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2022.10.21 at Zepp Haneda / HEY-SMITH "15th Anniversary TOUR -Inside Of Me-" w/Ken Yokoyama

ヘイスミ、15周年記念ツアー、東京編。その記録を。

個人的な話をすると、当初は行く予定ではなかった。ただ大好きな2バンドの組み合わせ、死ぬ程迷い、公演前日に行くことを決め、ライブがが金曜なのだが、木曜夜22時半にチケットをおさえ、飛行機を取ったくらいにはギリギリの判断だった。
でも、結論、行かない選択肢を選んでたら死ぬ程後悔してたと思う。

ちなみに2週間前の札幌公演にも勿論行った。その日も最高な夜だった。そこで満足していたはずだった。けれども結局心は揺らいでいた。

何故か。それは対バンがKen Bandだからだ。
Ken Bandが他のバンドのツアーに対バンとして出ることは極めて稀なこと。というかほとんどない。記憶が正しければ、最後に対バンとして出たのは、マキシマム ザ ホルモンの2017年のツアー@八王子Match Vox(ナヲ(Dr,Cho)の出産後の再会ツアー、その初日)だった気がする。というか、その1本しかないと思う。

「Ken Bandのツアーにヘイスミが出る」ならうんうん、となる。しかし、それが逆になった途端、話が変わる。「ヘイスミのツアーにKen Bandが出る」のは、もはや令和の一大事なのだ。恐らく同じことを思っている人間は少数いると思う。

次いつこういう機会があるかわからない、やはり現場でこの目に焼きつけたい、その思いで結局来てしまった。

平日の18:30開演はやはり早いか。2階席だった自分は、一番最後の入場で、入った時には定刻まであと5分というくらいには、開場が押していた。定刻を10分程過ぎ、特に登場SEもなく、ふらっとKen Bandのメンバーがステージに現れる。開口一番、

「これだけパンパンに入ってるのを見ると、少し胸にくるものがあるね。」

横山健(Vo,Gt)が続けて話す。

「少しずつ状況が良くなっていく中で、色々な考えがあると思う。ヘイスミにはヘイスミのルールがある。だから、俺たちも俺たちで考えがある。俺たちのライブでは、シンガロング、モッシュ、ダイブは我慢してくれ。いいかい?」

「もうコロナ禍でも結構ライブハウスに足を運んでる人も居ると思う。しかし、中には今日久しぶりだって人も居ると思うし、初めてだって人も居ると思う。そういう人たちに怖い想いをさせたくない。」

「どうしても抑えきれないって人は…まあ常識の中で上手くやってくれ。上手くやってくれって言っても、結局悪く見られるのはバンドなんだってことも忘れないでくれ。」

パンクロッカーとして、自分が伝えたいことをしっかり伝える人間、それが横山健である。

改めて続ける。

「HEY-SMITH、15周年おめでとう!東京の杉並から来ました、Ken Yokoyamaです。よっしゃ演ろうか!1曲目はこの曲しかないよな!」

そう言って健さんの口からタイトルコールされたのは、『Let The Beat Carry On』。Ken Bandのテーマソングでもあり、続けていくことの大切さを歌うこの曲。ヘイスミの15年間の歩みをわかっているからこその1曲目であろう。イントロから会場の一体感は早くもこの日のハイライトの一つと言っていいだろう。

間髪入れずプレイされたのは、現状最新アルバムの表題曲『4Wheels 9Lives』。Ekkun(Dr,Cho)の力強いドラミングが特に際立ち、何より曲のスピード感、サビでは、会場全体がシンガロングしているかの如くその一体感は、2階から見ていて胸にくるものがあった。スタンディングで、それもキャパがパンパンのハコで鳴らされるこの曲のスケールも圧巻に感じる。

曲終わり、Minami(Gt,Cho)よりも、下手にマイクスタンドごと移動する健さん。Ekkunがしっかり水分補給していたのを見逃さず、見届け、続けてプレイされるは『Walk』。

曲が終わり、定位置に戻り、客席を確認するかのように見渡した後、ギターを鳴らし始める。

「Radio, Radio, Radio, Radio, HEY-SMITH, Radio!」

『I Won't Turn Off My Radio』、サビの始まり、健さんがギターを思いきり、ぶん、と振り回すのがとても印象強いし、それが健さんそのものなのだ。

「じゃあ次は心の中で一緒に歌ってくれ。アルバム「Sentimental Trash」から演るわ。『Maybe Maybe』!」

いつものKen Bandのライブだったら、シンガロング、モッシュ、ダイブ、その全ての起爆剤とも言えるであろうこの曲(他にもあるが)。だが、冒頭の健さんのアティチュードを理解した客席は、それらがなくても、確かな一体感があったのはしっかり感じとれる。

