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【#にじ遊戯王祭】「社築vs加賀美ハヤト」に見る言外の対話
どうもベルドラです。今日は友人(にじさんじオタク)向けに需要のありそうだった記事を書いていきます。
先日行われた #にじ遊戯王祭 は、会話バトルにガチの消耗戦、初心者枠の大躍進と興奮の連続だった。
今回のにじ遊戯王祭は、企画から実況解説のライバー、開発のコナミに至るまで皆「遊戯王に触れる人が増えてほしい」という思いで通じ合っていたと感じる。
遊戯王を普段やらない友人に「(盤面で)何が起こってるかわからないから解説してほしい」という要望を頂けたのも、その思いが伝わってのことだと思う。
この記事では、個人的に遊戯王の魅力が詰まっていると感じた予選Bリーグ「社築vs加賀美ハヤト」において、どのような戦術ややり取りがあったのか解説する。
初心者にもこの試合の面白さが伝わるよう最大限努力するが、遊戯王の基本的なルールは社築による解説配信や各参加ライバー(特にルーキー枠の3人)の配信を通してライバーと一緒に学んでいただきたい。
概要
この試合(本配信、社視点、加賀美視点)は一見するとトップメタ(巷で最強とされる)デッキ【烙印デスピア】を擁する加賀美ハヤトが「ブン回って勝った」ようにも見えるが、実際は加賀美が的確な判断を繰り返した末の勝利であった。
この試合のキーカードとなるのが社が使用した【海】デッキの切り札《海竜神-リバイアサン》だ。
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①によってお互いのフィールドを文字通り「海」に沈める効果を持ち、水属性(海に適応のある)モンスター以外は1体しか存在できなくなる。
加賀美の【デスピア】は闇属性で統一されたデッキであるため、この効果が成立してしまうとモンスターが場に出せずデッキが機能不全に陥る。
(補足になるが遊戯王のルール上、「存在できない」状態では新しく出そうとする行為そのものが禁止され、《融合》などの魔法カードは発動することすらできない)
【デスピア】は試合前に加賀美本人が「負けないデッキを持ってきた」と語る通り、墓地へ行ったカードの効果で次のカードを持ってくることを繰り返し、粘り強い戦いができるデッキになっている。
つまり「リバイアサン+海を成立させて全力で勝ちへ向かう社」vs「あらゆる手段を用いてそれを妨害する加賀美」という試合構造となっている。
1ターン目(先行:加賀美)
《魔玩具補綴》で手札を増やしながらキーカードの《融合》をサーチした加賀美は続いて《烙印開幕》を発動。デッキの始動役となる《デスピアの導化アルベル》がデッキから特殊召喚される。
アルベルが導いた《烙印融合》によって《悲劇のデスピアン》を墓地に送りつつ《神炎竜ルベリオン》を召喚し、そのルベリオンの効果で《氷剣竜ミラジェイド》を特殊召喚、さらに《悲劇のデスピアン》が墓地に送られたことで《デスピアの凶劇》がサーチされる。
ここで加賀美は《氷剣竜ミラジェイド》の除去効果を《氷剣竜ミラジェイド》自身を対象に発動する。
なぜ彼はここまでいろいろなカードを経由してようやく出した切り札を自ら除去してしまったのだろうか。解説席からも疑問の声が上がる。ここで《氷剣竜ミラジェイド》のテキストを読んでみよう。
②:自分・相手ターンに1度、「アルバスの落胤」を融合素材とする融合モンスター1体をEXデッキから墓地へ送って発動できる。フィールドのモンスター1体を選んで除外する。次のターン、このカードはこの効果を使用できない。
ここで加賀美がエクストラデッキから墓地へ送ったカードは《烙印竜アルビオン》。このアルビオンの効果を利用するため、加賀美はミラジェイドを犠牲にしたのだった。
反撃の下地を整えた加賀美は小考の末《融合》によって《赫灼竜マスカレイド》をフィールドに送り出す。
マスカレイドの①の効果によって、社は次のターン何か行動を起こすたびにLPの「税金」を支払わなければならなくなった。
ここで加賀美はターンエンドを宣言するが、エンドフェイズ時にはミラジェイドによって墓地に送られた《烙印竜アルビオン》の②の効果が発動。
凶悪な融合魔法カード《赫の烙印》をデッキから直接セットして盤面を固めた。
2ターン目(後攻:社)
運命の2ターン目。
ここで社が《海竜神-リバイアサン》を立てられるかが勝敗を左右する。
ターンを受け取り、社が最初に発動したのは《海》。《伝説の都 アトランティス》とカード名のところに書いてあるかもしれないが、テキストに「このカードは《海》です」と書かれているのでこれは《海》だ。
解説席の舞元啓介が「先行じゃなくてよかった」と呟く。
近代遊戯王においてモンスターの召喚を封じられることは死に等しい。コイントスの結果によっては加賀美が一方的に虐殺される(もはやモンスターを出すことすら十分にできない)可能性もあったわけだ。
死の予感を漂わせるフィールド魔法に対して、加賀美はミラジェイドとアルビオンの連携がもたらした《赫の烙印》を発動。《悲劇のデスピアン》を手札に戻し、手札の《悲劇のデスピアン》と《デスピアの凶劇》そして場の《デスピアの導化アルベル》を素材に《ガーディアン・キマイラ》を融合召喚。
