アラフォー女、痔瘻との闘い(後編)
アラフォー女が痔瘻になるまでの道のり(前編)はこちらから :
いざ入院
さて、時は2021年11月。
まもなく1歳5カ月になる我が子は入院中お泊まり保育に預けることとし、3泊4日、ついに入院の日を迎えた。
入院1日目
この日は入院説明のみ。翌日手術のため夜から絶食となり下剤を飲んだが、シャワーは普通に入れた。
(ちなみに、男性ならこの日に剃毛があるようだがそこは幸い不要と判断され免れた)
特にすることもなく、束の間の一人時間を満喫し、ぐうたら、ゴロゴロしてその日は終了。
入院2日目(手術)
当日は例によって絶食だったので朝は顔を洗い、歯を磨き手術着を着、着圧ソックスを履いて待つのみ。
少し緊張しながら待つ。直前に点滴が打たれ、時間になり呼ばれた。歩けるのでここはスタスタと看護師と共に手術室へ向かう。前室で待つように言われ、折りたたみ椅子に座って待つ。
薄着、そして手術フロアは涼しい為とにかく寒く、余計に緊張した。
手術開始
程なくして手術室に案内される。この緊張感、1年5カ月前に経験した計画帝王切開に似ている(我が子は逆子だった)。ただあの時は、これから対面する我が子を待ち侘びて楽しみの方が勝り、ただただハイテンション、看護師とも和気藹々と談笑する余裕さえあったが今回はちょっと違う。ざっくり同じ尻エリアでも、目的が違うとやはり多少の羞恥と緊張が走るのは言うまでもない。
手術台に案内され、横向きに寝る。するとどこからともなく麻酔師やら看護師が登場し、硬膜外麻酔が始まった。
(何を隠そう、これも1年5カ月前に経験済なため動揺することもなく無抵抗にて完了)
徐々に下半身の感覚がなくなるとあれよあれよと体勢が変えられ、気づくと初めて体験するスタイルの手術角度となった。
言うまでもなく、上半身は感覚アリなので目はバッチリと開いたまま手術が開始された。
痔瘻根治術(切開開放術)
執刀医を含め、よく見ると周りは全員女性だった。リクエストした訳ではないが、配慮いただいたのか?謎。
そんなことを考えて待っていると、言葉数少ないタイプのクールな執刀医が登場。
「では、はじめますねー。」
手慣れた様子ではじまると、早速聞き慣れない音と匂い。……わ、私の尻…焼かれてる模様…。
意識があるのもなかなか辛いものだな、と思いながらもやっと手術まで辿り着けたことにとにかく感謝し、しばし瞑想。真っ先に頭に浮かぶのは、愛息子。彼も人生で初めて24時間以上ママから離れて頑張っている。私も頑張らねば。
あっという間に手術終了
そんなことを考えているうち、時間にして約30分程した頃だろうか。
「終わりましたよー。」
若干遠のいていた意識の向こうから執刀医の声がすると、身体はいつの間にか仰向けに戻されていた。感覚はないが、どうやら導尿が入れられ、腕には点滴がされている状態。
そのまま1時間程、布団をかけてもらい回復室でウトウト。気がつくと病室に戻っていた。
術後の経過
入院2日目(術後当日)
というわけで午前中に手術は終わり、身動きはまだ取りづらかったものの昼前から水分摂取は可能に(友人が持たせてくれたOS-1が身体に染み渡ったことは言うまでもない)。
程なくして昼食が登場。全粥食かと思いきやロールパンと乳製品が出て、ちょっと嬉しくなった(たくさん食べ、早く良い便を出すことが重要らしい)。
術後の痛みは、ジンジンとはするもののさほどでもない。痛み止めを飲み、安定している。肝心の患部からは数日浸出液なるものが出るため、相変わらずガーゼは挟んでいる。
(余談だが、医師からも言われるが女性は術後のことを考えると入院期間は生理と重ならない日程にすることを激しくおすすめする)
そして、何時だったかすっかり忘れてしまったが、看護師と歩けることを確認したら導尿は卒業。術後最初のトイレ(小)はドキドキしたが無事完了。
(ちなみに個人差はあるものの、浸出液がガーゼから染みる可能性もあったので私は夜用ナプキンと生理用の下着をつけていた)
夕食は消化の良さそうな本格的な全粥食だったが、生姜焼きやもやし炒め、ほうれん草のお浸しなど固形物が増えた。
入院3日目(術後1日目)
あまり寝付けず度々起きたものの、朝食は完食。相変わらず全粥食だが温泉卵、味噌汁、青菜炒めなどまぁまぁ美味しかった。
この日も診察以外は特にすることもなくベッドでゴロゴロしたり、TVや動画を見たり。こうなってくると楽しみは食事だけになってくるが、相変わらず全粥食。テンションは上がらない(しかし完食)。
