だからこれからも沢山演っていく。俺は前しか見てないんだ。希望が見えるように。」
前を向いている人の言葉には説得力がある。
COUNTRY YARDが好きなのは、音楽だけでなく、こういった人間性も含め、もしかしたら好きなのかもしれない。どこか自分を後押ししてくれる存在に勝手にしてしまってる所もあるが、それくらい欠かせないバンドなのかもしれない。
『Dokoka』の演奏中、今日一日のことがまるで走馬灯のように頭の中を駆け巡っていった。そんな感じだった。本編通して、ひとつのドラマを見ていたような感覚、あっという間に終わってしまった。
そして、アンコールの声に応え、メンバーがステージに戻り、Miyamotoが話す。「こないだ一緒にやったKUZIRAもそうだけど、俺らがまだまだ新しいことをやって、これからのピザ(PIZZA OF DEATH)を盛り上げていく。」そう所信表明をしてくれたのがとても嬉しかった。
個人的には、元々好きだったレーベルに、元々好きだったバンドが加入しただけでも一大事だった。そのバンドが今、この時代にこう言葉を発してくれることの頼もしさ。こんな嬉しいことはない。
Sitも、「2020年代のピザは、俺らが盛り上げるよ。」と後押しするように言葉を繋げた。
アンコール、『Far Flower』、そして、「ロックバンドは簡単には死なない、最後にそんな曲をやるよ!」と言って『Don't Worry, We Can Recover』を鳴らし大団円。
『Don't Worry, We Can Recover』のラスサビで、Miyamotoがセキュリティの肩に手を掛けて、前のめりに客席を見渡す姿が何より珍しく、印象的だった。
冒頭で、カントリーの音楽を浴びる事が日常化しつつあると述べたが、前を見据え、楽しそうに演奏する姿が、もしかしたら無意識に生活を後押ししてくれてるのかもしれない。だから、「好き」という理由以上に、カントリーのライブに行き続けたくなっているのかもしれない。
次こそは北海道で見たい!