ゲノム編集トマトが来春から発売crispr-CAS
昨年ノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術crispr-CASを使ってゲノムを改変した野菜が発売されるようです。
血圧上昇を抑えるトマト(筑波大・サナテックシード)が、12月11日に厚労省から流通が認められたそうです。これは、血圧上昇を抑える働きがあるGABAを豊富に含むようにゲノム編集したものだそうです。商品名は「シシリアンルージュ・ハイギャバ」だそうです。
サナテックシードは、このゲノム編集トマトの苗を来年春から家庭菜園用にインターネットで販売する予定だそうです。その後、来年秋には、トマト農家に苗を供給し、再来年からは、このトマトが本格的に流通しそうです。
以前の遺伝子組換え食品(GMO)との違いは、遺伝子組換えは外部から異種生物の遺伝子を導入するのに対して、ゲノム編集はもともとある遺伝子の一部を変化させることで、その遺伝子(タンパク質)の機能をなくさせるものです。そういう意味ではいわゆる遺伝子組換え食品に比べて理論を聞けば受け入れ易いはずです。
上のトマトもGABAの量を増やさないようにする遺伝子の一部を壊すことで、GABAが過剰に蓄積するようにしたもので、GABAが通常の5倍だそうです。そのため、毎日食べることで血圧の上昇を抑える効果が期待できるそうです。
でも、血圧上昇を抑える目的で、毎日トマトを1~2個食べたいでしょうかね?それならGABA入りサプリを採る方がよほど簡単だし、トマトが嫌いな人もGABAを採れるでしょう。
トマト以外にも、肉厚になった真鯛(京都大学、近畿大学)、毒素が大幅に少ないジャガイモ(大阪大学)、収穫量の多いイネ(農研機構)などが開発中だそうです。
理論的には、点突然変異なので、自然界でも起こる変異です。普通に栽培していても、一定の割合で、点突然変異は起きてます。それを狙ってピンポイントで起こすのがcrispr-CASの技術です。
そういう意味からいえば、自然界で起こっていることを、偶然ではなく、狙って有用な効果を出すように特定の場所の塩基を壊すので、特に安全性に問題はないと思われます。
従来認められている育種方法でゲノム編集に比べてずっと危険なものもあります。放射線育種場では、ガンマ線という放射線を当ててゲノムをブチブチに切って、再結合して生き残ったものから有用なものを選択する、放射線育種というのが行われています。
この場合、ゲノム染色体がガンマ線によってランダムに切れて、再結合されます。すると、どの遺伝子が切れて、どこと組み替えるか、等の予測が全く付きません。
とんでもない毒素を作る植物ができるおそれもありますし、アレルギー性の物質が作られるかも知れません。さらに、変異原性のある物質もあり得ます。こうした従来型の育種技術の方が、遺伝子組換えやゲノム編集よりも危険と思われる場合もよくあります。
そういう意味では、ゲノム編集植物も食わず嫌いにならずに食べてみればいいのではないでしょうか?