見出し画像

【オリジナル小説】VTuber探偵ミコが行く! 第14話

↓のお話の続きです。途中からでも大体読めます。

登場人物

氷室稲置(ひむろいなぎ)

ミコのマネージャーだったが無職になった?。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。殺人事件の第一発見者となる。


月読桜音(つくよみさおん)

稲置の生徒会長時代に書記をやっていた現女子高生3年。現在VTuber。被害者の親友だった。

青島慎次(あおしましんじ)

40代の刑事。池袋警察署に勤務している。刑事部捜査第一課所属。


第14話:疑惑の後輩

「ところで先輩、例の桜音ちゃんはどうして急にいなくなってたん? 遺体の第一発見者は稲置先輩で、桜音ちゃんは後から来たんやろ?」

「ああ、それはこういうことなんだ」

話は事件直後に遡る。


「桜音、お前ノエルと一緒にいたんじゃないのか?」

ノエルの不幸を知って体の水分全てを涙にしたように泣いた彼女をソファに座らせ、事情を尋ねる。

「……はい。実はノエルちゃんが急に用事を思い出したって言って、1時間ほど一人にしてほしいって……。それで私はっ……、駅前のケーキ屋さんでケーキを買おうって……。それで」

「わかった。思い出させて悪かったな」

「そういうことでしたか。辛かったでしょうな。あとは我々にお任せを。必ず犯人は捕まえます」

青島刑事は、そう言って彼女を励ます。きっとこれまでも何人にもそういう言葉をかけてきたのだろう。世間には決して広まらないが、縁の下でこういう人たちが社会のごみ掃除をしてくれているおかげで、俺たちが平穏な日常を送れているということを決して忘れてはいけない。

「ところで刑事さんもう一つ、お伝えしないといけないことが。例のネット配信のことです」

「……遺体発見時についていたというあのPCの件ですね? 一応調べさせてはいますが、どうにもVTuberってのは正直よくわかってなくてですね。後でまた詳しく聞かせてもらうかもしれません」

火将ノエルの遺体発見時に、彼女のVTuberアバターで配信が行われていたという、あの奇妙な件のことだ。事件に関係あるのかどうかも分からないが、全く無関係ということはないだろう。

警官の一人が青島刑事に報告する。

「青島さん、配信会社に問い合わせていますが、まだ返信はありません。本社がアメリカなので、電話窓口がないようです。またユーザーのアクセス履歴などの個人情報はほとんどの場合、開示されないことが多いです。誰かがなりすまして配信していたとしても、それを特定することは難しいです」

「そうだよな。個人情報開示請求するにしても、この件が事件と関係あるという確証はない。そもそも誹謗中傷してたわけでもなんでもない。ただ被害者のアバターで配信してただけだからな。たまたま乗っ取りが事件と重なっただけ、と考えるしかないのか」

本当に、そんな偶然があるだろうか?

「……ノエルちゃんが配信活動を一人でやってたのか、それともマネージャーがいたのかどうかは調べて欲しいです。もし誰かが関わっていたのなら、その人が何か知っているかも」

「配信活動のマネージャーですね。確かにいてもおかしくないですな。……おい、話は聞いてたな」

「はっ! 今すぐに」

一人の警官がすぐさま踵を返した。彼らには多くを語る必要もないのだろう。言葉にせずとも通じ合う関係。それはほんの少しだけ羨望(せんぼう)の光を感じる。


時は戻る。

「……そういうことやったんやな。ノエルちゃんの用事がなんやったのかっていう疑問は残っとるけど、もしマネージャーがいたのなら事件に無関係ってことはないやろ。それこそ親友の桜音ちゃんはなんか知らんの?」

「知らないって言ってたな。どっちも配信者だし、ライバルでもあるんだから全部を共有するわけじゃないんじゃないか?」

そうだったとしても、その気持ちはよくわかる。

「そういうもんか。まあええやろ。とにかくは外部犯ってことやんな。マネージャーの線を置いとくなら。若い女ならどこから目を付けられてもおかしくはないやろ。胸糞悪いけどな」

「ああ。絶対に許せない。どこの誰だろうとな」


次のお話はこちら↓


いいなと思ったら応援しよう!