ついにきた、便意
夕方になるといよいよ便意が来た。言うまでもなく、手術位置から近い。力の入れどころ、拭きどころが分からず何とも言い難い緊張感に包まれたが焦らず深呼吸し、何とか乗り切った。
ちなみにいい忘れたが、術後(何なら術前から)は毎回ウォシュレットが必須アイテム。やや弱めモードで優しく洗い、患部の清潔を保つのだが、この術後初回も沁みたらどうしよう、とかなり緊張したのを覚えている。
(これまた余談だが私はそれまでウォシュレットが大の苦手だった。が、今回を機に徐々に慣れ、今ではこの機能が当たり前な国に住んでいられることに感謝する日々)
緊張とは裏腹にウォシュレットは優しく患部を包み込むように温めてくれ、むしろ血行促進、癒し効果も絶大な心の拠り所となったのである。
そんなこんなで入院中の山場を乗り越えた私はすっかり自分を取り戻し、徐々に回復。シャワーの許可も降りた。
若干ビビりながらもシャワーも無事乗り越え、いよいよ明日、退院許可が降りた。
入院4日目(術後2日目、退院)
過ぎてしまえばあっという間だが、やっと退院の日を迎えた。朝食のパン、サラダ、フルーツはしっかり完食。
入院中はコロナ禍ということもあり、基本ずっとカーテンを閉め、部屋に居なければいけなかった。久々に1階に降り、退院手続きを済ませ外の空気を吸うと何だか生き返った気がした。
退院のその日は週末だったため、夫と息子が車で迎えに来てくれた。
久々の再会に高鳴る胸とは裏腹に、ドアを開けると赤ちゃんの時と同じ表情ですやすやと眠る我が子。
まじまじと見つめる。寝顔こそ赤ちゃんのままだが、数日見ないうちに何だかちょっぴり成長したようにも見えた。
しばらくすると目を開き、私がいることにやや驚き、戸惑った様子。「ただいま、ママだよ〜」と話しかけるとみるみる頬を赤らめ、笑顔が戻りはじめた。あぁ、良かった。
退院後の生活
退院時は指示通り次回の予約を2週間後に取った。
処方された痛み止めに加え、ここで初めて注入するタイプの薬が出された。謂わゆるボラギノール的なやつで、患部付近が悪化したりしないように、1日2回尻に注入し使うもの。
しかしこれがまた地味に面倒な作業だった。言わずもがな毎度ウォシュレット、ガーゼ挟みという作業もある為、トイレでの滞在時間が増えるばかり。
時はコロナ禍、リモートワークメインであったことに感謝しかない。が、それでも立て続けにテレカンが入るとゆっくりとトイレに行けず焦った。
感染対策のため初回の診察までは湯に浸かることはNGとされたが、それ以外は、自転車に乗る、長時間座りっぱなし、など過度な負担をかけなければ普段通り、日常生活には特に影響はなかった。
退院後の経過は幸い良好。念のためボラギノール的な薬はしばらく継続と言われつつも痛み止めはここで卒業。
年末年始を挟み、前回から約1カ月半後、再診。引き続き経過確認。ちなみに、この頃にはもうガーゼを挟む必要もなくなり、ウォシュレット以外は通常運転に。しかし、半年以上も挟んでいたものがなくなるのは妙な違和感で、始めはまるで下着を履き忘れたかのような変な感覚になった。
そして、そこからさらに1カ月後に経過を確認し、2022年2月、晴れて卒業。
発祥から約8カ月、長い、長い道のりだった。
あとがき
最後に、備忘録も兼ねて今回の「痔瘻」における気付きなど、思いつくままだが記録しておこうと思う。
気付き/学び
痛い時こそ、病院選びは慎重に。最初に駆け込んだ病院がヤブとは言わないが、最終的にお世話になった医師に後から聞いたところ肛門科は肛門科でも日本大腸肛門病学会認定の病院(=実績がある)である方が安心とのこと。(そんなものがあるなんてそもそも知らなかったが、詳細はこちら)
日頃から下痢を甘くみない。お腹が緩い日は、好きじゃなくてもウォシュレットに頼って、尻を労ってほしい。また、術後も下痢は御法度となる為日頃から腸に良いもの(ヨーグルト、納豆など)を意識して摂取すると良い。
買って良かったもの(生活編)
尻に問題がある人には定番中の定番アイテムだが、ドーナツクッションは術前/術後共にしばらくは必須。高反発でへたらず、私のバディとなったクッションはこちら
前編でも紹介したが、しばらく必須アイテムとなるガーゼは、院内の売店や薬局で買うと割高な場合も。たくさん入って気兼ねなく使える、おすすめガーゼはこちら
退院後しばらく愛用したのが高級系ダブル仕様のトイレットペーパー。メーカーは何だったか忘れたが、値段は気にせず、とにかく一番肌に優しそうなものを選ぶべし!
