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ばれ☆おど!㊿
第50話 真打ち登場!
キャハハハハハハハハ……
その女の高笑いだけが、その場を支配していた。
「ものわかりがいい人は、だ、い、す、き。お姉さん助かる~」
メデューサは黒服たちに守られながら、鋭い視線を送っている。
だが、彼女と視線を合わせる酔狂な者などいない。
もし、そうすれば、その瞬間に、強力な催眠をかけられて、まるで石にでもなったかのように動けなくなってしまうからだ。
「そうよ。はやく出てきなさ~い。今回はねぇ。あたしには勝てないの~。残念な人たちねぇ~。キャハハハハハ……。これからお前たちを拘束するね。わたしと目を合わせるだけだから。簡単でしょ? さあ、得物を捨てて投降しなさ~い。ほらほら、はやくぅ~」
そう言って彼女はウインクして見せた。
バラバラとあちこちから、緑子、うるみ、綾香、ぜんじろう、樹里、大福丸、杏子の八人が、手を上げて出てくる。驚いたことに、メデューサの特異体質である再生能力により、腕の傷が、今では塞がっている。
すると、彼らはサーチライトに四方八方から照らされ、八人の姿が、暗闇の中に浮かび上がる。まるで、劇場の舞台俳優のスポットライトのようだ。
「おい! お前もだ! 忌々(いまいま)しいクノイチ!」
メデューサが叫ぶと、うるみがポツリと言った。
「コトリ。ごめんなさい。今は従って頂戴」
すると、コトリは気配もなく、現れた。うるみの前に出て片膝をつき頭を下げている。
「承知しました。お嬢さま」
コトリは武器を捨てて、両手を上げた。
捨てた武器が、金属音を残しながら、床に転がった。
キーン、キキン……
「さてと。じゃあ、順番に――
お前たちをたっぷりと可愛がってあげるね。
ええとね。まず、私の術でカチカチにするでしょ。
そしたらね。全員殴ってあげる。
そしてね。最後はこの鞭。
これで、お前たちの皮膚が破れて血が出るまで、打ちのめしてあげる。
あ、心配しないでね。カチカチになっても痛さは感じるからね。
じゃあ、まず、お前からだ!」
そう言うと、メデューサはカン太を指さした。
「このあたしに変装しやがって! その罪は重いのよ。それとね。一番許せないのは、私はそんなに不細工じゃない!」
そう言っていくうちに、メデューサは自分の言葉に激高していく。
その瞳は狂気と弑逆心で彩られ、カン太を見据えている。
「さあ、あたしの目を見るのよ。フフフフ……」
鞭で地面を打ち、パンパンと鳴らしながら、メデューサは不気味な笑顔を浮かべている。
カン太の額から汗が流れ、頬を伝う。
その汗の粒はサーチライトに照らされて、キラキラと輝きながら、地面に向かって真っすぐに落ちていく。
その時だった――。
突然、あたりが輝きわたる。その中心に稲妻のような閃光がほとばしる。
その閃光を放つ稲妻は黒服たちに襲い掛かっていった。
バッタン……ズサ……
黒服の一人が真後ろに大の字になって倒れた。
その横にいた黒服は、垂直に落ちるようにして地面に沈む。
その様はまるでダンスの途中で突然糸を切られた操り人形のようだ。
ストン……ガクン、ズササ……
次々に仲間が倒れていく中、電撃を帯びた閃光が見えるだけで、彼らには何が起こっているのかわからない。
残っている黒服たちは恐慌に陥り、見えない敵に向かって、盲滅法(めくらめっぽう)にウージーを撃ちまくる。
稲妻は何度も繰り返し起こる。
一人また一人と黒服は倒れていく。
最後に残ったメデューサはとうとう逃げ出した。
「クククク……。もはやこれまで」
メデューサは船着き場に向かって猛ダッシュすると、待機していた小型のクルーザーに乗り込み、港からあっという間に離れていった。
あまりもの逃げ足の速さに、誰も反応することができない。