そして、今度はJun Gray(Ba,Cho)よりも上手にマイクスタンドごと健さんが移動。「Zepp Haneda、HEY-SMITH、喰らってくれ!『Punk Rock Dream』!」もはや説明不要のアンセムがとどめを刺すと言わんばかりに、会場に響き渡る。

そして、健さんがメンバーに何やら個別に耳打ちし、始まったのはなんと『The Sound Of Secret Minds』!。ついこないだまでまわっていた自身の「Killing Time Tour」でも披露されていたみたいだが、何とも粋な計らいである。と同時に、ハイスタもそろそろライブしないかなあなんてふと思ってしまう。余計な期待はしたくないが、何かの前触れなのか…とか思ってしまう。

そして、ここまで7曲MCというMCもなく立て続けに演奏し、珍しいと思っていた矢先、客席からの「抱いて!(from 男性)」の声に反応し、そこから緩い下ネタを挟みつつ、MCに入った。

今回のオファー、猪狩から直接電話をもらったこと、そして誘われたことがとにかく嬉しいと話す健さん。Ken Bandもコロナ禍で、昨年7月の「4Wheels 9Lives Tour」からライブ活動を再開させた。しかし、それはずっとワンマン公演でかつ全席指定の椅子有りの形式だった。それはなにかあった時に、対バンだと2バンドキャンセルになるけど、自分たちだけならすぐに(ライブを)飛ばせる。そういう意図があったことを話す。まだ収まってないけど、そういう時期でも、対バンで呼んでくれたことが嬉しいと話す。ちなみにKen Bandも前述した先日迄の「Killing Time Tour」でようやく対バン、スタンディングのスタイルを再開させている。

「また、俺はHEY-SMITHがどんな15年間を歩んできたかを知ってるからそれも胸熱ポイントね。」

そう話したのが印象的だったし、YouTubeに上がっている2017年のハジマザに出演した時の健さんのMCがフラッシュバックされる。

「ここまでは、わりと俺たちのことを知らない人、HEY-SMITHを目当てにきた人でも楽しめるセットリストでやってきたけど、ここからはHEY-SMITHに捧げるし、曲を知らなくてもきっとその場で踊れる曲を演るよ。」

そう言って次に演奏されたのは、Minamiのカッティングギターが冴え渡る、Ken Band屈指のスカ・チューン『Going South』。だいぶご無沙汰で、恐らくコロナ禍になってからは初めての披露ではないだろうか。そして、『Pressure Drop』が続けてプレイされる。

最後の曲の前に健さんが話す。

「俺も早く皆んなと一緒に歌いたいよ。でも、もう少し待ってな。」

国のガイドラインには従いつつも、最近発表された、「1曲あたり25%の声出しok」というよくわからんガイドラインにも軽い下ネタを交え苦言を呈す健さん。繰り返すが、ライブの冒頭でシンガロング、モッシュ、ダイブに対してしっかりKen Bandのアティチュードについて言及したのは、Ken Bandなりに考えていてのことであるのは誰もが承知のこと。恐らくKen Bandがそれらを解禁するときは、きっとKen Band主催のライブだと思うし、ファンとしてそう願いたい。

そして、最後にプレイされた『Come On, Let's Do The Pogo』では、伝家の宝刀「クロスフェイスダンス」も飛び出し、磐石のフィニッシュ。

「またすぐ会おう、Ken Yokoyamaでした。」

そう言って最後、何度も深々と頭を下げていた姿が忘れられない。

[Ken Yokoyama]
1 Let The Beat Carry On
2 4Wheels 9Lives
3 Walk
4 I Won't Turn Off My Radio
5 Maybe Maybe
6 Punk Rock Dream
7 The Sound Of Secret Minds [Hi-STANDARD]
8 Going South
9 Pressure Drop
10 Come On, Let's Do The Pogo


転換を挟み、後攻、ヘイスミの番である。
ステージが暗転し、SEが鳴る。何回聴いてもこのSEは気持ちがあがる。そして、猪狩を筆頭にメンバーがステージに。

全員で音を鳴らし、猪狩の「よっしゃ!行くぞー!」から『Dandadan』が始まるも、まさかの音響トラブルで会場のスピーカーから音が出ないというハプニング。

「頭からやり直すか。」そう言って一旦ステージから捌けるメンバー。

再び、ステージが暗転し、SEがなる。すると今度は、メンバーが悪くないのに、右手を頭に添えながら、すいませんとばかりの小芝居をしながら再登場。

「もう知らんで!むちゃくちゃにしたるわ!」

と猪狩が言い放ち、そしてTask-n(Dr)のカウントから曲に入るのだが、明らかにカウントのBPMが『Dandadan』ではない。早い。そう、1曲目を変えてきたのだ。その『Dandadan』から変わった1曲目は『2nd Youth』。これまたなんとも粋な計らいである。そして、そのまま2曲目にやり直しと言わんばかりに『Dandadan』が続けて演奏される。

