
バンクス家、最悪の1週間を比較する。
映画『メリー・ポピンズ リターンズ』の考察。
前回の「バンクス家、最悪の1週間を懐古する」
という記事では、劇中に起きた出来事を日ごとに振り分け、その結果映画には登場しなかった
「空白の1日」が存在するのでは?
…という答えを出しました。

今回は完成したこのスケジュールを前作、
『メリー・ポピンズ』の1週間と比較します。
◯どうしてそんなことするの?
『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)は、
映画『メリー・ポピンズ』(1964)の正統な続編。
しかし構成や展開に前作との共通点が多く、
"リメイク作品"と言われてしまうほど。
今回は「スケジュール」の面から見ても
共通点が多いのか?やっぱりリメイクなのか?
見ていくことにします。
その結果、またも意外な発見がありました。
ぜひ最後までお付き合いいただけると
嬉しいです。
※映画『メリー・ポピンズ』、映画『メリー・ポピンズ リターンズ』両作品とも鑑賞済みを前提にお話が進みますので、ご承知おきください。
◯とりあえず埋めてみる
まずは物語の発端となる"17番地の暴風警報"、
「ケイティ・ナナの辞職」を1日目に。

子どもたちの募集広告が空に舞い上がった後、日付変わって「乳母の面接」があり、絵の中へ行って競馬で優勝し、雨の中を帰宅するところまでを2日目とします。

絵の中で覚えた「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」が作用して迎えた気持ちの良い朝。予定を変更してアルバートおじさんの家に行き、最後には「♪2ペンスを鳩に」が歌われました。これが3日目。

ジョージがジェーン&マイケルを銀行へ連れて行き、騒動になり、煙突掃除屋のシーンがあって、ジョージが銀行を解雇されたのが4日目。
そして凧揚げが5日目となります。

◯早速比較してみる
では完成したスケジュールを
『メリー・ポピンズ リターンズ』と比較します。

まずは日数。
『メリー・ポピンズ』が最短5日間だったのに対し、『リターンズ』は7〜8日を要しています。
それから"何日目か"という点。
1日目にバンクス家の危機が訪れる点や
4日目に銀行で騒動が起きる点は一致。
しかしアニメーションやアルバート・トプシーのシーンは不一致となりました。
そして極め付けはこれでしょう。

【メリー・ポピンズがやってきた日】が異なる
という点です。
上映開始からメリー・ポピンズが現れるまで
1作目はだいたい[23分48秒]くらい、
2作目は[21分43秒]かかっています。
つまり"映画としての時間"だけを考えると
そこまで大きな差は無いのです。
それでも日付が異なるということは、
『リターンズ』1日目に色々起こり過ぎている…
という見方も出来るかもしれません。
◯まとめ
ざっくりとではありますが…
スケジュールを照らし合わせると両作品で共通していない部分も多いことが判明しました。
実は、"映画としての時間"に大差が無いのは
メリー・ポピンズの登場だけではありません。

この通り映画前半の出来事は5分以上の差を
作ることなく起きていました。
スケジュールにはいくつも差があったのに、
構成上の時間差は埋められているのです。
つまり"リメイクのように見える"というのは
当然制作陣の意図したものであり、
"リメイクのようだ"と評価されることは
最高の褒め言葉なのかもしれません。
実を言うと、私はこの作品が"リメイク"として
扱われるのが正直好きではありませんでした。
しかし、いかに前作と違うかという部分を
追求すればするほど差異は多く見つかり、
かえって似て見えることが凄いのだと
思い直すようになりました。
…そして今更ではありますが、
書き足し忘れた情報が見つかりましたので、
以下、修正していきます。
◯もう一つの答え
続編よりスケジュールに関する明確なヒントが
少ない1作目の『メリー・ポピンズ』ですが、
明示された情報が一つありました。
メリー・ポピンズの休日、隔週の火曜日。
このスケジュールで言うと4日目に当たります。

そしてスケジュールを仮に「連続した5日間」であると捉えた場合、
それぞれの曜日は以下のようになります。

上段『メリー・ポピンズ』の1週間に
曜日を足してみましたが…
ある共通点が浮かび上がったこと、
お気づきになりましたでしょうか?
【メリー・ポピンズがやってきた日】、
2作品とも「日曜日」だったんです。
それだけではありません。
この日の「8時」に何が起きたでしょう?
1作目では、玄関のチャイム音が8時。
エレンが扉を開くとメリー・ポピンズが立っていて、バンクス家は最高の来客を迎え入れることになりました。
そして2作目では、扉のノック音が8時。
エレンが扉を開くとグッディング&フライが立っていて、バンクス家は最悪の来客を迎え入れることに…
1作目は提督の時報の後で、2作目は時報前。
しかし2作目は約5分の遅れがありましたので
やはり、日曜日のほぼ同じ時刻。
こんな細部にまで
共通点と相違点が仕込まれていました…
…と断言は出来ませんが、弁護士が来た時に
エレンが「日曜日の朝8時」なんて言葉を
わざわざ発する必要が他にあったでしょうか?
弁護士2人の登場シーンには他にも1作目の
「警察を呼んだら既に警察が来ていた」
という描写のオマージュも込められています。
ほんのわずかな時間に
複数の演出が凝縮されていたようです。
実際に比較してみて…
リメイクと言うべき?
リメイクじゃないと言うべき?
リメイクじゃないけど、
リメイクに見えるというべき?
さて、「比較する」はここまで。
最後は【バンクス家、最悪の1週間を推察する】
いよいよ"空白の1日"に取り掛かります。