愛を喰う
トリュフチョコは作れなかった。
あからさまにチョコという見た目がいけない。
今日という日に感情を込めて豪速球で投げてくれと言わんばかりの形をしている。
ただでさえ、お菓子をあげようとして溢れているのに。
だから焼き菓子にした。
露骨さもなく、ちょっと小洒落た感じになる気がした。
それにオーブンの火力が全て解決してくれる気もする。高火力は正義。
出来上がったそれは、綺麗な貝の形をしていた。
決して開くことのない貝。
閉じてしまった想いと叶うことのない現実を表しているようにも思える。
容赦なく、殻ごと喰らった。