「トラブルが起こると、むっちゃテンション上がってくるわ!」

その猪狩の言葉から、地鳴りのようなイントロで始まったのは『Over』。満(Sax)は、早くもマイクスタンドを倒しシャウトを決めてくる。ヘイスミのライブを見てて思うのは、猪狩は勿論なのだが、ホーン隊こそ地味にめちゃくちゃ客席を煽ってくるのだ。

「今日は15周年ツアーってことで、昔の曲演ってもいいよな?1stアルバムの「14-Fourteen-」から演るわ。」

タイトルコールから『We Are...』。この「◯◯(アルバム名)から◯◯(曲名)」という曲紹介のスタイル、猪狩と健さんで地味に共通している部分のひとつである。

最初のMC。「大阪のHEY-SMITHです!とんでもない始まり方だったな。でも俺、トラブルあるとテンション上がってくるねん。皆んなはどうなん?」と客席に確認する猪狩。勿論、客席も同意だ。

それを確認し、続くはコロナ禍で生まれた、猪狩の重たいミュートのリフが特徴的な『Be The One』。赤い照明が、曲をよりヘビー、そしてラウドに見せる。

「今日はKen Bandも踊れる曲沢山演ってたけど、踊れる曲と言ったら俺らが負けるわけにはいかないよな。」

そう言って鳴らされるのは『Fellowship Anthem』。かなす(Tb)のステップは踏まずとも、上手の方を向いて(客席から見たら横向き)その場でスカのノリをしているノリ方がとても個性的で印象的で良い。

そして、間髪入れず猪狩が弾き始めたのは、『Stand Up For Your Right』のイントロ。直訳すると、自分の権利に対して立ち上がれという意味だが、今のこの状況で鳴らすに相応しいナンバーだと思う。

続くも1stアルバム「14-Fourteen-」から『Live In A Dive』。恐らく久々の演奏であろうこの曲。猪狩が「アルバム『14-Fourteen-』から…」って言った時のYUJI(Ba,Vo)の構え方から絶対『Live In A Dive』だ!!と気づいてしまうくらいには、個人的にこの曲めちゃくちゃ好きです。最高でした。この曲はどこかノンストップで始まりから終わりまで駆け抜ける感じであるのだが、それが痛快なのだ。

曲の演奏中以外もずっとドラムを叩き、刻みつづけるTask-nのドラムに、イイカワケン(Tp)が即興であわせる。最後、バンドで音が合わさり、「Zepp Hanedaに響かせろ!」と猪狩が言い放ち始まるは、勿論『California』。響かせ「ろ」と言うあたりが、猪狩が、ライブが演者の一方的なものではなく、客も含め皆んなで作るもの、そう言ってるような気がする。この曲を弾いてる時の猪狩の表情は本当に明るい。イントロから一気にスタートダッシュを決め、サビで一気に解き放たれるその開放感は間違いなくZepp Hanedaに響き渡っていた。

『California』も収録されているアルバム「Life In The Sun」から、アルバムの中でもやや毛色の違う雰囲気を持つ『Soundtrack』が続く。

「よっしゃ、新曲やろかー!」

そう言ってまずは、表題曲ではなく、その別バージョン『Inside Of Me W.E.E.D -Wanna Enjoy Endless Dream-』をプレイ。ちなみに札幌ではこの曲を「まずは、頭がおかしくなる方の新曲」と紹介していたのが個人的にツボだった。モノの言い方とは、である。全体的にエコーがかかりまくったそのサウンドは、会場を一気にディープな雰囲気に引きずり込むようである。そして、「じゃあ次はめっちゃ踊れる方の新曲」と言って、表題曲『Inside Of Me』。一般的にサビと言われる部分において歌詞がないという斬新な攻めの構成だが、聴けば聴くほど中毒性のあるこの曲。PVの振りをしていた人は居たのだろうか。

次のブロックに入る前にMCで猪狩が話し出す。

「今日は来てくれた皆んなもそうだけど、出てくれたKen Band、本当にありがとうございました!健さんが、呼んでくれて嬉しいって言っていたのが、どんな言葉や説明よりも嬉しい。」そう話す猪狩の表情はとても良い。

「皆、気づいてると思うけど、今のライブハウスシーンに対する考え方は、俺と健さんで少し違う。でも最終的に目指しているものは同じ。今の解釈の違いを受け入れて今日出てくれた事も本当に嬉しいです。」

