ライブの中止要請に従う必要はない。

 2月29日にライブを決行したことで東京事変(とりわけ椎名林檎)が非難を浴びているようです。
 しかし、ライブを中止すると、前売りチケットは返金しなければならないし、当日のグッズ売上はなくなるなどアーティスト側に多大な損失が生ずるとともに、ドリンク代が入らなくなるなど、会場側にも多大な損失が生ずることとなります。
 そのような損失を甘受することをアーティスト側に求める人たちも多いようですが、それは身勝手というものです。「新型コロナウィルスの拡大防止」という公共目的を果たすための費用負担を、アーティスト等の民間人に負わせようとしているからです。
 「新型コロナウィルスの拡大防止」を果たすためにライブを中止することが必要なのであれば、国がライブの中止または延期を命ずることができることとするとともに、ライブの中止または延期によって生じた損失については国が適正な補償をする旨の法律を制定するべきなのです。憲法第29条第3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と定めていますから、ライブハウス・コンサート会場等の施設や、演奏装置としてのアーティストを私有財産として、正当な補償の下、公共のために、「何もしない」という方法で用いることにすれば足ります。
 幸い、現在国会は開催されているので、与野党協議の上で上記のような立法を早急に行うことは可能です。そして、法案を提出した段階で、「新法の施行日前に国の要請に応じてライブの実施を中止または延期した場合についても、補償に関する規定を適用する」旨の規定を附則で入れる旨をアナウンスしておけば、アーティスト側は経済的な心配をせずにライブを中止することができます。
 そして、ライブ等を中止させた場合にはこれによる損失を国が補償しなければならないということになれば、感染拡大を防止しながらライブ等を決行する手法を、国としても真剣に模索しなければならなくなります。そもそもライブの実施が新型コロナウィルスの感染拡大に繋がるのかを国が真剣に検討するようになることも期待できます(飛沫感染&接触感染なら、席が決まっているホールやアリーナ、スタジアム等では感染拡大に繋がりにくいようにも思われます。)。「国が中止を要請すればアーティスト側が自己負担で中止してくれる」という現状においては、国としては、事態が完全に収まるまで、漫然とライブ等の中止を要請しておけばいいということになってしまいます。

 文化庁は、このような緊急事態においても、私的使用目的のダウンロードの違法化など緊急性のない法案を通すことに注力しているようですが、数ヶ月のライブ中止で干上がってしまうアーティストやライブハウスを保護することの方が、この国での創作活動を保護・推進していく上でよほど重要なのです。

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