離婚するためには、まず結婚、そこから初めます(笑)
僕が結婚したのは昭和のほーんとに終わりの頃、新宿の英会話スクールで出会ったナースでした。
どこが良かった? 顔(笑) あ 別嬪だと想ったの、だから彼女がレッスンする時は、出来るだけ、同じグループになるようにブッキングした。
会員同士の交流も有ったから、飲み会を催したり、ボーリング大会を主催したり、地元だから新宿は、あちこち融通が効いたので、いろいろ出来て有利だった。
彼女に言い寄っている男も数人居たけど、蹴散らした(笑)
思い返すと、彼女は父方の祖母に似ているんだ、祖母の若い頃を知らないけど、後に年を喰った彼女の顔を見て、はたと思い当たった。
容姿だけじゃなく、性格まで似ていたから、縁が切れることになってしまった、配偶者は自分の親に似た相手を選ぶと言うけれど、僕は父と性格の似た祖母に似ている女を選んだ。
全部終わった今だから、こうして分析を楽しめている。
嫁、千尋と出会ったのは27と26の時、彼女は1つ年下、学年で2つ。
それまで、付き合った女性より質素だけど、さすがナースで、英会話教室でもテキパキしているし、言い寄る男の捌き方も上手かった。
ボーリング大会の後から、なんとなく二人で遊ぶようになって、銀座でデート、資生堂パーラーで伊勢海老のカレーとパフェを喰って、
そこいらで銀の髪留めをプレゼントしたら
「ヒロさんから私へのイメージってこんななんだね」
え? それは割と可愛らしい感じの、ピンクなんかもあしらったシンプルな髪留め、長い黒髪に似合うと想った。
そんな、変に突っ張るところや、時間にルーズなところが気になったけれど、まぁ、おいおい、お互い摺りわせれば良いと想い、半年程付き合ってプロポーズ、婚約。
千尋の親に挨拶に行ったのは8月だった。
羽田から1時間飛行機、空港からレンタカー借りて1時間、山道。
北海道へ行くより移動距離があって、けっこう草臥れた。
千尋の実家はデッカイ平屋、典型的な農家のそれだった、檜やら使っているらしいけど、かなり古く劣化している。
柱は黒光りし、梁も見事な光沢だ。
母親が出てきて、挨拶をした、手土産を渡す、とらやのおもかげ3本セット(笑)
土間をぐるっと歩いて、台所の上がり框のようなところに、小さなおっさんが居た、顔つきは千尋に似ている。 薄青の一升瓶を抱えていて、良い香りがする、良い酒だね(笑)
「こんにちは、はじめまして」
名乗ろうとしたら、遮られた
「おい、いくら東京のゼニコ持ちか知らんが、うちも山ば8つあっとたい」
「はぁ」
「血筋も、やんごとなきあたりより古かぞ、おまえはどこの馬の骨たい」
千尋を肩に担いで、引き返そうかと想いました、本当にw
「こらっ」
よく、歌舞伎町をはずれて西武新宿の通りあたりで、おのぼりさんが、こうやって意気がってるの見るけど、1300km西で見られるとは(笑)
「東京もんば、酒ば飲めんとでしょうが」
一升瓶の首のところをもって、ぐいっと突き出してくる、1/3くらい残っている 酒がちゃぷちゃぷ揺れてるのw
「いただきっまーす」
一升瓶は僕の手に移っていた、そのままラッパ。 1/3が気泡を立てながら、瓶から流れて、僕の喉に、あぁ香りの良い酒だ、美味いねえ。
とんっと一升瓶を立てて にっこりしてあげたよ、千尋のお父さんだもん。
「おかわり」
千尋にシャツをひっぱられた
「んじゃ 失礼します」
人口1万くらいの街だそうな、母方の叔母が、宿屋に嫁いでおり、宿はそこになった。
車から荷物を出して10分くらい歩いた、叔母のつれあいの叔父が迎えに来てくれて、なんかしらないけど 肩をばんばん叩かれて笑いかけられた、 それから宿の広間みたいな所で宴会、親戚やらで20人くらい居た、気づいたら、部屋に戻って居た。
宿に来る途中に、街の誇りの泉だって所が有ったのを思い出して、つっかけを履いて、そこへ水を飲みに行った。
富士の浅間神社の水と同じくらい美味かった。
蚊に咋われながら星を見ていたら、叔父さんが迎えに来たので戻った、 良い所だ。 寺も人口にしては数があるらしい、宿へ戻りながら、聞かされた。
浄土真宗、禅宗、真言宗。
へぇ、弘法さんは どこへでも来るんだな、ここは西郷さんも来ていたらしいけど(笑)
それから3ヶ月後、僕の両親も、ここへ来ることになる。 両家とか面倒くさいから、止めようと行ったのだが、関門海峡を挟んだアイランドでは、それをしないと嫁に貰えないらしく、僕は大嫌いな親父に土下座して、出張ってもらうことになった。
なんか知らないけど、親父は張り切って、あれこれデパートの外商を呼んで、支度していた。
でかけたのは大相撲の秋場所をやっている頃、羽田まで電車かモノレールにしようと言ったのだが、親父がどうしてもと言うのでタクシーに乗った。
したら、タクシーに乗った瞬間、寝やんの、ぐうぐう言ってるの、新宿から首都高に乗って、直ぐに渋滞が始まった、絶対間に合わないから、首都高を降りて、千駄ヶ谷の駅に着けてもらった。
「混んだ道を選ぶとは」
タクシーの運転手を怒鳴りそうになる親父をひっぱった、頭を下げて、千券を2枚渡したら、後頭部をひったたかれた。
てめえの忍法責任転嫁に他所様を巻き込むんじゃねえよと想ったが、行かないと言われても困るから、親父にも頭を下げた。
新橋まで出て、電車に乗ったけれど、羽田についた時は、もうチェックイン不可で、その後の便にも空きが無かった。
東京駅に戻り、新大阪へホテルを手配して、大阪からの始発便を3席予約できた。
で 結納は無事に済んだのだが、宴会が終わってから、宴会代は婿さんの家持ちだとか、聞いてないよの事が連続w コンビニがあり、キャッシュカードは持っていたから事なきを得たが、あれだけすったもんだしたのは、神様が止めておけと言ったのだろう。
神様に素直にならなかった自分を殴ってやりたい。
ただ ただ、千尋=女の子を困らせちゃいけないと 必死だったのは若気の至りを通り越して、行ったり来たりしてたんだろうなと後悔している(笑)