【第6CP→第7CP】山を登るダメ人間

記事初回入稿日:2009.08.12
改訂開始日:2017.07.20
最終改訂日:2019.08.04

2009年6月27日(土)
19:26 第6CP到着

陽も落ちたことで、辺りはすっかり暗くなりました。

ジャリの上にブルーシートやテント、イスが設営されているのですが、砂埃が舞い上がって写っているんです。

このCPは本大会で唯一、屋内の施設のあるCPでもあります。ここ第6CPは「渡辺体験牧場」という、民間の施設をお借りしています。

◆渡辺体験牧場
http://www.wataiken.co.jp/

2008年のコース変更に伴い、解放していただいたこのCP。摩周そばをいただくことができます。

ここには名物商品があります。

その名も、「摩周草原 牛のおっぱいミルク」。発売当時は道新(北海道新聞)に掲載されるなど、鮮烈なデビューをを飾った商品です。

まだいただいたことがないので、今度来訪した際にはぜひとも口にしてみたいです。

念願が叶い、2019年7月5日にお宿 欣喜湯の売店にて購入して飲むことができました。さっぱりとしていながら濃厚な牛乳のコクを味わうことが出来ました。加えて、驚くべきは飲み口の形状。容器の外側にはこぼれないようになっており、口あたりがなめらかになる一因とも感じられます。文章で伝えるのが難しいので、実際に飲んでいただくほかに説明のしようがないです。
(2019/08/04追記)

どのCPでも、到着したことをサポートスタッフに伝えてから休憩するのですが、今回のCPの到着チェックをしていたのは、地元の方でもあり、サポートリーダーの濱岡さんでした。

この濱岡さん、ずーっとこの大会に関わってきた方で、この方がいなければ100km大会が開催されることはなかったと言える方です。

地元のみなさま全員に感謝しているという前置きのもとで書きますが、本大会の発案・企画者であり幹事長でもある加藤氏の意向に応え、大会の開催に向けてご尽力いただいた濱岡さんの働きには、本当に、ただただ感謝するしかありません。

そんな濱岡さんとは、前日に行われた前夜祭でもお話ししました。その時の会話は、こんな感じでした。

濱岡さん(ニヤニヤしながら)「便艦が第6CPに来た瞬間に、CP閉鎖するからさ。もうそこでリタイヤするしかないよ。ガハハハハ」

私「もぉー、ホント勘弁してくださいよー!」

3回くらい、このやり取りがあった気がします。そんな昨晩のやり取りがある中での第6CP到着。

しかも自分だけではなく、自分以上に濱岡さんと親交の深い根津さんもご一緒ですから、濱岡さんからしたら、尚更いじりがいのある2人が来たものです。我々は格好の餌食になることを予想していました。

案の定、我々が来た瞬間、ニヤニヤしながら近づいてきました。そして、濱岡さんの本大会のクリシェとも言える、あの言葉。

濱岡さん(ニヤニヤしながら)「はい、ここで第6CPは撤収~!」

私「もぉー、ホント勘弁してくださいよー!」

2回くらいこのやり取りをして、何とか通過チェックしていただきました。

ただやはりサポートリーダーは大変なようで、第5CPのサポートリーダーIさんと同じく、ほとんど構ってもらうことはできませんでした。

ピンピンしている我々なんかよりももっとサポートすべき人が多いものですから、当然のことでしょう。

リフレインされる会話のやり取りを終えて、我々の目に入ったもの。それは、何とも魅力的で、少年心をくすぐるものでした。

目の前には、トランポリン。

少し前に一緒に歩いた母子の次男は、既にトランポリンで遊んでいます。

少年の心に満ち溢れた我々が、トランポリンを見てスルーしてしまうわけがないでしょう。当然の如く、靴を脱ぐ準備をして、トランポリンへと赴きます。「心がウキウキする」というのは、この時の感情のためにだけあるとさえ思いました。

さぁ、早速トランポリンで遊ぼう!としたところ、スタッフの方より悲痛な言葉が。

「すみません、これに乗れるのは小学生までなんです。」

なんともはや!第4CPの団子汁に続くショッキング体験!

