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[ep.8]土瀝青の罅、善人面の罅

【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路 2019の実行委員がリアルに100kmを歩くことを決意し、実行したらどうなるのか?

●14:29、第2CP「はなこや(2回目)」に到着

西弟子屈を周回してきて、もう一度はなこやに戻ってきました。

我々の後ろには残すところ数名程度しかいないようで、テントは既に片付けられ、机と椅子、仮設テントを残すのみとなっていました。

私はこの時点で、今まで100km大会で感じたことのないようなもどかしさが纏わりつき始めていました。現時点で39.4kmを歩いてきたのですが、それ以上歩いたような身体のダメージ・疲労を感じ、未だに背後からタイムスケジュールが追いかけてくる焦燥感、チェックポイントやコース上で好き放題遊べない不満…。これらのフラストレーションが、「自分が自分でありたい」と願う自分自身と鬩ぎ合い始めてきたことを感じました。

俺は俺がコントロールするんだ、何とか心が死なないように、笑顔と笑い声だけは積極的に表に出られるように心がけました。

そして、足の裏のマメがひどくなり始めたので、ここで足の裏をテーピングしていただくことにしました。

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本来テーピングは事前に関節に貼って使うものですが、今回の私の使い方としては、歩いた時に足の裏のマメの痛みを少しでも緩和出来るようにするための、足の裏へのターミナルケアです。

この処置を行っていただいているうちに、我々よりも後ろを歩いていた方々は、はなこやで休むことなくそのまま先を進んでいかれました。スタート直後は先陣の方を歩いていた我々は、図らずもいよいよ殿(しんがり)を務めることとなってきたのです。(※実際には、この時点で2名ほどまだ後ろにいたようです)

●14:44、第2CP「はなこや(2回目)」を出発

足の裏を入念にテーピングしていただいてから、はなこやを後にしました。国道243号を南西に歩いていきます。

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第3CP「道の駅 摩周温泉」に行く途中には、オフィシャルトイレスポット(OTS)の「アトレーユ」、休憩所の「札友内 寿の家」があります。

オフィシャルトイレスポット(OTS)とは、その名の通り、大会公認の「お手洗いスポット」です。飲食の用意は一切ありません。また、タイムチェッカーも設定されていません。

一方で休憩所では、お手洗いと多少の飲食を準備しています。ただしOTSと同じくタイムチェッカーは設定されていません。

OTS・休憩所・チェックポイント(CP)の違いを高速道路の設備で例えるなら、こんな感じでしょうか。

・OTS=トイレしかないPA(パーキングエリア)
・休憩所=飲食ができるPA
・CP=飲食、休憩ができるSA(サービスエリア)

休憩所「札友内 寿の家」には、第1CP「砂湯」で食べられなかったチョコレートがあると実行委員より連絡をもらっていたので、大きなモチベーションを持って札友内 寿の家を目指すことにします。

距離を記す青看板を見ると、何だか変な感覚に襲われるようになってきました。

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第3CP「道の駅 摩周温泉」は、ほぼ弟子屈市街に近いと言って差し支えないでしょう。そのため、14kmくらい歩くことになります。

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この看板を見て感じたのは、「弟子屈市街地まで14kmあるのか」ということではなく、「87km歩けば釧路まで着くのか」といったことでした。思考回路が少しおかしくなってきています。

●1年に1度だけ見られる特別な電光掲示応援

この看板からそんなに経たずに、屈斜路原野ユースゲストハウスの電光掲示が道路の反対側に見えてきます。ここでは粋な計らいで、100km大会徒歩参加者に向けた応援メッセージを流してくれます。

※わりとすぐに終わるので、よーく注目してみてください。

私はこの取り組みを今年初めて知ったのですが、昨年にも表示していただいていたようです。思わず顔も綻ぶような応援です。

第2CP「はなこや」から1.5kmほどすると、左側に敷かれていた歩道が無くなります。ここから歩行者は右側を一列で歩くこととなります。

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私が参加した10年前の大会では、この交差点を左側に曲がっていく道でした。ここを左に曲がるルートは、今までで2-3回くらいしかなかったように記憶しています。

国道243号の両端は、ひどく道が荒れています。

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たまに歩く分には特に気にならないのでしょうが、約40km歩いてきた身体には相当堪えます。平衡感覚を保つための足の力が弱くなり、うまく歩けないことがストレスになり、心にも疲労を与えます。

●大会最初のOTS、アトレーユを通過

こりゃまいった…と思った直後くらいに、オフィシャルトイレスポット(OTS)のアトレーユが左に見えてきました。

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アトレーユさんは、おしゃれなペンションです。オーナーのご厚意でOTSに設定させていただいています。

便艦である私は、本来であればOTSのチェックをしなければならないのですが、断腸の思いで見送らなければなりませんでした。

この時点で驚くほどに時間に追われており、第3CP「道の駅 摩周温泉」まで約11kmを2時間半で歩かなければなりませんでした。しかもこの時間計測の場合だと、第3CPでほぼ休憩もできない計算です。

バディのあいぼん氏と、とにかく急がなければならないという意見で一致し、体力を振り絞って歩くスピードを上げるようにしました。それでも、相変わらず足元は試練を与えます。

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負の感情で身体中が包まれそうになりそうな時に、牧歌的な景色が少しだけ私を救ってくれました。

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それでも、車の往来が多い国道かつ路面は罅割れて平らかではない道が続いていることと、あいぼん氏とは縦に一列に歩いているせいで、会話が途切れがちになってしまいます。

途中驚いたことがありました。恐らくは堆肥を大量に積み込んだトレーラーだと思うのですが、大型トレーラーが通り過ぎた瞬間に、頭の上に星が回るくらいの臭気を携えた風圧が我々を襲いました。周囲に臭いが残り、10分くらいは臭いに悩まされて体調を崩してしまうのではないかと思うくらいでした。さすがに「堆肥を積んだトレーラーの臭気でリタイア」など、笑うに笑えなくもないですが、それはあまりにも不憫すぎるリタイアです。

臭いも落ち着いた頃、どうにも足の裏のマメで歩くのが辛いと思っているうちに、国道243号の左側に歩道が出てきました。

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地元警備会社「ユーカラ警備」のスタッフさんの手ほどきで、国道の右側から左側に移動します。

●札友内の集落に到達、休憩所まであと少し

歩道を歩いて比較的すぐに札友内(さっともない)集落の看板が出てきました。休憩所の「札友内 寿の家」まで残り僅かです。

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前の方に、蛍光緑のビブスを着た人が見えてきました。サポートスタッフと本部スタッフは、蛍光緑のビブスを着ることとなっていますので、身内であることは確かです。徒歩参加者の方に何かを一生懸命説明しているように見えました。

近づいてみると、ビブスを着ていたのは地元本部サポートをしている「せなちゃん」でした。数年前からこの大会に参加してくれている地元の若人です。顔見知りに出会えて、嬉しさと安堵がこみ上げてきました。

せなちゃんがいた交差点を左に入ったところに、休憩所「札友内 寿の家」があります。看板も立っていました。

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タイムチェッカーがいる場所ではありませんが、モチベーションとしていたチョコが置かれている場所ですので、好き放題に食い散らかすべく、嬉々として寿の家に向かっていきました。

[ep.9]至高のグルメとの邂逅、サテライト本部の真骨頂 につづく