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児童養護施設の子供たちに夢とチャンスを 
ベルテンポカレッジ特別講義 YouTubeライブ 2024年9月3日
https://youtu.be/FSVWzg5n2f4

日テレの24時間テレビでやす子さんがチャリティマラソンを走り4億円の募金を集めたと話題になっています。

やす子さんは母子家庭に育ち、高校生の時に家庭の事情で児童養護施設に入所、高校卒業後は自衛隊に入隊されています。

テレビでやす子さんが、「児童養護施設に初めて来たとき、エアコンって涼しいー、水をいくら使ってもいいんだと感激しました」とインタビューで答えていたのが印象的です。

ご家庭の詳しい事情はわかりませんが、やす子さんは児童養護施設を退所してから、一度も帰っていなかった。色々な想いが溢れて、戻りたくない、苦しい気持ちがあったようです。

そんな様子を見ていたら、私がお手伝いさせて頂いていた児童養護施設の子供たちとのデイキャンプの想い出が蘇りました。
ベルテンポを運営している25年間の中でも、忘れられない想い出です。

2014年10月24日に書いたブログです。
初心を忘れない為に、
改めて、ここで紹介させていただきます。

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能登半島にある児童養護施設のバス旅行のお手伝い。

ビールメーカーさんと
損害保険会社さんがスポンサーとなり、
バスを借り上げて、
児童養護施設の子供たちと一緒に
デイキャンプを楽しむ一日。

能登半島の穴水にある児童養護施設の子供たちと
秋の一日を一緒に過ごしました。

穴水の子供たちとキャンプするのは14回目。
一年に一回、一日だけですが、初回に参加した子供たちはすでに成人し、
今回、新しく幼稚園の子供たちもふたり参加していました。

前日の夜、最終の新幹線で金沢に着きました。
ホテルでシャワーを浴びて横になり、無意識にテレビをつけてチャンネルを回すと、たまたま、熊本の児童養護施設の子供の成長を追う、ドキュメンタリー番組を放送していました。

母親の再婚相手から虐待され、
布団で寝ることすら許されなかった女の子が
9歳で施設に保護され、18歳で高校を卒業し、
退所して介護施設に就職するまでの
葛藤の日々を丁寧に追ったドキュメンタリーでした。

絵を書くことが大好きで、先生には「就職希望」と言いながら、実はアニメーションの専門学校へ行くことが夢だったそうです。
もちろん学費を自分で出せるはずもなく、
母親は大反対、就職しかあり得ないの一点張り。

現実を受け入れて女の子は介護施設に就職し、
貯金をしながら専門学校への夢を持ち続けることにしました。

児童養護施設は18歳で卒業すると同時に退所となります。
そこから先は自分でアパートを借りるか、
住み込みで働ける就職先を探すしかありません。
そして、この子はなんと、退所後、
実の母親と一緒に住む道を選びました。


9歳で施設に入所し、18歳で義理の父と、
父親が違うふたりの妹との同居です。

退所のパーティーで
彼女がお礼の言葉と共にこんなことを
話していました。

「9歳でこの施設に来ることになり、
大勢の人と暮らせるか不安だったけど、
最初の日、布団にくるまった時、

私は小さいころから、
布団で寝るのが夢だったので、
本当に嬉しかった。
あの布団の温かさは忘れられません」と。

義父からの虐待は暴力だけではなく、
布団に寝かせないで床に寝ることを強いていたのです。
彼女はその時の気持ちを、こう語っていました。

「なんで自分は生まれたのだろう。
自分は生きていないほうがいい。
殴られるのは嫌だったけど、
反抗すると母親もやられてしまうから、
自分を殴って気が済むならそうすればいいと
思って我慢した。