結果的に、トランポリンで跳ねることは叶いませんでした。願いが叶わなかった私は、すごすごとその場を去るしかできませんでした。

そう言えば、この先の徒歩に関しては、ライトが必要になります。ライトを持たない人はこの先進んでいくことができません。

私はこの大会に際し、スタート前の時点で宿泊先にライトを忘れてしまうという失態を犯しました。

昨年まで本部で口うるさく「ライトがない徒歩参加者は、その場で先に進むことができなくなります」と、声高に案内してきたにもかかわらず、この有り様。気が気ではありませんでした。

そんな時、日中、あるサポートスタッフにお願いして、第6CPにライトを運んでいただくようにお願いをしていました。そのお願いが功を奏し、ライトが届いていました。それにより私はここでリタイアすることがなくなりました。非常に感謝しています。

そういえば、昨年の第6CPの名物とも言えた、牛の着ぐるみはないのでしょうか???昨年、第6CPにて牛の着ぐるみを着た根津さんは、徒歩参加者を励ましていたといいます。

その後、根津さんが本部に戻ってきたときに私は初めて着ぐるみを見たのですが、なかなか本格的な着ぐるみでした。

ここに向かうときにも根津さんと牛の着ぐるみについて話をしていたのですが、根津さん曰く、きっと川湯青年会の誰かが着てくれているであろうという希望がありました。

それにもかかわらず、あたりを見渡せど、牛の気配はないのです。そのことが根津さんにとっては、非常にショッキングだったそうです。

とりあえず2人は第6CPのメインディッシュ・摩周そばでも食べようと思い、よくカフェにあるような小さい2人用のテーブルに着きます。男2人には、不似合いなシチュエーションです。

すると、ありがたいことにサポートスタッフの子供たちが、摩周そばを持ってきてくれました。

「いやはや、かたじけない」と感謝の言葉をかけ、我々はそばをいただきます。

よくよく考えてみると、スタートしてから今までの間、飲食に関してはほぼ不自由なく済ませてきたため、お腹ペコぺコの状態というのがありませんでした。常にCPでお腹を満タンにして出発といった感じです。

どちらかというと、CPの食事はサポートの方にとって、より嬉しいものなのかもしれないですね。おそらく、歩くよりも余程食事をとるタイミングがないでしょうから。

10分しないうちにそばを食べ終わった我々は、周りの雰囲気を察し、出発することを決めます。とてもじゃないですが、我々が楽しんでいける余地を見出すことができませんでした。

 ・他の徒歩参加者は、体力の恢復に必死
 ・サポート参加者は、サポートや出迎え、見送りに必死
 ・子供たちは、用意された玩具(トランポリンやサッカーボールなど)で遊ぶことに必死

そんな必死の中に、我々の考える必死というものが理解されることもなく、多少の孤独感すら漂っていることを感じずにはいられませんでした。

結局、昨年活躍した牛の着ぐるみに出会うこともなく、我々2人はこの場を後にすることを決めます。

第6CPの出口に向かおうとしている時に、途中ですれ違ったドロンジョ様が第6CPに到着しました。

実は、ここに向かう途中ですれ違った時に、第6CPで一緒にそばを食べようという話をしていたのですが、あっけなく裏切る結果になってしまいました。申し訳ありません。

出発前に、私はトイレに行っておこうと思い、屋内のトイレに入りました。

トイレのドアを開けると、さらにドアが2つありました。そのまま入ろうとドアノブを回して引こうとしたら、カギが閉まっていました。ノックをしなかった自分に非があります。

