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[ep.6]3CP pt.1 "Incident"

【今回のあらすじ】
3CP「川湯ふるさと館」に91名の徒歩参加者が到着しました。

【前回までのあらすじ】
[ep.5]孤独による空谷の刻
重ねて生じる問題を眺めるしかない一人の時間を過ごしました。そして先頭が3CP「川湯ふるさと館」に戻ってきました。

【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路の実行委員である私・便艦(べんかん)が「運営・サポートスタッフ」として、何をして何を感じたかを主観的に書き記すことを試してみるものです。


●先頭が3CPに到着、最後尾は残り約21km

13:35、徒歩参加者の2名が3CP(チェックポイント)「川湯ふるさと館」に到着しました。ここでのゼッケンチェックは私・便艦が担当しています。

先頭を歩くだけのことはあり、体力的には何の問題も無いように見えます。3CPの受付開始時刻は14:00ですので、あと25分ほどは待機していただくこととなります。少し裏話になりますが、13:35に到着するであろうことは想定内ではありました。計算上は先頭集団が最短で13:15ごろにふるさと館に到着する想定をしていました。それでも敢えてオープン時間を14:00にしたのは、コース運用において安全上の都合に因るもので、やむを得ないものでした。

先頭の方ほど立ち止まらずに先を急ぎたくなる気持ちも十分に理解はできます。ただし大会実行委員会としては事故や怪我無く安全に大会に参加していただくように配慮をする義務があり、その安全を確保するといった義務を踏襲した上で作られた大会趣旨にご賛同いただけることを参加条件としているため、何とかご理解いただきたいと切に願っております。

最初に到着した2名の後、13:48までに3人の方が3CPに到着されました。計5名がオープン時刻の14:00までお待ちいただきます。何名かは事前に私がセットしておいたイスに腰を掛けており、自分の取り組みが少し役に立ったことを喜ばしく感じました。

14:00を回り、最初に到着した先頭2名が早々に出発していきました。次の4CP「美留和会館」の受付開始時刻は16:30ですが、ペースを調整しない限りはオープン時刻まで待機していただくことになる想定です。相当早く4CPに到着してしまうことは先頭の方たちも理解しているようでした。

その後、5~10分くらいの感覚で徒歩参加者が3CPにチェックインしてきます。少し小雨が降っているようで、徒歩参加者の身体は少し湿った状態に見受けられました。

14:30ごろに、巡回スタッフの藤田氏から最後尾の情報が送られてきました。最後尾グループの現在地から3CPに到着する予定時刻を計算してみます。

予想では19:45以降、3CP終了時刻の22:00までには確実に到着できる計算でした。最後尾グループが3CPに到着した時に答え合わせをしてみましょう。

いくつかのお困りごとが発生しているので「全て順調に事が運べている」というまでには至りませんが、傷病者や事故が起きていないことには安堵しています。少し困ったことといえば、大会指定の給油所「サンエナジー(出光FC店)」が休業だったことです。売掛対応が出来るため、運営・サポートの給油はこの店舗にて行うように通達していました。この問題は比較的早々に決着することになります。サンエナジーの向かいに「ホクレン」のガソリンスタントがあるのですが、あらゆる根回しにより結果的にはこの店舗で売掛対応が出来るようになりました。

どうにかスムーズに大会が進んでいることを喜びながら、引き続き徒歩参加者の到着を待ちます。さて私に問いかけます、その喜びに隙や綻びはありませんでしたか?順調であることに慢心がありませんでしたか?判断力が鈍るくらいに昂揚感で満たされていませんでしたか?

この後、私は重大なインシデントを引き起こします。

●誤謬(誘導看板の設置)

川湯ふるさと館を出た後、徒歩参加者からどのように進むかわからないといった声が聞かれました。確かに土地勘のない方からすれば当然のことかもしれません。

川湯ふるさと館の外には、全徒歩参加者が通過を済ませて不要になった誘導看板がいくつか回収されていました。そうだ、これを交差点に設置すれば徒歩参加者も迷わずに進めることでしょう。私は誘導看板を交差点に設置しました。

これから出発する方たちにも口頭で説明しました。「信号機のある交差点を右に曲がってまっすぐ道なりに行くとまた信号機のある交差点に出るので、さらに右に曲がってまっすぐ行けば左側に4CPの美留和会館に到着しますよ。」

案内を終えて館内のコントロールセンターに戻り、腰を掛けて大会の状況を確認し直しました。巡回スタッフがリタイアされた方を車に乗せて川湯ふるさと館に戻ってくることなどが報告されていました。

少し手持無沙汰になり、何気なく机に置かれたコースマップの紙に目を通します。このコースマップは私が時代遅れのPCソフトで作成したものです。本当はイラレやフォトショを使いたいのですが、利用料を払ってペイできるようなことをしていないので諦めています。印刷はネットプリントで対応しました。家庭用プリンターやカラー複合機を使うよりもコスパが良いためです。

