2023年・超個人的この商業BL漫画がヤバい(R18)⑤: 相野ココ先生のことを激しくおすすめしたいPart.2
さて再び相野ココ先生の作品のレビューです。この記事をうっかり読んだ人が相野先生推しになったらいいな、という暑苦しく熱い純粋なオタク心からお送りしております。
前回に続いて現在出版されてる残り4作品もレビューして行きますね。というか、このnoteは目次を見るだけでいい。相野さんの漫画の方を読んでください。何卒お願いします。
①『笑わなくていいのに』
これがBL漫画でのデビュー作らしく、それまでは少女漫画を描かれてたそうです。「はあ?ストーリーも絵もデビュー作にしては上手すぎるんですけど〜?」と思ってたら、そりゃそうですよね。
綺麗すぎるルックスで女からも男からも常に狙われている足立くん。そんな足立くんに迫られてうっかりいたしてしまった橘くんは、いつも笑顔でみんなに好かれる彼の内面の脆さや危うさを知ってどんどん惹かれていってしまう。けど、足立くんは橘のために身を引こうとして…。ていう王道ストーリーなんだけど、めちゃくちゃ良い…ていうか私、ずっとめちゃくちゃ良いとしか言ってなくない…?語彙力ゼロじゃん…
一途に橘を追って同じ大学に入った足立と、いつも自分と付き合う女の子が足立を好きになることで複雑な感情を持っていた橘。女たちよザマアミロ、って気持ちから足立と関係を持ったのに、いつのまにか橘の方が足立を追っかける構図に。二人の押したり引いたりの関係性がたまらん…。そしてかっこよくも可憐で清楚な足立が、いざ橘といたしたときの乱れっぷりが凄い…!!
HIPHOP育ちで少女漫画育ち、根暗そうなヤツはだいたい友達の私ですが、相野さんのこの少女漫画っぽい絵柄&ストーリーの流れの中でいきなり激しめなセッセシーンがぶち込まれるところ、ほんとクセになりました。だって『アオハライド』とか『君に届け』みたいな漫画で急に激しく二人がおっぱじめ始めたらびっくりしますよね?けど、すごく萌えますよね(たぶん)
ふたりのすれ違い、足立がずっと隠していた橘への気持ち、雨の中の告白…。あー、全部が少女漫画のエピソード。なのにエロい。すごい。褒め言葉の引き出しがゼロだ。
何回読んでも胸が痛い…。キュン死にする。よくBL界で多用される「心臓が痛てえ…」って、このことかしらね?
心臓が痛い!切なさで胃が痛い!!動悸が止まらない!!不整脈か胃潰瘍とかの病気かな。うん、何かしらの病気なんでしょう。
相野さん自身も「少女漫画が好き」って書かれていて、やっぱりベースのお話も絵も少女漫画の文法で作られてるから可愛くも切ないお話ばかりなんだな、と思ってすごく腑に落ちました。
②『セックスアンフレンド』
高校の卒業式で親友だと思っていた朝日にキスされてtnkを触られたことで彼への気持ちを自覚してしまった実祥。もんもんとした気持ちを抱えて卒業後に朝日に会いに行くが、彼にはもう彼女がいた。裏切られたと思った実祥はヤケになって男漁りをするようになってしまう。数年後、人気俳優になっていた朝日に再会した実祥は復讐してやろうと、正体を隠して朝日を陥れようと企むが…。
朝日は実祥にひどいことをしてしまったと思って実祥を避けてしまったんだけど、朝日に捨てられたと誤解し、自分には価値がないと思うようになっちゃったせいで求められるがまま男と遊びまくってしまうようになった実祥が可哀想だったな…。朝日〜!やっぱりあの態度はよくなかったと思うよ。ちゃんと好きって言お?
ただ、朝日もいいやつで、いまや有名人になった自分を鼻にかけることもなく再会した実祥に一途に接するんだよね…。で、罠に嵌めてやろうとか思ってた実祥はもともと良い子だし朝日が好きだから、彼を傷つけることができなくなってしまう。
朝日には年上の彼女がいたりしてそれがまた事態を拗れさせるし切ないんだけど、相手の女性も素敵なひとで、またよいエッセンスになってます。やっぱり相野さんの描く女子キャラは嫌味がなくて好きだ。
二人とも悪くないのにさんざん傷つけあってしまったあと、お互いの気持ちがようやく通じ合うシーンに泣いてしまいました。泣かせ上手すぎる…!
相野さんの漫画は攻も受もどっちも良い子でどちらも愛せる。そして受くんたちはみんな可愛くて心優しくも、割と性に貪欲。おねだりもすごいし、乱れ方も凄い。そしてそんな受くんに引くことなくちゃんと彼らの要求に応えてあげる攻くんたちが圧倒的に光属性で、紳士で優しい…!
