義務教育で「話し方」を教わらないからこうなる
ビジネスホテルでアルバイトをしていると、いろいろなお客さんを目にします。
「案内はいいからさっさとキーをくれ!」といってキーを受け取った後に、「エレベーターはどこ?」「お風呂はどこ?」とすぐに戻って聞きに来て、結局本来の3倍くらい時間を失うお客さん
朝ごはんに、ご飯と味付け海苔と納豆をとって、味付け海苔と納豆を未開封で残すお客さん
「この領収書、やっぱり明細ついてないやつにして」とお願いされたので、「かしこまりました、では、先ほどお渡ししたものを回収させていただいても大丈夫ですか?」というと「は!?今渡しただろ、それだよそれ!ちゃんと確認しろよ!ッったくなにして、、あっ俺が持ってたわすまん」みたいな人間(ちなこれに関しては殴っても許されると思う)
ホテルでは「お客さん」というと「お客”さん”じゃなくてお客”さま”ね」と怒られます。ちょっとうざいのでここでは「お客さん」で行こうと思います。
そして先日、変わった外国人のお客さんが来ました。
日本語は片言だけどほとんどしゃべれるくらいのレベルで、細身の女性の方でした。
副支配人がチェックイン(受け入れ)の担当をしました。
他のホテルのルールや旅館業法は知らないが、うちのホテルでは、チェックインの際にお客さんの直筆の署名をもらうようになっている。
しかし、その外国人は、署名をお願いしますといわれているのに、一向に署名をしようとしないんです。
なぜ署名をしたくないのかは結局わからずじまいだったのだが、きっとなにかのリスクを感じていたのか、もしくはすでに悪いことをしていて、その足がつかないように的な感じだろう。
副支配人が、支配人に相談して今度は支配人が話を付けました。
「署名するorしない」→「しないなら泊まれない」の一点張りで会話をするも、向こうは一向に応じません
なんと時間にして3時間も「署名できないなら泊まれません」「署名はできません」のやり取りを繰り返していました(1時間でも2時間でもなく本当に3時間)
そのあいだ、ワイはせっせといつも通り業務をこなさなければならず
大変でした。
するとらちが明かないと判断した支配人が、社長の指示のもと警察を呼びました。
最初は2人の警官が来て、最終的には5人の警察官と、社長、支配人、副支配人、の8人でその女性を囲う形になりました。
警察官はこういいます
「署名をするのがこのホテルのルールなんだから、法律とかは関係ないの」
女性は言い返します
「このホテルのホームページなどを見ましたが、署名をしないと泊まれないという記載はなかったです」
このやりとりも数十分続きました
社長が言いました
「お客さん、こちらにも契約拒否権というのがあるんですよ、ごめんなさいね、泊まれません、おかえりください」
もちろん女性は応じません
話はすでに「署名をするかしないか」ではなく、「そもそもホテルにもお客さんを選ぶ権利があるので、あなたはもう署名してもしなくても泊まれない」という内容だった
その後、警察お決まりの「とりあえず署のほうで話聞きますので、、、」
といってつれてかれました。
さてこの3時間にも及ぶ格闘の中で出た、外国人の
「このホテルのホームページなどを見ましたが、署名をしないと泊まれないという記載はなかったです」という問いがここで取り上げる質問になる。
8人で1人を囲んでぼっこぼこにしていたのにその質問が出た瞬間、覇王色の覇気にやられたようにみんなしゃべることをやめて黙り込んでいました。
社長や警察官が何か怒鳴る直前には必ずこの質問が外国人から投げかけられていたのです。
人は相手を支配しようとする時、思考が停止すると、権力や怒りの感情を使いますが、見事なものでした。
さて、これを読んでくれているあなたは、「署名しないと泊まれません」といったこちらの主張に対して、「署名しないと泊まれないという記載はなかった」「署名しないと泊まれないという文章を見せてください」という問いになんて返しますか?