3CPから4CPに向かうルートを目でなぞっていると、強烈な違和感に加えて怖気を震う感覚に襲われました。

「川湯ふるさと館を出発した後の交差点に設置した誘導看板の方向が誤っている!」

交差点に置いた誘導看板は右折を示す「→」のマークのものでした。しかし実際は交差点を直進「↑」しなければならなかったのです。途中で本来のルートに合流するので行方不明の恐れは少なく思えたものの、誤った情報を伝えてしまった罪悪感にひどく苛まれることになりました。

誤った方向を示す誘導看板

急いでコントロールセンターの席から立ちあがり、交差点に駆け出しました。この時は徒歩参加者がいなかったものの、見られてはいけないものを必死で隠さなければならないような衝動に駆られて、息を切らしながら誘導看板を撤去しました。そしてサポートLINEに誤った案内をしてしまったことを報告します。

この投稿をしたのとちょうど同じぐらいのタイミングで、巡回スタッフの藤田氏が川湯ふるさと館に戻ってきました。まさに渡りに船。事情を説明して川湯ふるさと館から本来のコースに至るまでの区間、誤ったコースを歩いている徒歩参加者に、これからのルートを説明をしていただくように依頼しました。

正しい方向「↑」の看板を設置したいところですが、回収された誘導看板の中に「↑」を示したものがありませんでした。取り急ぎ今のところは、これから出発しようとしている徒歩参加者に向けて、丹念に口頭で説明することにしました。

それでも、川湯ふるさと館からのどちらに行けばいいのかわからない徒歩参加者が多発しているようです。1CPの担当を終えてこちらに戻られた地元スタッフの佐々木夫妻から報告がありました。

手書きで「↑」の看板を書いて電柱などに貼り付けるアイデアも挙がりましたが、霧雨が降っていることもあり見送りました。結果的には、佐々木夫妻の善意で交差点前に張り付いていただき、徒歩参加者を誘導していただくこととなりました。本当に頭が下がる思いです。加えて、誘導看板を回収している巡回スタッフに「↑」の看板を早く川湯ふるさと館に持ってきていただくように依頼しました。初めてのコース設定で生じてしまったこのような問題は、必ずや来年に生かしていかなければなりません。

●想定内と想定外と満足と不満と

この後すぐ15:47に、4CP「美留和会館」に最初の徒歩参加者が到着したことを示すゼッケン撮影の写真が送られてきました。1時間47分で10.1kmを歩いたということは、時速6.1km/h程度で歩いたこととなります。これは想定内のペースではあったものの、4CPの受付開始時間は16:30に設定しているので40分以上はお待ちいただきます。

本大会を運営する上で1つ最近わかってきたことがありました。「参加者の満足度が上がる施策 or 下がる施策」と「想定内 or 想定外」の2×2要素を考慮して施策を実施していく必要性です。本当は「参加者の満足度が上がる想定内」を追求していくことがベストです。しかし残念ながら様々な要因で思い通りに事を進められることはできません。どこを落としどころにすればベターになるかを探すことが積年の課題であり、運営の楽しみでもあります。

その間にも、続々と3CPに徒歩参加者が到着します。中には到着してすぐにリタイアを決断される方もいました。歩いて帰るくらいの体力は残っているようには見えますが、降雨や強風が身体に堪えたのでしょうか。勇断を下した結果であることを、私は願ってやみません。

●同朋、事務局炭田さんの帰還

16:05に事務局の炭田さんが川湯ふるさと館に戻ってきました。これからグランドフィナーレに至るまで、私と炭田さんは川湯ふるさと館に滞在することになります。本当に心強い存在です。

「迷惑なんてかかってないですよ!」

そして誘導看板を回収していたスタッフが川湯ふるさと館に戻ってきましたので、私は早々に交差点へ看板を設置しに行きました。これで徒歩参加者は迷わずに先へと進んでいけるでしょうか。

●飲料設置場所の再考

その後4CPのスタッフから、このような投稿がありました。

どうやら3CPで飲料を探し出すことが出来なかったようです。ここに長く滞在している私の先入観により、スタート前に置いてあった状態のままにしておいたため、何か飲みたい人は意識しやすく、勝手に持っていってもらえるだろうと思っていました。しかし結果的にはこれがユーザーフレンドリーではなかったことを思い知らされました。

到着をチェックするテーブルには書類や資材が置かれているため飲料を置くスペースがありません。そこで代わりに、入口前に置いていた椅子に飲料と一口チョコ、塩飴を置くことにしました。

水・スポーツドリンク・飴を置いた椅子(写真左下)

