「メタルネコ」は無理なのか?ネコ造形、材質の旅。
私はネコ造形を始めておよそ6年めです。当初から「材質を何にするか」をとても迷いました。現在はレジン(樹脂)をメインにしていますが、今後も検討は続きます。そこで今回は材質について試行錯誤したプロセスと、その中でも金属鋳造に挑戦したお話しをさせていただこうと思います。
初期:オーソドックスな「石粉粘度」
石粉粘度は今、ハンドメイドで自由なカタチを作る場合、ひとつの王道とも言える素材ではないでしょうか。長所は手軽=価格も高くはなく、ある程度の細かい作業も可能です。多くの方が身近に感じやすい素材です。
一方短所はまず、乾燥とともに固まることです。そのため何日にも渡っての制作にはやや不向きです。湿度を保っていれば硬化をある程度防ぐことはできますが、しかし小さい部分などの可塑性をキープすることは難しく、やはり基本的には制作時間が有限です。
また、硬化した部分を後から削ることは可能ですが、後から新たに付け足すことには向いていません。先に硬化した部分との食いつきは悪く、ポロっと分離してしまう可能性は高いです。
私の場合、納得いくまで造形を続けたい派です。そのため当初は石粉粘土を使用していましたが、その後、自分に合う、別の素材を探し始めました。
【写真上:石粉粘土で作った初期の作品】
陶器は早めに断念。
陶器、いいですよね。憧れの素材の1つです。手で作れて、しかも半永久的に安定した状態を維持できる。また着彩も可能と。すばらしい材質ですが。その一方「細かい形の複製」には向いていない、というところが私にとっては弱点です。
私は納得いくまでディテールを作りこんだ1点を元に、それを複製して、多くの方の手にとっていただきたいという願望があります。それには今のところ陶器は向いていないと考えました。残念。
木彫は好きだけど。
木彫も大好きです。木っていいですよね。しかしこれも全力の1点は作れても、その複製のめどがたたずに断念です。
なお下記は私が大学生のころに作った仏像です。私は仏教徒というほどではなく(家のお墓はお寺ですが)、純粋に木彫造形として挑戦してみたくて仏像を彫りました。
しかしこれはとても柔らかい木で、カッターやデザインナイフで彫った記憶があります。けっこう楽しかったです。
これは完成した当時、ばあちゃんにあげて、ばあちゃんが90歳で亡くなったときに、いっしょに火葬しちゃったので、もうありません。
【写真上:私が大学生の時に彫った仏像。古い写真しなく不鮮明ですいません】
そして金属への挑戦。
そしてめぐってきた金属素材です。これも憧れの素材のひとつです。そして私が調べたのは、融点の低い、シリコーン型でも注型できる金属です。
調べると錫(すず)は融点が低く約231度、錫との合金であるホワイトメタルは約200度など、電熱線のコンロ等で溶かして耐熱性のシリコーン型で注型が可能な素材がありました。
これにはテンションが上がりました。テストをしようとさらに調べると、なんと70度で溶ける金属を発見しました。
広島県にあるキャステムさんという鋳造会社?で、個人が簡単に鋳造を体験する小さなキットを販売しています。さっそく東京にある直営店で購入して、小さなネコ造形を金属鋳造で作るテストをしました。
【写真上:融点70度の体験セット】
使用するシリコーン型は、以前レジン造形で使っている型です。完成した時のネコサイズは3~4cmの小さなタイプでテストします。まず台所のガスコンロに鍋で湯せんをします。
【写真上:湯せんで金属を溶かしているところ】
【写真上:シリコーン型に金属を注いだところ。気泡を排出するために金づちでコンコン振動を与える】
融点が70度なので、すぐに水銀のように液体状に溶けます。そしてシリコーン型に注入です。溶けた状況ではかなり粘度は低いですが、表面張力は高く細部に行きわたるかはやや不安でした。
ザラザラに失敗。
気泡は思ったよりは残らずに排出できたのですが、表面のザラザラが発生してしまいます。
金属鋳造の良いところは、素材は溶かせば何度でも使える点です。また表面のガサガサを避けるには、型の内側にベビーパウダーを塗るとうまくいくケースがあると、その直営店の方に教えてもらいトライ。回を追うごとに、だんだんきれいにできるようになってきました。
【写真上:頭部は比較的きれいにできたもの】
テスト4~5回繰り返し。まだザラザラは残るけど、重要な頭部はだいぶきれいにできるようになってきました。
展望&検討事項
さて、今回の金属テストは、このくらいで小休止としました。私としては、小さなものであれば、今後この「金属製のネコ」もアリかも、と思えたことが大きな収穫となりました。
ただし、今はまだ完全なものまではほど遠いです。そして材質となる低融点金属もまた、何がベストなのかの検討の余地ありです。
金属だとかなり重みがあり、なんとも言えぬ「大事なモノ感」があります。その一方、着彩はできないことと、そもそもサイズもあまり大きくするのが難しそうです。
結局、メタルネコは何とかなるのか?
そして、そもそも「この金属のネコって何?」という大問題が残ります。置物?、文鎮?、アクセサリー?
もともと「何の役にもたたない」ネコ造形を作ってはいますが、金属の場合、大抵は役目のあるモノが多いせいか、レジンフィギュア以上に「何これ?感」を強く感じます。
そんな課題もありますが、しかし、手に持った重量感や質感は理屈ではない気持ち良さがあります。
そこでこのメタルネコは、引き続き研究を続けて、自分のアートの一環として改めて制作してみたいと考えています。
【写真上:どれも未完成だけど、5ひき分のテスト版】