「次の曲はアルバム『Stop The War』に入ってる『Before We Leave』って曲やねんけど、直訳すると、俺らがいなくなる前にっていう意味。Ken Bandが俺にとっての光であったように、俺らが君等の光であるように、次に俺等が居なくなった時、次の光はお前たちだ、そういう曲です。」

アルバム「Stop The War」は、ヘイスミのアルバムの中でも特にメッセージ性の強いアルバムだと思っているが、『Before We Leave』も猪狩の説明通り、メッセージ性が強い。曲中、オレンジ色の照明がステージを照らしていたが、ラスサビ前、YUJIのボーカルとベースだけになった時、照明の色が突然白に変わり、どこかその一瞬、無機質さを感じた。その直後に演奏されたのが『Truth Inside』というのも、何かを感じ取らずにはいられない。

「どんなにインターネットが進化しても、この空間だけはダウンロードさせない」。そんな猪狩の言葉からプレイされたのは、勿論『Download Me If You Can』。

ライブ本編は終盤にさしかかる。
『I Will Follow Him』はカバー曲であるが、YUJIの高音ボーカルと曲との相性は完璧。どこか15周年という祝祭にふさわしくも感じる。

『Goodbye To Say Hello』、『Living In My Skin』と続いて、瞬く間に本編が終了。

暫くしてアンコールに応え、メンバーがステージに戻る。

「本当に今日はエラい始まり方やったな。きっとハコのレンタル代が安くなりそうです!ありがとうございまーす!」と猪狩が冗談を交え話す。

「(ギターを鳴らし)ミュートに関しては健さんがいるし、(カッティングをし)カッティングに関しては南さんがいるから、今日この右手の天才二人に見られてるのはギタリストにとっては地獄やぞ。」そう話すも、その表情は明るい。

そして、そこから出会った頃の話になり、10代の猪狩が健さんに出会い、ギターをやっていることを話すと、健さんから「ギターやるの?ギターやるなら、ギターは右手が大事だ」と言われたことを話す猪狩。故に、今の自分がこういうサウンドになっている、健さんにそう言われなかったら、今のこの曲、テイストはなかったかもしれない、そう語る。

そして、今のライブハウスシーンについて話し始める。

「俺はとにかくライブハウスは自由な場であって欲しい。色々なことを考えなきゃいけない世の中になってきている。けれども、少なくともこうして、俺たちのライブを見に来てくれているこの時間だけは
、その自由を俺が守ってやる。」

そう高らかに宣言し、プレイされたのは『Don't Worry My Friend』。

「残り2曲、ヘイスミの中でも最も激しい2曲をやって終わりにする。」

そう言って、『Drug Free Japan』『Endless Sorrow』を連投。激しさはその場にいた人ならもう察しがつくであろう。敢えて深い記述はしないが記録としてその旨だけ残しておくとする。

この日は恐らく収容人数ほぼ100%での公演だったと思うが、自分は2階席から見ていて、1階スタンディングの密集度を見てどこか感傷に耽ってしまっていた。それは札幌の時もだった。

ヘイスミは去年から今年初めにかけ、まだコロナ禍真っ只の最中に、47都道府県ツアーをいつもの規模のハコで回った数少ないバンドである。自分は、運良く今年1月の徳島club GRINDHOUSE公演に参加できたのだが、本来250人程入るハコに、ディスタンスゆえに90人ちょっとしか入っていなかった。
猪狩が当時MCで「死ぬ程赤字」と言っていたのが印象的だった。笑いながら言っていたが、興行的には全然笑えない。それでもヘイスミはツアーをまわった。

あれから9ヶ月経って、まだまだ収束してないものの、少しずつ緩和されていく状況をこうして目の前で確認できて、しかもそれが同じヘイスミ のライブでっていう所に不思議な縁を感じる。

ツアー折り返しの東京公演だったが、その雰囲気はファイナルともとれるくらいにはその熱量は凄まじかった。この場に居合わせれた事が何より最高だし、幸せであった。

HEY-SMITH
15th Anniversary TOUR -Inside Of Me-     
                       2021.10.21 Zepp Haneda  
w/Ken Yokoyama          
                         1 2nd Youth
2 Dandadan
3 Over
4 We Are...

5 Be The One
6 Fellowship Anthem
7 Stand Up For Your Right
8 Live In A Dive

9 California
10 Soundtrack
11 Inside Of Me W.E.E.D -Wanna Enjoy Endless Summer
12 Inside Of Me

13 Before We Leave
14 Truth Inside
15 Download Me If You Can
16 I Will Follow Him
17 Goodbye To Say Hello
18 Living In My Skin              
                         Encore
19 Don't Worry My Friend
20 Drug Free Japan
21 Endless Sorrow

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