アイコナール方程式(光線方程式)の理解を助ける面白い実験について
冬季休暇中ですので、少し集中的に勉強できるコンテンツをやってみようかと思います。
せっかく電波工学、光学の知識があるので、計算工学の視点で光学設計が出来る技術、と言うのが役に立ちそうです。
これは古典的にはレイトレーシングの問題です。この分野は昨今では、CGなどでしょっちゅう出てくる分野ですが、恐らく本来の分野である回折光学やレンズ設計工学でも役に立つ内容でしょう。事実、今回選択した教科書は電波工学の内容です。
では、なぜ電波工学の内容を選定したか?ですが、光学的な観点と電波光学的な観点って、基本的な物理的なスケールや物性等は異なるものの、光は電磁波の一種であり、電波も電磁波の一種ですから、統合的にMaxwell方程式で取り扱えます。電波のことを学ぶことは、光のことを学ぶのに役に立ち、その逆も言えるわけです。
数式等をここで書くのは煩雑なので省きますが、私がとても気になった部分について、記載したいと思います。
【目標】
・レイトレーシングの計算技術を活用して、照明、レンズ、カメラの関係性を計算工学的に導くような手法について学ぶ。センサに撮像される信号の効率の相関性や、光学系で必要な構造について評価できる技術を身に着ける。
【今日の教科書】
今井哲朗, "電波伝搬解析のためのレイトレーシング法", コロナ社(2016)
2章〜3.1まで。アイコナール方程式や近軸近似は色々面白いです。波長スケールに対して振幅が十分小さければ、光線の挙動は幾何光学的な近似だけで物事を語ることが出来る、と言うことです。
【光線方程式】
アイコナール方程式の帰結として、光線方程式と呼ばれるものがあります。
ちょうど良いのがありましたね。オプティカルソリューソンズさんの記事にアイコナール方程式から光線方程式について書いてあるものがあったので。
さて、通常の場合、直進する光源の場合は反射面や透過面が存在しない限り、光は直進するように進みますが、光線方程式によると、その光の伝搬方向は媒質の屈折率の変化(grad n)に依存すると言われています。
そして、通常はgrad nを破るようなことってあるのか?と言うのがありますね。確かに質量の大きな天体などの影響で重力場が歪むことで光が曲がる、というスケールの大きな話もありますが、そうでなくてもお手軽な方法もあるものです。
それが、この動画の後半に記されている、水の層と砂糖の層を混合することで、レーザビームを曲げる、と言う実験です。これは、砂糖水に含まれている濃度の分布が歪むことで発生する現象で、実際grad nの分布の変化を見ているものと推定されます。
ちなみに、この屈折率の変化を絶妙に作るのはなかなか難しいようです。砂糖水の屈折率は1.49、水の屈折率は1.33と極めて近いのもその要因となるでしょう。