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特許の鉄人2024 第1試合で出題された問題について

1.はじめに

 特許の鉄人2024とは弁理士同志がクレームドラフティングで対戦するイベントです。アイキャッチ画像は試合のイメージです。

 日時:8月24日(土曜日)
 場所:大阪工業大学 梅田キャンパスOIT梅田タワーセミナー室204
 主催:株式会社知財塾

 第1試合で出題された問題であるカサップについて検討してみました。

2.カサップについて

カサップとは、傘を持ち歩くときに雫を拭きとる機能を持った傘のホルダーです。

・Amazonにおける商品説明画像のひとつを以下に引用します。

・機能として、傘の雫を拭きとれるというものがあります。
・構造として、筒状構造の内側に吸水部を設けたものとなっています。旧水面には幾つかのバリエーションがあります。

・この筒状構造により、傘の太さによらず、長傘、折り畳み傘・太い傘・細い傘  関係なく収納できます。
・カサップには、マルカンがつけられております。これにより、ベルトが装着できるなどの効果を有します。
・類似商品(先行技術)は、UMBLELLA CASE, SUSU, CURUMU などです。

類似商品その1 UMBRELLA CASE

楽天市場より引用

 このUMBRELLA CASEは、内部に吸水部を有するのはカサップと同様ですが、筒状構造ではありません。
 このUMBRELLA CASE には、さりげなく「ペットボトルも」と記載されています。想像ですが、畑山先生はこの記載を拾って、吸水具の請求項に上位概念化されたのだとおもいます。

類似商品その2:スウスウ

Yahooショッピングより引用

スウスウは、カサップと同様な筒状構造ですが、長傘専用であり、かつマジックテープで太さを調整する構造を有していません。

類似商品その3:CURUMU

楽天市場より引用

CURUMUは文字通り傘を包む構造です。筒状構造ではないほか、内側の吸水部を有していません。

3.試作クレーム

クレームを試作してみました。やはり時間が掛かりますね。多分1時間くらいは掛かっているとおもいます。
中村忠則先生、畑山吉孝先生のクレームがなんとなく頭に残っていますので、コンタミネーションが発生しているかもしれません。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
 傘を保持して雫を拭き取り可能な傘ホルダーであって、
 筒状構造の本体と、
 前記本体を所望の径サイズに調整して維持する固定手段と、
 前記本体の内側の何れかに設けられた吸水部と、
 を備えることを特徴とする傘ホルダー。
【請求項2】
 前記固定手段は、ボタンとマジックテープの組合せであり、
 前記ボタンよりも前記マジックテープの方が外周側に設けられている、
 ことを特徴とする請求項1に記載の傘ホルダー。
【請求項3】
 前記本体は、筒状構造の上端側の開口のほうが下端側の開口よりも広い、
 ことを特徴とする請求項1に記載の傘ホルダー。
【請求項4】
 前記本体は、帯状に突出する複数の突出部を有し、
 前記複数の突出部には、それぞれボタンが設けられている、
 ことを特徴とする請求項1に記載の傘ホルダー。
【請求項5】
 前記本体の長さは、10センチメートル以上かつ20センチメートル以下である、
 ことを特徴とする請求項1に記載の傘ホルダー。

請求項1は筒状構造であり、かつ傘の太さによらずに収納できることを発明の特別な技術的特徴(STF)としてみました。
請求項2は固定手段の詳細です。ボタンで筒状構造にまとめたのち、その外周側のマジックテープで細かく傘の太さに合わせて調整可能であることを記載しました。
請求項3は、カサップの構造から看取できる、上が広くて下が狭い筒状構造をクレームしました。
請求項4は、初版のカサップの、カバンなどに取り付け可能とする構造としました。改良版カサップのマルカンを付けた帯については、一度はクレームに書いたのですが、先行技術から公知とされそうですので削除しました。
請求項5は、パラメータ特許としました。先行技術よりも小さくても機能を果たすことからです。なお、パラメータ特許は比較的潰されにくく、よって競合他社の侵害を抑止できるため、お勧めです。

畑山先生のように吸水具の特許としなかった訳は、上位概念化してもなお発明の特徴をうまく捉える自信がなかったことです。上位概念化によって発明の技術的範囲か広がり、よって権利化が困難になるのをおそれたという理由もあります。

4.カサップの出願について

カサップに関する出願は、実用新案登録第3229655号と思われます。

実用新案登録第3229655号 図1 かさモンM2でしょうか。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
傘を挿入して保持する傘保持具であって、
円筒状に形成され、円筒内に挿入される前記傘を把持する把持部と、
少なくとも前記円筒状の前記把持部の内側面に形成され、前記把持部に挿入される前記傘に付着した水滴を吸収する水吸収部と、
前記傘保持具を物体に取り付けて保持させる保持部とを、
備えることを特徴とする傘保持具。
【請求項2】
前記把持部は前記傘の一部を把持し、傘の挿入口の円周長より前記挿入口と対向する出口の円周長のほうが短く構成されることを特徴とする請求項1に記載の傘保持具。
【請求項3】
前記把持部は、前記傘の抜け落ちを防ぐストッパー部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の傘保持具。
【請求項4】
前記水吸収部は前記把持部に対して着脱可能に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の傘保持具。
【請求項5】
前記把持部は係止部材によって前記円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の傘保持具。

先行技術

本出願の先行技術は実用新案登録第3165412号です。この先行技術は水滴を周囲に付着させずに水滴を拭き取ることができません。

本願の請求項1によれば、水吸収部により、水滴を周囲に付着させずに水滴を拭き取ることができます。

本願の請求項2によれば、前記把持部の構造により、傘の挿入をしやすく、さらに抜け落ちを防止することができます。

本願の請求項3によれば、ストッパー部により、傘の抜け落ちを防止することができます。但し、特許の鉄人ではストッパー部は言及されていませんでした。

本願の請求項4によれば、水吸収部を容易に交換することができます。特許の鉄人では水吸収部の交換については言及されていませんでした。

本願の請求項5によれば、使用しない場合にはかさばらずに収納でき、持ち運びを容易にすることができます。

また、本願は図9以降に、さまざまな変形例が記載されています。

変形例1:図9

図9

図9に記載の変形例は、上側と下側が同じ径のものであり、筒状構造が円柱形です。

変形例2:図10

図10

図10に記載の変形例は、帯革101が傘保持具10の下方に設けられたものです。革帯101を締めることによって傘保持具10の下方が絞られ、傘20が抜け落ちることを防ぐことができます。

変形例3:図11

図11

図11に記載の変形例は、マジックテープ110が傘保持具10の下方に設けられたものです。マジックテープ110を締めることによって傘保持具10の下方が絞られ、傘20が抜け落ちることを防ぐことができます。

変形例4:図12

図12

図12に記載の変形例は、全体を四角錐として、係止部120をマグネットとしたものです。

つまり、本願係止部はマグネットでも良かったようです。
また、全体を四角錐としてもよいならば、全体が三角錐、および五角錘以上であってもよいようにおもいます。

変形例5:図13


図13

図13に記載の変形例は、全体を四角錐として、革帯130で係止したものです。

変形例6:図14

図14

図14に記載の変形例は、全体をキューブ形状としたものです。

展開したときに平面状にならなくてもよいならは、係止部が不要なので、この変形例をカバーする請求項があった方がよいのかもしれません。

5.終わりに

 ここでは特許の鉄人2024の第1試合にて出題された問題を検討してクレームを試作し、その元となる製品の公報を検索してクレームを検討しました。

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