あとずっと絵から醸し出される色気というものについて考えてたんですけど。絵はものすごーく上手いのに不思議とあんまりエロさは感じないっていうタイプの方もいるし(個人差かな?その方の絵が好きな人はきっとエロく感じるんだと思う)、逆に絵はそんなに上手く感じないのにやたらエロいってタイプの方もいる。
相野さんの絵はキラキラした華があって、滑らかなタッチで描かれる身体の柔らかそうな質感とか工夫されたアングルとか、見どころがたくさんある。艶かしくて色気があって、何度見ても飽きない。相野さんがエロと真っ直ぐ向き合ってる姿勢に心を打たれました。
少女漫画もいまだに結構読むんですが、最近だとアルコさん、持田あきさん、咲坂伊緒さんとか『山田くんとLv999の恋をする』のましろさんとかが好きです。すれ違いとか両片想いとか好き避けだとか、ともすれば同じような話になってしまいそうな中で、どれくらい個性とか魅力を出していけるのかって本当に作者様の個性と力量でしかないというか…。ただ「上手い」だけだと魅力が出しにくいって厳しい世界だなと思うわけです。
BL作品もやはり主題は少女漫画と同じ恋愛だと思うので、これだけ多くの作品が日々生まれているなかストーリーや展開ははある程度出尽くされてはいるとは思うんですけど、それでも「この人の作品が好きだ」と思わせてくれる作家さんは登場人物の感情のやり取りを丹念に描いていてこちらの気持ちを揺さぶってくるし、一本芯が通っているというか…。キャラクターたちが単にストーリーを動かす駒になってるって感じじゃなくて、ちゃんとその人たちの人間性とか息遣いが感じられる作品がいいなと思います。
ただ、最近はBLにかまけすぎて男女の恋愛に本当に興味がなくなって来てしまいましてね。絵が好みだなと思っても「チッ、ヘテロ同士の恋愛か」とか思ってしまってよくないですね。
漫画でもそうですからめっきり恋愛小説とかも読まなくなってしまいました。もともと小説で人によくお薦めしてしまう分野は猟奇的なのとかホラーやミステリ作品が多いのだけど、日常系の小説ならカラッとした文章の人が好みです。漫画だと絵柄もストーリーもカラっとしてなくて表現重めの方が好きなんですけど不思議。
③『君は僕のことを崇拝しすぎている。』
こちらもニヤニヤしたり二人のもだもだした関係性に焦れったくも切ねー!とキュンキュンしてるうちにあっというまに読み終えてしまった…そしてまた最初から読み直す。無限ループです。
ガタイのいい暗めのキャラが好きな私には黒野くんという陰キャでマッチョなアニメオタクという攻め様がすごく良かった…!また良かったとしか言ってない。素晴らしいものの前では人間の語彙は無力である…
受けの宮地くん(ミヤ)はリア充で見た目は麗しいんだけど、すぐ黒野を足蹴にしたりして顔に似合わずちょっと乱暴。ミヤをいつも崇めたてている黒野にキスされて彼への気持ちが芽生えてしまう。
ミヤは女の子にモテるわりに振られてばかりで、振られては黒野の家に行って甘やかされてる。だから〈黒野と一緒にいるのが楽で、女の子が面倒になってくる…〉とか言ってるけど、きっと最初から大事にしてくれて甘えさせてくれる黒野のこと好きだったんだね!ていう。結局、黒野をオタクだの気持ち悪いだの言ってたのはツンデレなだけか〜
ミヤが黒野の前でワガママ放題してるようにも見えるけど、実は黒野の手のひらの上で転がされてるのはミヤの方という、なんとも心地よい関係性。
やっぱりこれも攻の黒野がめちゃくちゃ優しくてミヤをすごく大事に思ってて、最後は泣いちゃうし。絶対に手に入らないと思ってたミヤをやっと自分のものにできたっていう感涙ですよ。攻も受も泣いてくれるとこ、やっぱりツボです。
相野さんの漫画はセッセシーンは割と濃いめなんだけど、エロだけに重きを置いてなくてちゃんとその行為に繋がる二人の感情の動きや関係性が深まる様子をつぶさに描いてるからいいんですよね。エロくても二人のキャラクターやどうしてお互いを好きになったのかがあんまり描かれないものだと物足りなく思ってしまう。エロとエモのバランス感覚、やっぱり重要。
④『むかいの部屋のねこ』
紹介文に『メガネ受』ってあるけどそんなカテゴリあるんだっけ。そう、主人公の雪ちゃんはちょっとお堅くて控えめな性格のメガネっ子。
実は陽キャでリア充のイケメン・嶋くんに恋してるんだけど、嶋くんは雪が友達である吉川を好きなのだと勘違い。本当の気持ちを言えない雪は誤解を解くこともできず、すれ違っていく二人…っていうこちらも王道すれ違い♡ラブストーリーですが、攻受両方の心の機微を描くのが上手いんだよな〜。
意地っ張りで嶋にはツンツンしてしまう雪と、デリカシーがなさそうでいて、彼女のいる吉川と一緒にいることで雪が傷ついてるんじゃないかと心配してくれたりする、どこまでも優しい嶋。また優しい攻め様だ!!
嶋は雪を気遣っているうちにその一途さにグッときてしまってノンケなのに雪に惹かれて行く。嶋から雪への気持ちのフラグはちゃんと出ているのに、嶋は決して自分を好きになることはないと思い込んでる雪は拒絶してしまうんだよね…。ああ、また心臓が痛い展開〜!
わしキュンとしすぎてそのうち死ぬのでは?
やっぱり相野さんの描く攻め様たちは心優しい!紳士!かっこいい!ちゃんと筋肉もついてるのがよい!
受くんたちはみんなもだもだしてるけど、攻くんたちのことが大好きで一途、けど性的には貪欲ってとこがギャップがあってたまらんですね。
相野さんは心情表現も豊かに描きつつ、エロ表現についても迷いつつ真摯に向き合って真っ向から取り組んでるみたいで(ファンボ情報)、強いフェティシズムと拘りから描かれる作品はどれもが美しくて幸せな世界観に満ちていて、読み応えがあります。ラブ&ピース…!
どの作品も素晴らし過ぎて初めて漫画に透明カバーを掛けてしまった。オタクだけど今までそんなことしたことなくて、みんなマメなんだなと思ってました。カバーを掛けたくなるのってこういう気持ちからなんだね…。
というわけで、相野さんのファンが一人でも増えますように。この記事読んじゃった人は試しに一冊でもいいから読んでみて…!お願いしますね。
たぶんまだまだ続きます。