8類型があれば必ず同意が無いというわけではないけど

 今回の刑法改正の推進派だった寺町東子弁護士が次のようにツイートしています。

同意を取っても8類型が覆滅、というところが、認識の違いだと思います。
8類型があれば必ず同意が無いのではなく、8類型は有効な同意ができない可能性がある事由又は状態であって、必ず同意が無いとは限らないから、包括要件としての「同意しない意思の形成表明まっとうが困難」があるので。

https://twitter.com/teramachi_toko/status/1683145237366194177


 これは、間違っています。

 改正法の条文は、「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」となっています。

 つまり、
① 8類型のいずれかに該当する行為・事由その他これらの類する行為・事由があり、
② ①の事由により「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」
わいせつ行為や性行為等を行えば、不同意わいせつ罪や不同意性交罪は成立します。すなわち、8類型のいずれかに該当する事由があり、その結果「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にあれば、相手方が同意の意思を表明していたとしても、犯罪となると言うことになります。

確かに「8類型があれば必ず同意が無いのではな」いのですが、同意があったところで犯罪の成否には影響がないのです。

 なお、「に乗じて」という文言は、監護者性交罪を新設するときに端を発するのですが、

「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは、現に監護する者であることによる影響力が一般的に存在し、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で性的行為をすることをいうが、影響力を利用するための具体的な行為は必要ではなく、一般的には、「現に監護する者」であることが立証されれば、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できるとされている。

国立国会図書館 調査及び立法考査局行政法務課 内匠舞「⼦供に対する性犯罪の現状と課題」

とされているので、同じ「〜に乗じて」という言葉が用いられている不同意わいせつ罪等においては、一般的には、8類型のいずれかに属することが立証されれば、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」わいせつ行為等を行ったことが認定されてしまうのだと思います。

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