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コマが身罷った次の6月、性懲りもなく惨仔が猫を連れてきた。 ティーゲル大王も身罷り、チッチも没、鯖虎のナッチが実家、妹たちの所に君臨していた。 避妊手術をしてから8㎏越えの巨大猫。

その頃、倉庫にしていた旧建屋に商品を取りに来ていた。 店舗兼事務所はワンブロック向こう。

「あ お兄ちゃん、ちょうど良かった」 

何やらバスケットを持っていた。 実家と元の事務所を繋ぐ扉を開けると惨仔が居て、わっとなった。

「ねえ 見て」 バスケットを上がりに置いて、蓋を開けるとキジトラ、上がキジトラ、脚にかけて白、そして三毛猫。 手のひらに乗りそうな大きさの仔猫が3匹。

「お兄ちゃんところはミケが良いと想うの」 勝手に決めるな!

「カミさんが動物嫌いだから、無理だよ」 と言っている間に、一番小さなミケがバスケットを飛び出し、半開きだった扉を抜け階段を駆け上がった。

2階が倉庫、3階は僕たち家族の住居。 角度50度を超える違法建築、半尾の三毛猫が高速で駆け上がっていく。 僕も1段飛びで上がった。

僕の家族のダイニング、駆け込んで、ソファの上に、そこはコマの指定席。 仔猫はそこで匂いを嗅いでいたが、僕のクッションの上で丸くなってしまった。

「あれまぁ」  猫様はサーバントを自分で決めると言うが… まぁ良いか。

僕はコマに使っていた食器を洗い、トイレを設え、高円寺のオリンピックであれこれ買ってきた。

連れてこられた猫は新建屋の2階、妹たちの部屋に、ミケも時々遊びに行っていたが、キジトラメスのうーこ、オスのしまぞうに比して、半分くらいの大きさしかない、けっこう虐められて、結局3階の僕の所にいついた。

長女にもなつき、元嫁を敬遠するところはコマと同じ。 猫は自分を嫌う相手を敏感に見分ける。

僕が仕事から戻ると、3階の階段の上から下を見ている、 ミケと呼ぶと にゃああああっ なぜか叫びながら、階段を駆け下りてきて、コマと同じ2階の踊り場で落ちあい、抱き上げると、左肩に乗り額を頬にすりつけてくる。

「おまえ、誰に習ったのさ」

姿かたち、声、ゴロゴロもコマと違うけれど仕草が全く同じ。 毛が柔らかくて、オクターブの高い優しい声だった。倉庫と新建屋を繋ぐ扉をすこーし開けておくと、実家の台所についている猫ドアから出入りする。

庭に出たり、まだ 御屋敷だらけだった近所の庭へ入り込んで遊ぶ。

下へ行くと兄弟たちに虐められるけれど、 鯖虎のナッチとは仲が良かったようで、ミケが虐められるのを止めてくれていた。

新建屋に居るミケの兄弟は ときどき僕たちの住居にやってくる。 目当てはヒルズのサイエンスダイエット。  当時、カリカリは腎臓に悪いとされていて、基本、缶詰、猫缶。 ヒルズだけは大丈夫と評判で、僕はヒルズを支度していた。 下の仔は妹達で賄っていたから、猫缶。

うーこやしまぞうが サイエンスダイエットを喰いに来ていた。

ナッチが身罷って、ミケの兄弟だけが残り、ミケは外界への出入り以外、舌へ行かなくなった。

その頃、父が株の信用買い、先物で負けて、外の仕事場、社宅にしていたリーダーの住まいも売り、リーダーも退職。

倉庫にしていた旧建屋の2階を片づけて事務所にした。

つまり、僕の住居が3階 仕事場が2階。

仕事場にしたから、朝から夕方まで事務所棟のシャッターを開ける。 基本、僕のデスクの横に椅子を置いて、寝ているミケだったけれど、出たいと階段を降りて、事務所の扉を開けろと言う。

帰ってくると、ガラス戸の向こうで 大声で啼く。

ミケも僕を使うのが上手な仔だった。

一番大きなときで3㎏。 今の4代様の半分以下(笑)

officeのカウンターにクッションを置いて、暫く寛いでいるのだけど、気が向くと、僕の膝に乗り、動くなと爪を出す。

外に事務所が有ったときは父の意向で、スーツだったけれど、父が博打に負けて、大人しくなってから、ずっとジーンズで仕事をしていた。

家庭用品のハンドリング、機械系、どっちにしてもスーツじゃ汚れて仕方がないもの(笑)

だから、ミケも遠慮なく膝に乗り、爪を立てる。 猫の爪って 分厚いアメリカのデニムでも通しちゃう(笑)

ミケ達3兄弟は、惨仔の知り合いの塾経営者のマンションに居たらしい。 5匹兄弟、親猫 都合6匹。  マンションはペット禁止なので 退去か猫の始末を言われていたらしい。 惨仔が連れてきた3匹以外、保健所と聞いた。

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