特許申請書類の書誌事項をチェックするWordアドイン「書誌事項Lint」その2
1. はじめに
書誌事項Lintは、特許申請書類の書誌事項をチェックするWordアドインです。主に特許事務所に向けて作成したものです。
前回の記事はこちらです。なお、アイキャッチ画像は、DALL-E3 で作成したものです。
ダウンロード先はこちらです。
書誌事項Lintには、書誌事項をチェックするためのさまざまな機能があります。この記事では、文字コードのチェック機能をご説明します。特許申請書類で使える文字の範囲は、JIS-X0208-1997 です。
2.文字コードのチェック
例えば、以下のような特許の願書を仮定します。電子出願ソフトサポートサイトのひな形をベースに作成したダミーです。
ここで、発明者の「髙橋 龜吉」の1文字目は、いわゆるハシゴ高であり、JIS-X0208-1997 には登録されていません。特許庁への申請書類に使えない文字コードです。
これを書誌事項Lintでチェックした結果が以下です。ハシゴ高にWordのコメントが付与されており「不正な文字コードが使われています」と警告されています。この場合「▼高▲橋 龜吉」と記載することで、出願可能となります。
発明者名で不正な文字コードが使われるのは、日本人の人名だけでなく、漢字使用国の外国人(中華人民共和国または中華民国)であって、氏名がJIS-X0208-1997 に準拠しない漢字を含む場合です。(以下参照)
ここでは、「王 茗泽」さんの名前の2文字目と、「李 艺涵」さんの名前の1文字目がエラーとなります。
以下が、書誌事項Lintでのチェック結果です。該当する文字についてエラーを指摘しています。
このような場合には、全てをカタカナで記載するか、または該当する非JISの文字を原音とおりにカタカナで記載することで、電子出願可能となります。(出願等の手続の方式審査に関するQ&Aより)
なお、特許庁の方式審査室に問い合わせたところ、発明者の氏名は全ての出願において同じになるようにして欲しいとのことです。つまり、過去の発明者の出願を把握して、それと同じ氏名の記載とすることが必要です。
書誌事項Lintは、発明者の欄のみならず、記載された文字すべてについて、JIS-X0208-1997に準拠するか否かをチェックします。よって、ハシゴ高の他にも、合成丸①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⓪⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲⑳や、ローマ数字ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦⅧⅨⅩⅭⅯ、特殊記号㈱㎝⊿∑や、上記のような中国語の固有文字についてもチェックします。
3.他のソフトによる文字コード
当職が以前にVBAで作成した文字コードチェックソフトがありました。VBAなので遅いですが。
文字コードのチェック機能は、I.B.RESEARCH社の明細書チェック支援・チェッカー版 Word add-in typePRO にも「特許庁規定外(JIS規格外)文字アラート」として組み込まれています。
株式会社ASUのJ-Check8 にも文字コードチェック機能が組み込まれています。
4.おわりに
文字コードの誤りにより、インターネット出願ソフトにてエラーとなってしまう事態は、ついつい発生してしまうものです。上記のようなソフトを使って、予め文字コードをチェックすることで、このようなエラーを防ぐことができます。