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精神障害の分類(DSM-5とICD-11の比較)

障害者雇用の担当者になってから、厚生労働省の統計情報をはじめ、様々な資料に触れる際に疑問に思うことの一つに、「障害のカテゴライズ」があります。
つまり、「気分障害」と言われたときに、それがどこまでの症状を含んでいるのかわからないという点です。

そして次に訪れる疑問が「『障害のカテゴライズ』が一定ではないのではないか?」というものです。

そこで、ここ最近で障害者雇用担当者に着任したばかりの方の助けとなるべく、まとめをご用意いたしました。

結論

急いでいる方のために先に結論を述べておきます。

私の調べた限りでは、今、精神障害のカテゴリーを理解しようというのであれば、「DSM-5」と書かれている情報を見ておけばよいかと思います。

以下、理由です。

2つの基準がある

まず最初に、精神障害・傷病のカテゴリー分けには次の2つの基準があることを理解しておきましょう。

・ICD(WHO:世界保健機構)
・DSM(アメリカ精神医学会)

ICD(International Classification of Diseases)

WHOはICDを国際基準として各国に統計情報を取るように定めていますので(世界保健機関憲章 第64条)、厚生労働省でもこちらを適用しています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000026609.pdf
→世界保健機構憲章

ICDは精神障害だけでなく、あらゆる死亡原因を設定しているものですので、呼吸器系も皮膚疾患もウィルスもなんでも記述されており、14,000以上の項目に分かれています。

ではICDを見れば良いのではないかと思うのですが、後述の事情があります。

DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)

DSMはアメリカ精神医学会が精神障害の分類と診断のために出版している書籍です。こちらが2013年に改版をいたしました。
それまでは1994年に発行し、2000年に改訂した「DSM-IV」が使用されていましたが、分類を再編した「DSM-5」が登場することになりました。

直近ではこれが世に出た新しい基準であるがために、こちらを参照することが多くなっております。

たとえば、広汎性発達障害のサブカテゴリである「アスペルガー障害」と呼ばれていたものが「自閉症スペクトラム障害」と言われるようになったり、「躁うつ病」と呼ばれていたものが「双極性障害」と呼ばれるようになったり、新しく耳にするようになった名称はDSM-5から引用されています。

ICD-11への更新

では、ICDはいつから運用されているでしょうか。
現行のICD-10は1990年に公表されて現在も運用されています。

ところが、この度ICD-11が2018年に公表され、現在、和訳など運用に向けて準備中の段階にあります。

前述のとおりICDは厚生労働省の統計にも使用されていますので、ICD-11が運用に至ったら公式な統計データもICD-11基準に置き換わることでしょう。

2020年1月18日時点ではまだ日本語化されたページはありません。
そこで、英語表記のICD-11のページを自動翻訳で確認してまとめました。病名などは1対1の辞書的翻訳に向いていますのでおおむね正確な情報が得られたのではないかと思います。

下記がICD-10とICD-11の比較表です。すべての比較表は膨大になりますので、勝手ながら一部の抜粋です。

ICD変更点

次のような点が見受けられます。

・発達障害系が一つにまとまった
・気分障害が「双極性障害」と「うつ病性障害」に分かれた
・神経症性障害が「不安」「強迫性」「ストレス」に分かれた

DSM-5との比較

上述のICD-11の変更点を見て、気づいた方もいるかもしれませんが、上述の範囲で言えばDSM-IVからDSM-5への変更点も同じようになります。

DSM変更点

※ 並び順はICDに合わせています。
※ 名称が多少違う部分もありますが、ICDの項目名は翻訳機能で拾った言葉ですので、必ずしもこの名称通りにはなりません。

WHOとアメリカ精神医学会の関係性や、政治的背景などは分かりかねますが、DSM-5で先行した基準と極端に違うことはないようです。

あらためて、DSM-5をみておけば、後々ICD-11が一般的になった時でも同じ慌てふためかずに済みそうだと結論付けておきます。

責任を逃れるわけではありませんが、最新の情報は厚生労働省等をご確認の上、ご自身で正しく理解されることが望ましいと添えたうえで、個々人のたゆまぬ学習の一助となればと願っています。



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