買って良かったもの(入院編)
ここはやや脱線するが、入院中あってよかったものも箇条書き。
安静時にも飲みやすい、ペットボトル装着型ストロー
安静時に助かる、携帯とBluetoothで繋げるコードレスヘッドホン/ワイヤレスイヤホンなど
安静時に机に置き動画など視聴しやすい、携帯電話スタンド
ベッドから意外と電源の距離があるため、延長コードはマスト
鞄などを掛けたり、タオルを留めたりと何かと便利なクリップ型フック
着替えやシャワー、売店に行くなどあると便利なエコバッグは大小数種
相部屋の場合、イビキや深夜の機械音でぐっすりと寝れないことも。使い捨てタイプの耳栓は必須
洗顔類など、細々したものを収納できる折り畳み型収納ボックス。私は100均のものを愛用
暇な時こそ美容メンテのチャンス。顔用パックや美顔ローラー、ハンドクリームなどはマストアイテム
逆に、買わなくても良かったもの
入院準備リストに携帯用ウォシュレット、とあったので素直に購入した。しかし、病院はもちろん、自宅にも備え付けがあったため結局一度も使わず(出先で無い場合もしばしばあったが、逆にそんなトイレではのんびりと携帯用ウォシュレットを使いたくもない。そして繰り返し言うが、そもそも日本のトイレ事情はとにかく極めて高レベルなので大概備わっており、海外旅行の予定でもない限りは正直不要かと)。
最後に
冒頭でも少し触れたが結局、記事にまとめるまでだいぶ時間を要してしまった。
が、こうして改めて書いてみると意外と覚えているものだし、入院中も暇を持て余し食事の度にご飯の写真を撮っていたからこそ、さらに詳細に記憶を呼び起こすことができた。
さて改めて、何故今回記事を書いたか。
私自身、この病気と診断され始めて色々と毎夜毎夜、不安でインターネットを調べた。しかし、そこで気付いたことは
① 女性の体験談が少ない
② 人様に話しにくい病気なので、そもそも体験談が少ない
この2点だった。
①については本当に、本当に、少ない。術後はどうなるの?手術は痛い?生理中はガーゼするの?などわからないことが多く不安になった。
※ちなみに私は生理中もガーゼは着けてました
そして②については私自身もそうで、結局職場の仲良い人にさえ言ってないし、上司/人事に事務的に報告したレベル。相手も内容が内容なだけに、あまり聞いてこなかった。友人も、何でも話せる仲の良い1人には話したが、それ以外はコロナ禍で連絡も薄くなっていたのも重なり話していない(もちろん、家族には散々話したが)。
しかし、病院の待合室でも女性を意外と見かけた。もちろん男女の割合こそデータから見ても違うものの、当たり前だが、痔瘻=男性、という限りではない。
きっと私と同じようにある日突然味わったことの無い痛みを尻に感じ、青天の霹靂、痔瘻と診断されあたふたする女性はいるはず。
(念の為書いておくと、決してフェミニスト発言をしてる訳ではない)
それならば、と少しでも詳細に私の実体験を晒そう、と思い立ちnoteを始めたというわけ。
書けば書くほど長く、長くなってしまうのでこれにてアラフォー女、痔瘻との闘いは終了。
今日痔瘻と診断され眠れぬ夜を過ごしている人にも、明日痔瘻と診断されて不安な日々を過ごす人にも、少しでもこの記事を読んで「あ、こんなもんかぁ」と安心してもらえますように。
勢いのまま書いたので、誤字脱字はご愛嬌。
長文最後までお読みいただき、ありがとうございました!
#アラフォー #女 #痔瘻 #痔 #肛門周囲外膿瘍 #子育てママ
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