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【オリジナル小説】VTuber探偵ミコが行く! 第21話

下のお話の続きです。途中からでも大体読めます。


お好みでBGMをかけながらどうぞ(PCなら聴きながら読めます)。

登場人物

※画像のみAI使用(ChatGPT or grok)、文章は人力です。


速水小石(はやみこいし)

女子高生VTuber。主人公の後輩で、過去に引きこもりだったところを助けられてから配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。ハンバーガーが好き。


氷室稲置(ひむろいなぎ)

ミコ(小石)のマネージャーだったが無職になったがめでたく再就職した。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。タワマンで何者かに襲撃を受けた。


淡野瑞希(あわのみずき)

主人公の後輩の女子高生。剣道有段者。眼鏡が似合うショートカット。大阪出身で関西弁。稲置の懐刀(ふところがたな)。毎日4時起きで朝練している。間一髪のところで稲置と小石の窮地に駆けつける。


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第21話:月夜に消える死神の翼

「……そんでそこのあたしの偽物の中身は一体どこのどいつやねん。ていうか稲置先輩、あたしの声で気付かんのは普通にショックなんやけど。あとでお仕置きもんやわ」

「……すまん。直前で違和感はあったんだ。それを感じた瞬間にやられた」

「まあええやろ。まずはそこのニセモンをしばいてからや。あたしの剣の腕まで物まねできると思うなやっ! このフェイク野郎が!!」

淡野の顔と声をした何者かは、木刀で撃たれた左手をさすりながらこちらを首だけで振り返る。その顔は歪んでいた。笑みで。

「そんな直線的な戦い方、一番まねやすいわ。私がどれだけあなたの剣道の試合の動画を見たか知らないでしょう? 突きが得意なのよね?笑 そして最も大切な人はここの」

俺、稲置に向かって彼女は接近する。予備動作の無い、瞬間的にトップスピードをたたき出す悪魔のような走り方だ。

「先輩がいなくなればあなたの闘志は折れる!!! 大切なものを自分の外になんか置くからそうなる笑!!!」

「先輩!!!」

「舐めるな」

俺はスマートホンでカメラを起動し、彼女に向けて撮影を開始。火事場のなんとやらで秒速のスワイプスピードをたたき出し、配信を開始。インターネットの海にその映像を放った。

「証拠は今この瞬間にも流れ続けてる! さあどうする?」

「甘すぎるわ! この顔は私の本当の顔じゃない! そこのあいつが疑われるだけよ!!」

「時間稼ぎできただけで充分や」

そう。

2秒稼げればそれで十分だった。

空間を横薙(よこな)ぎに切り裂くような、淡野の木刀の胴打ちが、偽物の腰にクリーンヒット。骨が軋む音がした。続いてうめき声。

「ぐがああぁぁっっ」

「そんであたしが得意なのは突きだけやない。苦手な技なんてあらへん。手の内を動画に映してるところなんかで全部晒すかいな。奥の手は最後まで取っておくもんや」

「淡野さん……すごい」

小石がようやく平常心を取り戻したようだ。

「じゃあ私の奥の手を使わせてもらうわ!!」

偽物は窓際に近づくと置いておいた黒いリュックサックを背負いだした。何をする気だ。

「もう逃げ場はない。観念するんだ」

「私はここから帰らせてもらうわ。次逢えるときは小石ちゃん、必ずあなたを仕留める。それまでお幸せに」

彼女はそう捨て台詞を吐くと、あろうことか高層階の窓ガラスに向かって全速力で突進した。窓ガラスは砕け散り、空間を引き裂くような音が3人の鼓膜を刺激する。

「何だと?!」

「……あのリュックサックか。やられたわ」

高度100メートル近くの空中に身を投げ出した彼女は、しばらく自由落下したのちにその背中から漆黒の翼を生やした。まるで死神かでも見まごうようだ。

「ハング、グライダー!?」

「どっかの怪盗やないんやから、もう手に負えんわ」

漆黒の死神の姿は港区上空の向かい風に向かって飛び立ち、そのまま夜空を照らす月明かりの向こうへと消えていった。稲置はその光景を美しいと思ってしまった。

「……何でもいいんだけど、窓ガラスの修理代は誰が出すの?」

「……今はそれ言うな。配信収益に決まってるだろ」

「みんな生きてるだけで良しとしとこうや」

本当にその通りだ、とこの場の3人は心から思った。


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