日記(2022/09/08)
木曜日。クロード・オータン=ララ『乙女の星』見る。祖母のかつての恋人を描いた肖像画に憧れる少女、ある日現れるその肖像の男の幽霊……と来ればその幽霊とのロマンスが描かれると誰もが予想するのだが、そのあと少女の前に現れる2人の青年が共に彼女に思いを寄せることになり、生者と死者合わせて三人の男たちが少女をめぐって恋愛を繰り広げることになる。この展開が予想外なだけに、かなり複雑な感じ方をした……何をどう見ればいいのか?起こっていることをそのまま受け容れて楽しめばいい!めちゃんこおもろい!ちなみに幽霊役ジャック・タチ。売られ運ばれていく肖像画から幽霊がひょいと抜け出る瞬間に泣きそうになる。そのあと遅れて愛犬も幽霊になって出てくるのはやばい。こういうの見るために映画見てるんよってなる。この場面の音楽も素晴らしい。笛なのだが、ヒュードロドロ的なのじゃなくて、あまりに牧歌的で幸福な音色をしている。幽霊登場シーンにこういう音楽をつけるセンスは見たことがない。幽霊犬と生体犬が追いかけっこする場面も愛くるしい。誰にも気づいてもらえない幽霊がシーツを被って幽霊を演じたときになって初めて大勢の注目を浴びるシーンの哀しさもまた素晴らしい。大勢の人間が衝撃的な場面を目撃して失神者続出!みたいな、映画のこういう場面大好きだがそれもある。ラストシーン、夜空に昇っていくジャック・タチとそのあとを追いかけていく犬……もうこんなん泣かずに見ることできひん。