[ep.16]超絶技巧マッサージ/摩周温泉の飲泉
【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路 2019の実行委員がリアルに100kmを歩くことを決意し、実行したらどうなるのか?
【前回の記事】
[ep.15]第4CP「9○○草原」グルメリポート
●超絶技巧マッサージ「トリニティ・ヘヴン」
食事を終えた私とあいぼん氏は、布団が敷かれているスペースでマッサージをいただくことにしました。その場には、10年前に私が愛知県で100kmウォーク大会を共に歩いた林さんを初めとして、林さんの師匠である杉田氏、昨年の大会終了後にマッサージをしてくださった泰代女史らがいました。
※10年前に「100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路」を歩いたことは一番最初の記事で記載していますが、私はこの年に愛知で行われた「第14回 三河湾チャリティー100km歩け歩け大会」にも参加しており、本大会幹事長の加藤氏と前述の林さんと私の3名でゴールした経緯があります。今思い起こしてみても、本当に楽しい大会でした。
顔見知り、かつ非常にノリの良いメンバーのため、終始にこやかな雰囲気で…あいぼん氏は、林さんのマッサージを受けていました。そして私は…。
杉田氏が私のもとにニコニコと笑顔で歩み寄ります。小手調べとしてか、疲労が蓄積された私の足の関節を強めに踏みつけます。私は躊躇いもなく、我慢することも出来ず、「ゔおおおぉぉぉォォォ~~っっ!!」と屋内に響き渡るような声を出します。それを見聞しているサポートスタッフは爆笑、休憩している徒歩参加者は「…なにあれ…?」という感じで見てきます。
誤解のないように説明しますと、これ本当に気持ちよかったです。快感と痛覚の境界線スレスレを、自分の意識が激しい正弦波で駆け抜けていくような、身も蓋もない言い方をすれば、語彙力不足を悔やむ程に、これ以上言葉にできない感覚です。
これがしばらく続いた後、驚きのマッサージが展開されます。杉田氏の号令で、杉田氏に加えて泰代女史ともうひとりの男性(すみません、お名前伺い損ねました)の計3名がマッサージに加わるという超絶技巧が展開されます。
相変わらず「っっぐはァッッ!!」と何度も叫びながら、薄れた意識が揺蕩うのです。もしこの体験を味わえるためにリアル100kmを味わえるために歩くのだとしたら、それは自身のゴールの一つとしても差し支えないと言えるかもしれません。
この時に私は、この3名の超絶技巧マッサージを「トリニティ・ヘヴン」と名付けようと心に誓ったのです。
●この期に及んで、やっぱり時間がない…?
3名による超絶技巧マッサージ「トリニティ・ヘヴン」も終わり、お酒も飲んでいないのに酩酊状態のような雰囲気ではありますが、気を取り直して際に進まなければなりません。
何せ、第4CPのクローズ時間が21:30にも関わらず、21:40くらいになってしまっていました。次の第5CP「ピュア・フィールド風曜日」のクローズ時間が1:00、猶予は3時間ちょっと、距離は12.7km。
12.7km÷3時間≒時速約4.2kmで歩かなければなりません。しかもこれは休憩を考慮していない時速です。想像していた以上に時間がありません。
とりあえずお手洗い(トイレチェック)を済ませて、すぐに出発することにしました。札友内寿の家から、トイレ撮影を失念しているのが悔やまれます。今は先を急がなくては。
●21:42、第4CP「9○○草原」を出発
林さんに、次はどのチェックポイントに行くのかを聞いたら、最終チェックポイントでもある第8CP「川湯駅前交流センター」に配備すると聞きました。
「朝方になると思いますが、必ず行きますので待っててくださいね」と声をかけて、林さん・杉田氏・泰代女史らに挨拶をしてから出発しました。
我々は最後尾で出発となったようです。地元警備会社「ユーカラ警備」さんの伴走者がヘッドライトで前方を照らしてくれています。
第4CPから第5CPは、下記の図のようなルートです。途中、立ち寄り必須ではないOTS(オフィシャルトイレスポット)の「JR摩周駅」があります。
9○○草原レストハウスを左側に出るとすぐに、やや勾配のある下り坂になります。図らずも歩みが足早になってしまいます。
前方には多少バラけているものの、数名の徒歩参加者がいらっしゃいました。歩くペースが乱れるのを懸念した我々は、恐縮ながらも、徒歩参加者の方々を挨拶をしながら追い越して、先を急ぎました。
9○○草原を出て最初に左折をする場所があるのですが、そこには明るいバルーンライトが投光されていました。バルーンライトの周りには、明かりを遮ってしまうのではないかと思うくらいの大量の虫が纏わりついていました。その場には、予てより懇意にしている資材運搬スタッフのあだ名:メンディー氏がいました。
メンディー氏は9○○草原に向かう途中にも何度かすれ違い、その都度声をかけてくださっていました。変に心配し過ぎず、世間話のように接してくださることこそが何よりのサポートになるものなんだろうと、妙なタイミングで心を打たれた気がしました。