この試みは成功と言えます。3CPを出発しようとする徒歩参加者が、挙ってここにある飲料とチョコ、塩飴を持っていきました。特に飲料はニーズが高く比較的在庫が薄めになりがちでしたので、何回か奥のテーブルに置いてある在庫を椅子に移動しました。これも来年の設営に活かせる施策であることを実感しました。

●災いは転じることなく災いを成す

3CPに到着する徒歩参加者が増えてきたころ、カップ麺を召し上がる方が多くなってきたように思います。ポットのお湯もだいぶ少なくなってきましたので、川湯ふるさと館内にある調理場で水を汲みに行きました。

水を汲んでいる途中、外の方で騒がしい声が聞こえました。何だろう?と思っていたら、徒歩参加者が到着した様子です。これはまずい、ゼッケンの撮影をしないといけない!調理場で水を止めて、急いで入口に駆け出します。あまり周りを見ないで飛び出したことが災いし、調理場から入口までの間に置かれたソファのアームレストに左腿を強打してしまいました。

左腿を強打した場所(赤丸の部分)

ゼッケンを撮影しなければならないという使命感のためか、痛みよりも焦りの方が勝り、息を切らして顔を歪めながら徒歩参加者のゼッケンを撮影しました。

写真を撮り終えた後に焦りが収まると同時に、左腿に鈍痛が広がっていきます。遠くから私がソファにぶつかる様子を遠くで見ていたねぎぽぽ氏から「ものすごい音がしていたよ、大丈夫だった?」と心配されました。正直に言うと、「だいじょばないけどだいじょーぶ」です。結構痛い。これは誤った誘導看板を設置したことの報いでしょうか。いえ、ただの不注意ですよ。

●お椀クライシス

その他、いつ頃のタイミングかは失念してしまいましたが、2CPで提供していた豚汁が、2CPの終了に併せて3CPに搬入されました。弁当とカップ麺を備えている3CPへ、さらにグルメが増えることになりました。

参加者への提供を試みようとしたタイミングで、困ったことが判明しました。豚汁を盛り付けるお椀が見当たりません。思い出してみたのですが、鍋を川湯ふるさと館に持ち込むときにお椀を見た覚えがありませんでした。

サポートLINEに問い合わせましたが、残念なことに決定打となる解決策はありませんでした。最終的には巡回スタッフがお椀が置いてある倉庫までひとっ走りしてきてくださり、無事にお椀を確保することが出来ました。

●冷涼な風、公衆浴場の記憶

3CPに83名の徒歩参加者が到着する頃、後続の状態を確認するために交差点まで出向きました。今は事務局の炭田さんが川湯ふるさと館に居てくださっているので、安心して外に出ることができます。

気温は12.8℃でした。7月にしては相当冷え込んでいます。川湯ふるさと館は暖かいというには少し暑いくらいの体感でしたので、外気は寒いというよりは涼しくて気持ちがいい感覚でした。昼過ぎに降っていた霧雨も止んでいました。

もう少し先まで歩いてみます。徒歩参加者は見当たりません。ひと気はなく、やや荒涼とした景色が広がります。

川湯ふるさと館に戻る道中も撮影しました。左にある「ゆ」と書かれた看板は、かつては公衆浴場だったところです。1度だけ入ったことがありますが、ものすごく熱かった覚えがあります。残念ながら現在は閉業しています。

足湯前交差点を撮影しました。スタート時の賑やかな雰囲気とは異なり、落ち着いた景色です。

誘導看板だけでは心許ないと思われたのか、交差点で誘導してくださっていた佐々木夫妻が、矢印を印刷してラミネート加工したものを作って電柱に括り付けていました。

電柱に矢印が括り付けられている様子

●各地の様子、そして夜間は単独歩行してはいけませんよ

5CP「レラ摩周」には17:53に先頭が到着したという報告がありました。受付時間は18:00からですが、18:01に出発されたようです。時を同じくして、少しずつ日が暮れてきたこともあり、これから先は1人で歩くことを禁止する決定をし、徒歩参加者にアナウンスするように段取りを組みました。

現在18:00で3CPの受付時刻は22:00まで。残り4時間で残り30名ほどを待ちます。17:54の時点で最後尾は砂湯付近です。

復路のOTS(オフィシャルトイレスポット)砂湯は、スタートから48.8km地点です。13時間で48.8kmということは平均時速で3.75km/h。砂湯から3CP川湯ふるさと館までは7.6km、そのままのペースであれば20時過ぎくらいに3CPに到着できる見込みです(距離7.6km÷時速3.75km/h=2時間1分)。

18:00を迎える頃、もともと予定されていたことではありますが、3CPには地元のサポートスタッフが2名増員されました。2名とも「はじめまして」の方です。3CPが終わる22:00には2名とも帰ると聞いていましたので、夜の帳が下りつつあるこの大会に、どうぞ4時間ほどご助力賜りたく。

[ep.7]3CP pt.2 "Shotgun" につづく