中の人は驚いたのか怒ったのか、内側からダダダンとドアを叩きました。申し訳ありません。

ノックをするということを学習した私は、隣のドアを叩きました。すると、ダダンっと、中に人が入っている様子。

私の膀胱タンクの貯水率は非常に高くなっていたため、早く入りたかったのですが、こらえて渋々外へ出ました。

利用者が出てくるのを待っている時に、自分が入ったドアをふと見たら、このマークが。

なんと、こんなところでイージーミスを犯してしまいました。よくよく見てみたら、右隣のドアこそ、私が入るべき場所でした。

私が入るべきところに入ると、ちゃんと小便器が鎮座していました。

程なく用件を済ませてトイレを後にすると、第5CPでサポートしていた、仲の良い会社の皆様がいました。

第5CPを撤収して、ここに来たのでしょう。本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。

このとき、私のツナギの股間部分のチャックはフルオープンしていました。なんと見苦しい思いをさせてしまったものでしょう。

屋外に出て、お待たせしていた根津さんと合流します。

私はここで竹杖を使うことを決めます。

この竹杖、少し前の地点から根津さんは利用していましたが、初年度から役に立っているアイテムの一つです。竹虎さんという会社からのご提供ですが、見た目にも触り心地としても、とても味のある杖です。

さて、出発していこうと思ったその時、濱岡さんに止められました。

濱岡さん「あのさ、この人1人だから一緒に出発してよ」

濱岡さんの横には、男性が立っていました。

この大会のルールで、暗くなってきたら1人での歩行は厳禁というルールがあります。

その方は1人だったようで、我々にくっついていくということになりました。この方にとって我々と一緒であったことは、きっと災難だったことでしょう。

ここから第7CPの山登りは、3人で向かうこととなりました。

ここからのコース概要は、スティントの半分は直線が続き、残りの半分は大会名物ともいえる、摩周の山登りです。

歩いている途中で簡単な自己紹介などを済ませてわかったことは、その方はSさんと言い、新潟からいらしたそうです。

しかも昨年もこの大会に参加されたそうなのですが、因果か偶然か、ちょうどこのスティントの途中でリタイアされたということでした。つまり、ここからが昨年のリベンジとなるのです。

第6CPを出て1.5km程度歩くと、道道52号という道路に接します。この交差点を左に曲がれば、あとは第7CPまでは道なりです。

道なりと言えば一言で済んでしまいますが、ここからが、ある意味ではこの大会の一番のハイライトコースと言っても過言ではありません。

遠くに明かりが見えたまま近付いてこないという不安感、いつまでたっても終わらないカーブと上り坂、疲労からくるのか?幻聴や幻覚。

それらを少しでも緩和したいという思いからくるのか、大きな声で歌う、しりとりをするなど、普段、徒歩では行わないようなことをするそうです。

今までの参加者の話は、壮絶なものが多いです。ただ、4年間で一番最悪な参加者であろう私と根津さんはそんな恐怖感など一切感じていませんでした。

Sさんと昨年の大会についてお話ししていたり、ペース配分など、今までの我々から考えれば何ともまともな話をしていると、右側に1つ街灯が見えてきました。

Sさん「昨年はあそこでリタイアしてしまったんです。」

その時点でSさんはまだまだピンピンしていました。この感じは、この先全くつらくなりそうにない感じです。私はSさんに、街灯まで着いたら、ツバを吐いてやればいいんですよと伝えました。

ただ、わかっていたことではありましたが、街灯は見えてもなかなか近づいてきません。暗闇の中のロングストレートは、距離感を麻痺させます。

しかし、歩いていればいずれは到達することがわかっているので、街灯が近付いてこないことに一喜一憂しても仕方がないのは承知済みです。ただ歩を進めるだけでした。

そしてどれくらい時間がたったかわかりませんが、その街灯にたどり着きました。そしてここで我々は、ちょっと休憩することを決めます。コース上で休憩をするのは、ここが初めてでした。

私は昨晩、3時間くらいしか寝ていなかったので、ちょっと睡魔が襲ってきていました。こんなところで休憩することなんて、滅多にありません。

眠気覚ましというわけではないですが、せっかくなのでSさんにお願いして、我々2人を撮っていただきました。

この街灯からしばらく進むと、右側にパーキングが見えてきます。そのパーキングを越えれば、摩周の山登りが始まります。

パーキングは街灯でライトアップされるので、相当前の方からでも認識できます。

途中、道路の右側にある畑?では、夜にもかかわらずトラクターが作業していました。牧草を丸める作業をしているのでしょうか。

しばらく歩くと、前方に煌々と光る街灯が見えてきました。これこそが、パーキングでしょう。ただし、これも例に漏れず、歩けど歩けど近付く気配はありません。

先程の、Sさんが去年リタイアしたという街灯に関しても、遠くから見えていて一向に近づく気配がなく、突然それが大きくなって到着する、というような感じを覚えます。私だけ?

