女子高生おじさん

こんにちは。id_butterです。

めちゃくちゃくだらないけど、絶対に一生忘れられない人について書く。
袖触れ合うも、ってやつです。

昔、通勤電車で、目の前に立っていたおじさんの話だ。
勝手に値踏みしてしまい失礼だが、見た目は冴えない感じだった。
ピカッときらめく頭頂の周りをファサファサと薄い頭髪が彩る。
小太り体型で、背は150cm台のわたしより低い、スーツのサラリーマン風。

満員電車のドアのところにおじさんは立っていた。
当然、ドアの方を向いていて、わたしはその後ろに立っていた。
とてつもなく混んでいて、わたしはおじさんを壁ドンしているくらいの立ち位置で、何とかおじさんに密着しすぎないように壁に手をつき保っていた。
おじさんは何をしているのかというと、携帯でメールを打っていた。

まだスマホではなく、ガラケー全盛時代。
おじさんが打っているメールの文面がふと目に入った。
おじさんは背が低いので、背中越しに携帯の画面が見えてしまうのだった。
というか、その画面はもはや目の前にあり、わたしの携帯とも言っていいほどの距離。そして、デカ文字設定なのだった。

弁明したい。
もちろん、普段なら目を逸らす。
けれど、この時ばかりはスルーできなかった。許して。

目の前のおじさんが打っていたメールは不倫相手へ向けたもので、昨晩のベッドの感想文だった。
もはや、ガン見だった。しょうがないと思いませんか。

おじさんの入力はめちゃくちゃ早かった。女子高生さながらである。
そして、相手からの返信もめちゃくちゃ早い。
地下鉄の駅の間なんて3分とかそこらなのだけど、その間メールは2往復か3往復くらい。わたしは甘い二人の会話を堪能した、不倫だという情報はそこから得た。いや、デカ文字だからどうしても入ってくるのよ。
ダイレクトに目に飛び込んでくる。

そこから、さらに想像の斜め上をいくおじさんがいた。
その不倫相手とひとしきりの会話が終わると、次の相手とのメールのやり取りが始まったのだった。
「明日、約束通り来れそう?」みたいな会話から始まったイチャイチャキャッチボール。甘すぎて、満員電車の空気もあいまって吐きそう。
だけど鬼のように文字入力(デカ文字だけどね!)が早いおじさんの勢いはとどまるところを知らない。
こんなこといいな、できたらいいな、あんなゆめこんなゆめいっぱいあるけど〜という某アニメの歌に載せて、いくらでも欲望を撒き散らし続けるのだった。

そのやりとりは、さらなる3人目とも始まり、続いた。
もはや、わたしに見せつけるというプレイの一環なのかもしれないという疑惑が湧いてくる。
どこまで続くのか、最後まで見届けたい気持ちはあったが、道半ばでわたしは目的地に到着し、電車を降りた。
もはや朝からわたしの脳内は卑猥な言葉で埋め尽くされており、ため息をついた。

朝からすごいものを見た。
そう思いながら、降りてつい後ろを振り返ると、先ほどのおじさんはまだメール中だった。額と頭に汗がきらめいていた。
何度見ても、冴えないおじさんに見える。
満員電車に乗っているのだから、とんでもなくお金持ちということでもなさそう。
そして、あんな内容のメールをしているのに、ニヤニヤではない、ニコニコしていていかにもいい人風なのが、不思議。
誰もあのおじさんがあんなエロエロメールを増産中だとは思わないだろう。

冴えないおじさん、ではなかった。
とんでもないおじさんだった。
なんでだろう、ちょっとくやしかった笑
人は見た目によらないし、男は顔じゃないらしいと知った朝の話。

どなたか、同じおじさんにあったことがある方がいれば、コメントお待ちしております。


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