【オリジナル小説】VTuber探偵ミコが行く! 第13話
↓の続きのお話です。途中からでも大体読めます。
お好みでBGMをかけながらどうぞ。
登場人物
氷室稲置(ひむろいなぎ)
ミコのマネージャーだったが無職になった?。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。殺人事件の第一発見者となった。
淡野瑞希(あわのみずき)
主人公の後輩の女子高生。剣道部主将。眼鏡が似合うショートボブ。大阪出身で関西弁。今回は何かを手伝う様子。
第13話:東長崎の揉め事スイーパーと難波(なにわ)の懐刀(ふところがたな)
「それで、稲置先輩。本当にやるんやな」
「ああ。俺の後輩を泣かせる奴がこの池袋にまだいるかもしれない。それだけで始める理由としては十二分にある。手伝ってくれるか淡野」
「水臭いこと言わんといてください。あたしは先輩の懐刀ですから。そして先輩は東長崎の揉め事スイーパーです」
「……その呼び方はやめろ」
「じゃあ東長崎の藤川球児です」
「……剣道部の練習もあるだろうから、短期決戦で仕留めたい。そこでSNSで情報を集めたところ、結構タレコミがあったんだ。これを見てくれ」
稲置はスマートフォンの画面を淡野に見せる。二人は休日の朝に、池袋駅前のスタバに来ていた。理由は言うまでもない。犯人を捕まえるためだ。
そこにはSNSのタイムラインが映っている。投稿内容はこうだ。
小石のマネージャー用のアカウントのフォロワーは約8000人いた。そしてこの投稿のいいね数は100、リポスト数は200になっている。リプライが何件もついている。
「一応何件かは怪しいやつを見た、という返信やDMがある。信憑性はわからんが、この情報をもとに足を使って調べるしかないと思う」
「……気ぃ遠なるような作業やな。先輩、うちの体力についてこれるん?」
「良いリハビリだと思うことにするよ。一応、護身用にサバイバルナイフを持ってきた」
「それは結構なことやな。いざとなったら、うちが手ぇ汚したる。刃物持ってうちに向かってくる奴には、インターハイ出場の理由(わけ)っちゅうもんを思い知らせたるわ」
「頼もしいな、後輩。ただナイフの扱いに関しては俺も負けてないぜ。料理人を舐めたらいけない」
「そやったね。これ付き合ったご褒美に、そのうち手料理作ってくださいね」
「お安い御用」
二人はスタバを出て、最初の不審者目撃情報のあった池袋西口公園へと向かった。
「ここら辺なんか、そもそも普段から変な人しかいないってとこあらへん?」
「まあそうだよな……。池袋から不審者を見つけるってのは、森の中から一本の木を探すようなもんだぜ」
「そこまでは言ってへんけど。せめて犯人の大体の特徴が分からへんことには厳しいなあ。こういうのは小石ちゃんの方が得意やないの?」
「あいつは荒事には向かないからな。それは最後の手段。いざとなったらあいつの発信力は武器になる」
あまり使いたくない手ではあるが、選択肢には入れておくべきだろう。なるべく巻き込みたくはないが、あいつも桜音とは親交がある。隠し通すことは難しい。
「それは結構。まずはこの辺りでよく見る顔に聞き込みでもすることやね」
「そうだな。あ、SNSにリプライくれたの君だっけ?」
「ん? あーミコさんのマネージャーさんじゃないっすか! 仕事バックれたってガチっすか?」
20代ほどのスポーツ刈りのチャラそうな男だった。SNSのアイコンが本人の顔だったので分かったのだ。
そういえばそんなことになっていたな。
「その件はもう終わったんだよ。みんな揉めた方が盛り上がるかもしれないが、めでたく再就職してきたよ」
「そんなひねくれてる奴は一部だけっすよ。良かったっす」
「おう。ありがと」
「ファンとの交流してるとこ悪いんやけど、ここらへんで怪しいやつ見つけたってのはホンマなん?」
淡野は淡々と話を進める。こういう時に一番頼りにしている。
「普段見ない奴がいたんすよ。四十代くらいのおっさんだったかな。俺、ここ長いんでよく来るやつは大体分かるんす。ここでいつもギター弾いてるんすよ俺」
「なるほどな。そいつの風貌をもっと詳しく教えてくれるか?」
「身なりは良かったっすね。スーツで、腕時計高そうで、髪はオールバックでキメてました。ここだと逆に目立つんで。六本木とかなら普通なんだろうけど」
「社長さんかいな? こんなところで車にも乗らずに歩いてるのは確かに不自然かもやねえ」
「そうなんすよ。てか姉さん眼鏡似合ってて可愛いっすね。2人はコレっすか?」
小指を立てて意味ありげに聞いてくる。お前は何歳やねん。
「ちょっやめてえな! 稲置先輩は誰かが独占してええような男ちゃうねん! 池袋の新庄剛志なんやから」
「また炎上するようなことを言うのはやめろ!!! お前は放火魔か!!!」
「放火魔て笑 ツッコミの腕上げたなあ! 流石先輩やわあ」
「なんかお邪魔みたいなんで俺ギター弾きに行きますね。良かったら聴いていってくださいっす!」
「ああ。悪かったな。何か気付いたら連絡してくれ」
そういうと彼はギターを弾き始めた。お世辞にも上手いとは言い難いが、彼の周りには人が絶えない。良い奴なのだろう。
「こんな街に人を殺めるような奴をこれ以上野放しにできひんな」
「その通りだ。次に行くぞ」
聞き込みはまだ始まったばかりだ。
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