パーキングも、そんな感じで遠くに見えていて近付く気配はなく、急にくっきりと姿を現すような感じでした。

大体の距離感は他の内地からの参加者に比べて知っている方だと思うので、不安感がなかったことが、自分にとって、救われた要因かもしれません。(根津さんに比べれば全く敵いませんが)

そんなこんなで、パーキングに到達しました。そこでも3人は小休止します。

パーキングから数百m歩くと、歩道がなくなります。よって、道路の右側を歩くこととなります。ここでもユーカラ警備さんに誘われ、道路の右側へと移動します。

そして、ここからが文字通りの山場。過去の参加者を苦しめてきた、摩周の山登りです。

山登りといえど、摩周の山下りに比べれば勾配がきつくはないので、そんなに大変ではないです。

しかし、この時点で自分の足の指のマメはひどいことになっているようで、ヒリヒリしているのを止めることはできませんでした。

とはいえ、今更泣き言を言ったところで痛みがなくなるわけではないので、いっそのこと、この痛みに関しては完全スルーのスタンスで臨もうと決めました。

根津さんは、地元の方ならではの情報として、「変電所みたいなところがあったら、第7CPはすぐ」という話をしていました。これは非常に有用な情報で、具体性が高くわかりやすかったです。

自分が他の方から聞いていた話は、第7CPの明かりが見えてからしばらくは着かないということで、ならば、見える明かりは幻だと決めつけてやろうと思いました。

山登りの途中は3人とも少し疲労が出てきたのか、会話が弾む感じではありませんでした。

自分の場合は、「疲れた」というよりも、「眠い」ということのほうが大きかったです。

普段、日常では21時くらいに寝てしまうことが多いので、21時を越えると眠気が出てきます。この時の自分は、第7CPではゆっくり寝たいという気持ちが大きかったです。

山登りの最中、3人は2~3回くらい、小休止をはさみました。前後に他の徒歩参加者がいる様子はありません。

そんな中、最後にとった小休止では、人の声が聞こえてきました。

これがこの大会名物の幻聴かとも思いましたが、根津さんやSさんも耳にしたようなので、幻聴でないことがわかりました。ですので、大きな声を出して気づいてもらおうと考えました。

私は何と言ったのか覚えていないのですが、根津さんはこう叫びました。

「確定申告はお早めに!」

実に心に響く叫びです。

時期は3ヶ月ほど過ぎていますが、きっと済ませていない方も中にはいるのでしょう。

そうしているうちに、鬱蒼とした木々を越えて空を広く見渡せるような場所になってきました。

それと同時に、前方に明かりが見えてきたのです。自分はその明かりこそが、他の参加者が言う幻なのかと思いました。

変電所らしきものはまだ見えてきません。やはり、もうしばらく歩く必要があるのでしょう。

その光の幻に向かって歩いて行くと、人の気配がありました。

あれ?人がいる?

そう思うのと同時くらいに、3人くらいが我々のほうに向かって歩いてきます。しかも、その明かりは、まさに第7CP「摩周第1展望台」からの光でした。

自分からしたら、いつの間にか第7CPに到着してしまいました。

さっきまで「幻が遠くに見える」と連呼してきたのが恥ずかしい限りです。それ故、自分の中での山登りは、あっけなく終わってしまったという思いでした。

22:26、第7CPである「摩周第1展望台」に到着しました。

眠かったので、距離の感覚がマヒしたのでしょうか。とりあえず、第7CP名物のカニ汁を頂いてから床に着こうと決めました。

昨年、一昨年と、凍えるような寒さで、且つ濃霧に見舞われたというこのCPは、今年はそのかけらすら感じさせないほど暖かく、そして綺麗な星空に纏われています。

例年使用していたジェットヒーターも、この気温では日の目を見ることがありませんでした。

ここで私は、根津さんに申し訳ないと思いながらも、長時間の睡眠をとることにしました。

【第7CP→第8CP】おやすみパパおやすみママもう眠たくて… につづく