バルーンライトの場所を左折して少し歩くと、再度左折します。右側に釧路川が並んでいる道です。
真っ暗な道です。全てが夜の帳で遮蔽されている。振り返ろうとするときにマイルストーンに決める目標物もありません。今自分は歩いているのか、むしろ闇の中に足の痛みを伴いながら漂っているだけなのかもしれません。
しばらく歩いていたら、街の明かりが見えてきました。側溝から湯気が出ている場所もあります。民家の脇も通ります。まだ日付を跨ぐ前ですので、明かりが点いている家も少なくないようです。暗闇の中を漂っていた感覚からしたら、夢が覚めたような感覚でした。
下鐺別橋という橋を渡る時に、2名の参加者を追い抜く場面がありました。そのうちの1名(仮にA氏とします)が、敢えてここには書きませんが、相当ネガティブな独り言(あるいは同伴者か、我々に向けたのか)を放ちました。そうか、ああ、A氏はもう己の飼う悪魔に喰い散らかされてしまったんだと悟りました。私は聞こえないふりをして、先を歩かせてもらいました。
下鐺別橋を渡りきって最初にある信号を右折すると道道53号です。これを道なりに進みます。少し歩いて右側を見ると、過去にチェックポイントとして機能していた「JA摩周」の敷地と建物が見えます。現在は大会のチェックポイントではないので静まり返っています。
●23:13、OTS「JR摩周駅」に到着
橋を渡る頃には、真正面にOTS(オフィシャルトイレスポット)のJR摩周駅が見えてきます。
駅舎撮影日:2019年11月12日
前述の通り、ここへの立ち寄りは必須ではないので、無理に立ち寄る必要はありません。ましてや、コースから少し奥まったところにあるので、お手洗いや休憩などの用事がなく体力に余裕がない状態であれば、敢えて立ち寄らないほうが良いかもしれません。
我々も、時間の余裕はないのは理解していましたが、少しだけ立ち寄って休憩することにしました。
JR摩周駅の中に入ると、我々を献身的にサポートしてくださっていた「ねぎぽぽ夫妻」が仮眠をとっていました。
ねぎぽぽ夫妻は、ここのOTSがクローズした際にトイレ清掃をして撤収するスタッフとして配備しています。サポートスタッフは、とにかく「休み時の確保」が重要です。休める時に休まないと、スタートからゴールまでの約26時間、ずっと働き詰めになります。事故や病気を防ぐためにも、有効的な休憩が必要なものです。
奇遇なのか本能的なものなのか、JR摩周駅の私に便意が訪れました。男子トイレに入ります。
下記の写真は2016年大会の清掃後写真です。今年度は撮影し損ねました。
男子トイレの中には、徒歩参加の奥野氏がいらっしゃいました。挨拶を済ませて大便器を確認したところ、なんと全て和式でした。今の私には和式に座る体力がありません。隣りにある身障者用トイレを使うことにしました。先約がいたので、先約が出るのを待って用を済ませました。
身障者用トイレ撮影日:2019年11月12日
●飲み干す一杯、摩周温泉
身障者用トイレを正面にしてちょうど背面側に、なんと飲泉の設備があったのです。
飲まないわけにはいきませんね。案内に従い、約200mlを上限として飲み干します。ミネラルが滲み出ている体内に、温泉が身体の中から沁み渡ります。
案内の中に「この温泉にはヒ素を含むため(後略)」と書かれているのが、なかなかスパイシーな表現です。ヒ素を含んでいても、量が少なければ飲んでも良いものなんですね。
それにしても、こんなスポットがあるのは知りませんでした。来年のコース案内に、JR摩周駅には飲泉があることを入れるようにしておきます。
●持ち歩くお金、財布などについて(私の場合)
飲泉を済ませましたが、相変わらず水分が足りていないようで、飲み物を欲していました。外に自販機がありましたので、160円で600mlのペットボトル麦茶を買いました。自販機は、やや観光地価格設定(ちょっと高め)になっている感があります。
ちなみに私は荷物をほとんど持たずに歩いていると以前記載したのですが、お金、財布の管理の仕方を記録します。財布は持たず、以下のものをジッパー袋に入れて、ボタンの付いている右胸ポケットに入れました。
・1000円札×4枚
・クレジットカード(確かJCB)
・nanaco 残額5000円くらい
・kitaca(交通系ICカード) 残額5000円くらい
・EZOCAカード
・セイコマのポイントカード(小さい方)
第4CPでジンギスカンを買った時と今回自販機で麦茶を買った時に、現金を利用しました。
もしかすると時間帯によっては第3CP道の駅や道中の店で物を買うことも出来るかもしれませんが、この時間にお金を使える場所はほとんどありませんでした。
特に必要がなければ、財布は持たないほうが良い思います。特に私の場合、普段の生活上で何度も財布を無くしたことがあるので、なおさら徒歩参加中には財布を持たないことを決めていました。
[ep.17]別れ、そしてひとりきり につづく