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危機管理を見抜くには

・ありえないことがおきる。想定外であったと説明される。きちんとマネージされている会社では何もおきない。何もおきないことは、事前に、未然に防止されているからである。この何もおきないことをもっと評価していく必要がある。リスクマネジメントに、対話を通じていかに突っ込んでいくか。

 ・ビックモーターの事件が露呈した。急成長企業にはウラがあった。大手の損保会社も、バリューチェーンの中で、一枚加わっていたのではないか。そうなると、上場企業にも波及してくる。

・やっていることが、本当にユニークなのか。単に、変なことをやっていて、それを正当化してしまうようでは、ガバナンスが効いていない。そもそもサステナビリティがない。つまり、企業価値創造が長く続くはずがない。

 ・社会的事案が発生した時、どのような情報開示を行うのか。犯罪であれば、捜査の進展を待っているので、何も話せないというが、本当だろうか。

・会社として、問題事案の全体を把握できていないので、質問に答えられない。そんな状況で、会見や対話はできないという。それでよいのか。トップの責任が問われるような局面で、矢面には立ちたくないと、逃げの姿勢で通す。こんな経営者は信用できない。

 ・危機管理広報のコンサル会社「エイレックス」の江良社長は、インタビューの中でいくつか示唆的なコメントをしている。

・1)記者会見の目的は、説明責任を示すことである。何が起きたのか、どこに問題があったのか、二度と起こさないためにどうするのか、を説明する必要がある。

・2)会社へのダメージを最小化することを優先して、不都合な質問をさせないことは、通常ありえない。NGリストは作らず、質問数や追加質問も限定する必要はない。

・3)代理の担当者で済ませるのではなく、トップの責任者が自らの言葉で最後まで話すというスタンスが次につながる。

・4)守りのダメージコントロールより、公益性、情報開示の中立性、公平性を保持すべし、と指摘している。

 ・これはPR(パブリックリレーション)での基本であるが、投資家向けのIR(インベスターズリレーション)においても十分包含されるべきものであろう。

 ・では、ジャニーズ問題は何が本質であったのか。日本取締役協会は。2023年10月に「未成年者に対する性加害も問題に関わる標準ガバナンスコード」について、提言を出した。

 ・ジャニーズ事務所のオーナーの性加害を、知っている人は知っていた。裁判でもそのような判決が出ている。でも、ジャニーズ側の取引に関する制裁を恐れて、忖度し、見て見ぬふりをした。多くの上場企業もジャニーズとビジネス上の取引を続けた。

・犯罪者がオーナーである会社と、継続的に取引をして、自らPRに使ってよいのか。よいはずがない。でも、それがまかり通ってしまった。知らなかったではすまされない。なぜか。それを疑い、懸念をもって、ジャニーズと取引をしなかった会社があるからである。反証可能性からみて、言い訳は通りにくい。

 ・未成年への性加害は、サプライチェーンのなかで、人権問題である。これは「魂の殺人」である、と位置づけて、人権の尊重を行動へ移す必要がある。国の義務、企業の責任、救済へのアクセスが問われる。

 ・「魂の殺人」に対して、契約を停止するだけでは不十分である。自らの影響力を使って、負の影響を減らすべし、と提言する。企業は、リスクを特定して、デューデリのプロセスを整備し、そのリスク管理を運用する。負の影響を是正し、救済にまで協力せよ、という。

 ・是正、救済を行動で示す必要がある。人権リスクは、企業価値に影響する事業リスクだけでなく、被害者のリスクを救済することまでを含む。この救済状況を開示せよと提案する。

 ・コンプライアンスは、法令順守に留まらない。コンプラの対象はハードロー、ソフトロー、規範を含む。「未成年への性加害」を対象とし、それを特定して、ガバナンスの原則に入れる必要がある。取協リスク・ガバナンス委員会の柿崎副委員長(明大教授)はこのように述べた。

 ・日本のガバナンス改革は本物か。改革を進めていても、反例(悪いガバナンス)が次々と出てくる。形式だけに捉われている企業も多い。ESGを軸としたサステナブル資本主義の実践という点では、イノベーション、DX、CXをスピードアップする必要がある。

 ・ICGNの対話ミーティング(23年10月)で、ノルジェス・バンク・インベストメント・マネジメントのW.モーン氏(CGのグローバル責任者)は、ガバナンスにおいては、取締役会の独立性と多様性が最も重要で、これが進むかをさらにみていくという。

 ・プライム市場企業は、グローバル企業との比較で、もう一度、自らの経営力(トップのリーダーシップ)、成長力(イノベーション)、リスクマネジメント、サステナビリティ(ESG)を見直す必要があろう。

・多くの日本企業は、価値創造のビジネスモデルが弱い。よって、利益の水準(収益性)も収益の伸び(成長性)も見劣りしている。ガバナンスは形ではない。実践である。ガバナンスをよくしたら、それだけで収益性、成長性が高まるわけではない。

・その中で、ドスンと落とし穴に陥らないための仕組み作りとその運用が問われる。このリスクマネジメントについて、企業とじっくり対話して、企業の質を見極めたい。

 

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