1.はじめに
本多勝一氏の著作 「日本語の作文技術」は、文章を書くことを生業とする者にとっての必読書です。この中に幾つか、複数の意味に解釈できる文章である多義文が記載されております。これを ChatGPT 4o に読ませて、複数
の意味を解釈できるか否かを試してみました。
2.多義文とその判定結果
2.1.第39ページ
この文は、東京湾、瀬戸内海は巨大船の航路が決められ、対抗船が違うルートを運行するよう航路が分離されいるのか、それともいないのかが明確ではありません。この文章について ChatGPT 4o に聞いてみました。
ChatGPT 4o は、巨大船のための専用の航路が決められていないのか、巨大船のための専用の航路が決められているのかが不明確であることを指摘しています。これに付随して、東京湾や瀬戸内海では巨大船のための専用の航路が決められていないのか、決められているのかが多義的に解釈しうることを間接的に指摘しています。
この表現を明確化するため、筆者の本多勝一氏は以下のように修正していました。
修正した文章をChatGPT 4o がどう判定するかを問い合わせました。以下がChatGPT 4o の回答です。
ChatGPT 4o は、「は」を加えただけでは未だ不明確であると判定しています。確かに「は」を加えただけでは、シンガポール海峡は巨大船の航路が決められているのか、それとも決められていないのかはいまだ不明確です。
これを、当職が、以下のように修正してみました。新聞記事っぽくない技術文章ですので、文体的には新聞記事から離れています。
修正した文章をChatGPT 4o がどう判定するかを問い合わせました。以下がChatGPT 4o の回答です。
2.2.第74ページ
この文章は、渡辺刑事が血まみれなのか、賊が血まみれなのか多義的です。ChatGPT 4o の回答は以下です。
ChatGPT 4o は、渡辺刑事が血まみれなのか、賊が血まみれなのか多義的であることを指摘しています。
賊が血まみれであることを明確化するため、筆者の本多勝一氏は、以下のような修正をしています。
修正した文章に対するChatGPT 4o の回答は以下です。
ChatGPT 4o は、この文章の修正案を正しく一義的であることを判定しています。
2.3.第140ページ
この文章は、子供が小さいのか、学校が小さいのかが多義的です。この文章に対するChatGPT 4o の回答は、以下です。
筆者の本多勝一氏は、これを以下のように修正しています。
修正した文章に対するChatGPT 4oの回答です。
「小さい」が学校に掛かることは一意ですが、指摘のように学校が小さいことを言いたいのか、子供のための学校であることを言いたいのかは多義的です。このようにChatGPT 4o は、詳細に多義文を判定しています。
2.4.第171ページ
この文章は、日本ではガラスやブリキの破片がころがっているのか、いないのかが多義的です。この文章に対するChatGPT 4oの回答は以下です。
ChatGPT 4o は、日本ではガラスやブリキの破片がころがっているのか、いないのかが多義的であることを間接的に指摘しています。
筆者の本多勝一氏は、上記文章を以下のように修正しています。
ChatGPT 4o の回答は以下です。
外国の状況(メコンデルタ)を説明している解釈1のほか、日本国内の状況を説明する解釈2を導いていますが、これは誤読のように思います。
この文章を、2つの文章に分けてみました。
この文章に対する ChatGPT 4o の回答は以下です。
ひとつの文章では、かなり苦労しても、やはり多義的に解釈できると指摘されました。そこで上記のように2つの文章に分けて、日本の海岸とメコンデルタを対比することで、ChatGPT 4o から明確であるとの言質をとることができました。
3.おわりに
ChatGPT 4o を使うことで、文章の多義性を検出できることが判りました。やたらと細かなところまで指摘してくる傾向がありますし、誤読する場合もあります。しかし、文章の作成者には気付かないような微妙な多義性を検出してくれるので、役に立つ場合もあるとおもいます。
4.イラストについて
当記事のイラストは、ChatGPT Plus のGPT である Manga Draw を使って生成しました。