母親は助けてくれなかったけど、別に恨んではないです。
だって、生んでくれた母親だから。」

9歳の子供がこんな気持ちになる切なさ。

私が14年間、お邪魔している
児童養護施設の子供さんたちも、
さまざまな家庭の事情を抱えて親と離れて暮らしています。

子供たちの名前を見ると、
とっても素敵な名前を付けて
貰った子供ばかり。


生まれた時は、
母親もこの子達の名前を一生懸命
考えたでしょうに、
さまざまな事情で育てられない。

そして子供を施設に預けています。

抱きしめたくなるくらい可愛い、幼稚園に通う子供から、
声変わりした高校生まで。

20名の子供たちと一緒にキャンプ場で火をおこし、
材料を切り、お好み焼きを焼きました。

私も班に混ぜて貰ったのですが、
リーダーの女の子は元気がありません。

彼女は一昨年も参加していましたから、
もう小学校の高学年です。

思春期なのか、それとも、
大勢の大人に愛想笑いしたくないのか。

体育座りして首をうなだれ、
手伝いを促しても、
ただ首を横に振るだけでした。

こう言う場面では大人に甘えるのが上手な子供と、
不器用な子供がハッキリと別れます。

要領のいい子は大人に上手に甘え、
肩車をしてもらったり、
抱っこして貰って大人の愛情をひとり占めするのです。

もちろん、
実の親からはそうして貰えないのですから、今日は特別です。
不器用な我が班リーダーの女の子。
それでも、焼きあがったお好み焼きを黙々と食べ、
お腹いっぱいと言いながら、焼きそばもペロッと食べていました。

午後は大人たちとゲームで原っぱを駆け回り、
帰る頃にはすっかり笑顔になっていたのでちょっとほっとしました。

施設まで送ったとき、帰り際に、
「今日、楽しかった?」
と聞くと
「うん。一日があっという間だった。」
と、はにかんでいました。

親と離れて集団で生活するのは、窮屈なことも多いでしょう。我慢しなくてはいけないこともたくさんあるでしょう。

でも、この企画をお手伝いさせて頂いて私が感じるのは
「子供は強い」ということです。
家庭のバックグラウンドなど、涙なしでは聞けないような、
理不尽な境遇にある子供たちが、
本当に一生懸命、『今日』をたくましく生きているのです。

18歳になったら自活する以外に選択肢がないのに、
その日があっという間に来てしまうのに、

こんな小さな子供たちがわが身に降りかかる理不尽を
受け入れて、一生懸命生きている。
子供がこれだけ一生懸命なのに、
私たち大人が手を抜いて生きて良い訳がありません。

子供たちから元気を貰ったというと、
安っぽい感想にしかなりませんが、
私はこの1日を子供たちと一緒に過ごさせて貰うことで、
子供たちに

「私たちも頑張っているんだから、
おじさんたちもちゃんとした日本を作ってね。」

と背中を押されているような気がしてなりません。

<児童養護施設とは>
児童福祉法41条は「児童養護施設は保護者のない児童、
虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を
入所させてこれを養護し、あわせて退所した者に対する相談
その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」
と定義しています。

歴史的には戦後の孤児院がスタートで、
戦争孤児をお寺や教会が保護したのが
始まりと言われています。

現在は親との死別よりも養育遺棄(ネグレスト)や
虐待による保護などが圧倒的に多く、
子供たちの精神面でのケアを必要とするケースが
多いのが特徴です。

また、18歳で退所した後の社会的なフォローがなく、
就職後の離職や病気による
就労困難、退学などへのケアが大きな課題となっています。


入所しているのは、
「父母と死別した児童」「父母に遺棄された児童」
「家庭環境不良の児童(父母の行方不明、長期入院、拘禁、
離婚、再婚、心身障害など)」
「保護者がいても児童虐待を受けている児童」に大別されますが、全国的な統計では60%の子供が虐待による保護となっています。

2018年10月現在、児童養護施設は603施設、
在所児(者)数は27,288人です。
※厚生労働省家庭福祉課による
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20年前に児童養護施設の子供たちと出逢ってから
ずっとやりたかった想いのひとつが、
「大勢の大人がひとりの背中をそっと押す」でした。

お兄ちゃんやお姉さんや
おじちゃんやおばちゃんが、

「頑張らんでええでー。人生悪いことばかりやないでー」
と100円玉を貯金箱いっぱいにして渡す、みたいな。


やす子さんのチャリティマラソンには賛否ありますが、少なくとも児童養護施設の存在を世に伝えたことに大きな意味があると考えています。
動画も収録しました。良かったらご覧ください。

児童養護施設の子供たちに夢とチャンスを
ベルテンポカレッジ特別講義 YouTubeライブ 2024年9月3日
https://youtu.be/FSVWzg5n2f4

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