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日記(2022/09/12-13)

月曜日。西谷弘『容疑者Xの献身』見る。めちゃくちゃ面白い。初、西谷弘。こんなに品の良いスマートな演出をする人なのか……見てなかったの後悔。アパート2階と地上との高低差の感覚をこんなにも深く印象づけられる映画はない。地上にいる人はしかも橋の上にいるというのもまた良い、その下に不可視の別の高低差がある。橋の下にもまた人がいるのは言うまでもないわけで……。「挨拶の際に控えめに手を上げる」仕草を写した画面の控えめな雄弁さ。福山雅治と堤真一が雪山の斜面で交わす簡潔なやり取りが絶品。ただ唯一気になったのは電話ボックスにいる堤真一が電話を切ったあとの顔の芝居を写す時間が若干長いこと。ここらへんは高ぶった感情を表現しているときの顔を長尺で写すという「邦画」の悪癖を感じさせてしまう。松雪泰子がダンカンに写真見せられてリアクションするときのクロースアップも同じく長い。西谷弘見ていくか……。

火曜日。退勤してすぐに友人からのLINEでゴダールの死を知る。ゴダール、特に80年以降のゴダールを面白いと思えたのは今年が初めてで、『カルメンという名の女』だったかを再見していたときに、ふと、不思議なくらい自然に「面白い」と思えたことが自分でも意外で嬉しかった。ほんの1週間前も『勝手に逃げろ/人生』『フォーエヴァー・モーツァルト』『愛の世紀』『パッション』の4本を見ていた。新作見たかったな。とりあえず何か見たいと思って、未見の『たたえられよ、サラエヴォ』をYouTubeの日本語字幕版で見た。

その後、西谷弘『真夏の方程式』見る。ペットボトルロケット場面のクロスカッティングが一番良いかもしれない。風吹ジュンが鏡に写る杏を見て驚く場面の繋ぎ方も良い。鏡は『容疑者Xの献身』でも頻繁に出てくる。マジックミラー越しに対面する前田吟と杏の場面に関しては、鏡が主題といえる以上は必然的に導き出されるシーンなのだろうが、杏が顔をくしゃくしゃにして本気で涙を流しているという、本来なら「演技派」的な観点から賞賛されて然るべきである、他ならぬその点がどうしても映画を停滞させてしまっている。号泣が美徳になる「邦画」の辛気臭さが露呈しまっているように思える。本物の涙よりも目薬の涙の方がよっぽど良い、ということは映画において往々にしてあるのではないか。

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