遥か彼方の水平線へ向かって、メデューサの乗ったクルーザーは消えていった。
…………
「ユーたち。待たせたな」
メデューサのクルーザーの光が遠ざかり、視認できなくなると、一人の男が、姿を現した。
――彼の愛銃アンサーを携えて。
「どうだ。わが発明品〝アンサー改Ⅱ〟の威力は? 新たにグレネードランチャーを搭載したのだ。さっきの稲妻の正体を教えてやろう。あれは特殊な弾薬で、ターゲットに命中すると、数万ボルトの電撃を発生させるのだ」
「部長!!」
カン太が叫ぶ。
そこにいたのは、前部長である源二光蔵であった。
――丸目のサングラスにロン毛(おそらくディック)にストローハット。左耳に大きなドクロのピアス。そしてチェスターコートといういで立ち。喋らなければ、源二だとわからないだろう。
「にしても、部長、その恰好はなんですか?」
カン太は笑顔で源二に質問する。
「それ仮装じゃないの?」
綾香がからかう。
「馬鹿者め! このセンスについていけない埼玉県人にはわかるまい」
「って、アンタだって、ついこの間まで埼玉県人だったでしょうが!」
と綾香が反論する。
睨みあう二人の間に、カン太が割って入る。
「まあ、まあ、お二人とも。ここは喜ぶところでしょう。先輩。まずは、お礼を言わせてください」
「そうね。ファッションセンスはともかく、ありがとうございました」
綾香が頭を下げた。(見えないようにアカンベーをしている)
緑子が銀髪ツインテールを両手で、にぎにぎしながら、神妙な面持ちで問う。
「そう言えば、部長はなんで、今回のことを知っていたの?」
「フフフ……。それを知りたいのか?」
「ちょっとぉ、もったいつけてどうするの?」
綾香がまた突っ込みを入れる。
「わかった。じゃあ、教えてやろう。それはなぁ……」
「それは?」
「シータの入手したデータはリアルタイムでオレのスマホでチェックできるようにしてあるのだ。まあ、もともとの仕様だがな」
カン太は神妙な顔つきになった。
「部長は、ずっと、後輩の僕らを見守ってくれていたんですか……」
「アカンよ。そうだ。OBといえども動物愛護部の一員だ」
「……」
「それにな。シータのメンテや、新たな敵に備えての武器の供給もやっていかなければならないが、その役ができる後輩はいないだろう」
「はい。情けないですが、その通りです……」
カン太がそう言うと、綾香が口を挟んだ。綾香の瞳が宝石のように輝く。胸を突き出し、両手を腰に当てている。
「うちの弟なら、そういうの得意よ。わけわからない発明品で部屋が溢れかえっているわ。それと、最も得意なのは、パソコンね。クラッキングの腕は自称世界で五指に入る有名人なんだって」
「クラッキングっていうと、ハッカーのことだよね」
カン太は金髪お団子頭の綾香のスラリとした肢体に目を奪われながらも聞き返した。
「そう。俗にいうハッカーよ。あいつは今年、うちの学校に入学したの」
「ぜひともうちの部に欲しいな。君の弟」
「わかったわ。じゃあ、言っとくよ」
「ううう……。まいったな。これが噂の金縛りか。本当に動けないな」
その時、ぜんじろうはメデューサの催眠が解けて、動けるようになった。
ぜんじろうは体のあちこちを伸ばしながら言う。
「それでさあ。今は人質を奪還したけど、また来るぜ。ここままでは済まないだろ?」
カン太は険しい表情で答える。
「そうなんだ。これからずっとこれじゃあ、また、無関係な人を巻き込んでしまう」
カン太は叫ぶように声を張り上げた。
「一体どうすればいいんだ!」
「こちらから、敵の本拠地に攻め込むしかないさ」
その時、聞き覚えのある声がした。
カン太は振り向き目を丸くした。
「お、お前は!」
(つづく)
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