うちのホテルはこの問いにスマートな返しができず何時間も時間を使った上に、「契約拒否権があるから、あなたはもう泊まれません」でした
社会的には外国人の負けですが、こんな客に何時間も工数をもっていかれ、相手の問いに答えられず権力を使用。。。
ワイは、ホテル側の大負けだと思いました。
少なくとも、野良の喧嘩だとしたら大負けです。
「ああ、しゃべるのが下手な人間は何においても損をするのだなあ、、」と痛感したエピソードでした。
ワイは偶然にも護身のために、詭弁やレトリックをちょっぴり勉強しているので、外国人から問いが出た瞬間「うんうん、ワイならここでKOやな」と別の世界線での勝利に浸っていました。
そもそもチェックインをワイがしていればものの5分で片付いた自信もあるが、なんせアルバイトの分際なのでまあそこはなかったことにしよう。
さて、みなさんならどうこたえるでしょうか??
焦らしすぎても嫌われるのでワイなら何て言うかをとりあえず紹介しようと思います
それは「署名したら泊まれるという記載もありませんよね?」です。
追い打ちをかけるなら「ホテルに足を運ばないと泊まれないという記載もないですよね?」でしょうか
ここには、「不測の事態をすべて列挙するのは不可能である」という前提が含まれています。だからこの問いで相手は行き止まりになります。
相手の問いを承諾することは、同時に「相手はホームページには、すべての不測の事態が書かれていると思っている」という前提を決定づけます。
しかし、実際のホームページはそうはいきません。
しかしそこで「そんなの書いているわけないでしょ!」と言っては相手は納得しません。相手の前提はそのままだからです。
だから「署名しないと泊まれないなんて書かれてない」という主張と「署名したら泊まれる」という主張を相手のルール上で戦わせるのです。
鏡から出てきたようなその問いの弱点は、自分が出した問いの弱点でもあるため、相手は、その問いに答えた時点で自分の付け入るスキを与えることになります。
もっといい答えはもちろんありますが、このシチュエーションの場合は、ジョークを挟むと日本の場合不真面目さが際立ってしまう可能性があるのでワイなりの最適解はこれです。
ちなみに、こういった外国人を無視するために法律に関する書物にはたいていの場合「誠意に対する但し書き」があります。
人は基本的に誠実であるという前提があって、一部の不誠実の人間から守るためにルールがあったりするのです。
ということで、アルバイトのワイに任せといてくれれば、、、、といったエピソードでした。
この話を警察やホテルの役員にすると悔しがるでしょう。
「そんな対応あんな奴にしてやるまでもない」とか、「いちいち相手にしてたらキリがない」的な言い訳をするに違いありません。
でも、能力を持っている側からすれば「時間もったいないじゃん」「WIN-WINにする方法だってあったのに、、」と思います。
きっと言い訳をする側も能力さえあれば後者の言い分だったのではないでしょうか?
そう、人間は論理的な生き物なのです。だから、論理で説得されることを最も嫌うのです。
我々がアマチュアスポーツ選手に心からの賛美を送れるのはなぜでしょうか?
自分のプライドが傷つかないからです。
地元の高校が甲子園に出場したら大々的にパレードを行うのはなぜか、それは、甲子園に行ったくらいでプロ野球の世界で一生食っていけるようになるわけではないと理解しているからです。
東大に受かった人を集めてパレードを行おうものなら、そこで起きる拍手はきっと別の音色になるでしょう(学力は将来に直結する可能性が高いから)
人は自分のプライドが傷つかないものにのみ心からの賛美が送れるのです。
人は本質的に論理的な生き物だから、論理で言いくるめられることを最も嫌う。
そして、この詭弁を外国人のように、相手を困らせるために使ってはいけません、あくまで自分の身を守るために、、です!
そのせいで義務教育に話術などが組み込まれないのかなぁ、、などと感じます。
小学生なんかが詭弁を覚えることは危険です。カンニングを見つけても「俺以外にもやってる人がいるかもしれないのに、なんで俺だけ捕まえるんだ?不公平では?」なんて言われたら、訓練していない教師では太刀打ちできないでしょう。
逆に、どんなに年上であっても、詭弁やレトリックは学んでいない人が多いです、自分の経験から学習していく場合がほとんどです、だから、瞬発力が無かったり、自分の中に公式がないからあらゆる問いに対応することができません。
これを機会に1冊でもいいから本を読んでみて学んでみてくださいね。。。
話は脱線しましたが、以上です。