気に入らない判決を下したことを理由とする訴追請求
「2019年3月26日の名古屋地裁判決公判で、父親が娘に性行為をした事実があるにもかかわらず、この裁判官は無罪判決を出し」たことに関して、当該事件において裁判長を務めた鵜飼祐充裁判長について、弾劾裁判にかけて罷免するように求める請願が、Change.orgを用いて呼びかけられています。
それは、議会で多数の議席を占める政党の意に反する判決を下した裁判は罷免されるという道を開くものであり、そのような政党の意に反する判決を下すことを裁判官に躊躇させるものといえます。
それは、まさに三権分立の否定であり、裁判官の独立という憲法上の原則の骨抜きにするものとなります。さすがに、自公連立政権とて、そこまでする動きは今のところ見せていません。
しかし、上記請願をしている人たちは、議会の多数派が、そのお気に召さない判決を下した裁判官を、国会内の弾劾裁判というシステムを用いて排除し、もって裁判官を国会での多数派の指揮下に置くきっかけを作ろうとしているということができます。
したがって、この請願運動に参加した人、賛同している人、あるいはこのような請願運動がなされていることを知った上でこれを批判しない人は、もはやご自身をリベラリストと思わない方が良いと思います。
なお、裁判官は、衆参両院から選ばれた委員からなる裁判官訴追委員会で審理に参加した委員の3分の2以上の賛成多数があったときに弾劾裁判所で訴追され、衆参両院から選ばれた裁判員からなる弾劾裁判所で、「審理に関与した裁判員の3分の2以上が罷免に賛成した場合に、罷免の判決を宣告することになります。
現在、裁判官訴追委員会の委員は、20名中11名が自民党に、2名が公明党に所属する議員であり、自民及び公明党に所属する議員だけではギリギリ3分の2は超えませんが、国民民主または維新・希望に所属する議員を説得できれば、その裁判官を訴追する旨の決定を行うことができます。また、弾劾裁判所の裁判員は、14人中8名が自民党、1人が公明党に所属する議員であり、自民及び公明党に所属する議員のみで罷免の判決を宣告することができる状態です。
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