キマイラの効果によってアトランティス(海)は破壊され、加賀美はカードを2枚ドローした。
さらに素材になった《悲劇のデスピアン》と《デスピアの凶劇》の効果が発動。次なる《デスピアの導化アルベル》が手札に加わり、除外されていた《氷剣竜ミラジェイド》が復活する。
1ターン目にミラジェイドを除外したのはミスではなかった。「このために《デスピアの凶劇》と《赫の烙印》をご用意させていただきました」と主張するかのようなプレイに、実況席からは「どちらのターンかわからない」とヤジが飛ぶ。
出鼻をくじかれた社が続けて出したのは《電気海月-フィサリア-》。
海とコンボする②の効果が強力なモンスターだ。
ここで再び《海》が発動されてしまうと《氷剣竜ミラジェイド》が無効にされてしまい、社の行動を止める手段がなくなってしまう加賀美はミラジェイドでこの可愛い(色をした)クラゲを除外。社のフィールドは再び空になった。
行動の悉くを妨害され続ける社は手札から《氷水のトレモラ》の効果を発動し、リベンジとばかりに2枚目の《電気海月-フィサリア-》を特殊召喚する。
そして社が発動したのはなんと①の効果。つまり、社の残り手札2枚のうち、最低でも1枚は水属性モンスターということだ。
解説席にも緊張が走る。ここで《海竜神-リバイアサン》が出れば、戦況は一気にひっくり返る。
そしてこの効果に加賀美は対応する術を持たず、社の手札から現れたのは《海竜神-リバイアサン》。①にえげつない効果を携えたこの竜は、あろうことか②の効果により自身とコンボするための《海》を自力で持ってきてしまう。
当然すかさず②の効果を発動する社。
《赫灼竜マスカレイド》によって課された600LPが一瞬の静寂をもたらし……加賀美の手札から《灰流うらら》が放たれた。
多くの凶悪すぎるカードの抑止力となる効果から「遊戯王における人権」と呼ばれるこのカードを、加賀美は《ガーディアン・キマイラ》のドローで引き当てていたのだ。
最高の(社にとっては最悪の)タイミングでの《灰流うらら》によって、《海竜神-リバイアサン》による滅亡は回避された。
社は残る手札1枚を場に伏せてターン終了。
3ターン目(先行:加賀美)
《海竜神-リバイアサン》をなんとか退けた加賀美は、圧倒的に有利な盤面で自分のターンを迎えた。
しかしこのターンで決着をつけられなければ、次の社のドローで何が起こるかわからない。それは前のターンにドローで奇跡を起こした加賀美自身が最も知っていることだろう。
加賀美は対戦相手の社に「申し訳ないがどうしても石橋を叩きたいんだ」と宣言し、再び《デスピアの導化アルベル》から展開を開始する。
一連の展開によってアルベル自身と《神炎竜ルベリオン》《捕食植物ドラゴスタペリア》を盤面に加えた加賀美は、手札に《喜劇のデスピアン》も構えて盤石な構えを見せた。
諦めムードの社に対して、加賀美は「でもこれ実はミラフォケアできてない」と呟いた。社の場にはまだ正体不明の伏せカードが1枚。
ミラフォこと《聖なるバリア -ミラーフォース-》は逆転の罠カードの代名詞で、近年では採用されることが少なくなったものの過去に禁止カードに指定されていたほどド派手な効果を持つ。
過去多く使われたが今では顧みられなくなったカード《冥府の使者ゴーズ》の「啓蒙」を今大会のコンセプトに掲げていた加賀美には、お祭りのカジュアル大会故の恐怖がつきまとう。
意を決してすべてのモンスターを攻撃表示にした加賀美は(ここであえてミラーフォースの被害を最大化するプレイをするのが彼らしいと思う)、バトルフェイズに入りリバイアサンを攻撃。
攻撃に対して社が発動したカードは……《氷結界》。
単体に対してはミラーフォース以上の防御力を発揮するこのカードも加賀美が大量に展開したモンスターをすべて止めるには至らず、総攻撃で社のライフポイントは0になった。
勝者は「カードを愛し、運命に愛された男」加賀美ハヤト。
試合後
加賀美は「【海】デッキはランクマッチでも使ったことがあって、今回も使用候補の1つだった」と語った。そして「(【海】デッキを)使ったことがあったからなんとかなったけど、使ったことがなかったらヤバかった」とも。
この試合には分岐点がたくさんあった。もし加賀美が違う展開ルートを辿っていたら。《氷剣竜ミラジェイド》を自爆させて《赫の烙印》をセットしていなかったら。《伝説の都 アトランティス》の次に出てきたカードを破壊しようと考えていたら。……そして《灰流うらら》が引けていなかったら?
社の手札には《伝説の都 アトランティス》と《海竜神-リバイアサン》があった。もしアトランティスをすぐに破壊していなかったならばアトランティスの効果でリバイアサンがレベル4になりそのまま通常召喚、直後に加賀美のフィールドは海に沈んでいただろう。
そして社のデッキも素晴らしかった。アトランティスが妨害された後にも手札には二の矢三の矢が番えられており、《電気海月-フィサリア-》《氷水のトレモラ》の連打から多くの妨害を乗り越えて《海竜神-リバイアサン》を着地させることに成功した。
残り1枚の手札が《氷結界》だったことも恐ろしい。《海竜神-リバイアサン》の効果が成立すると加賀美のモンスターは1体になるが、その1体でリバイアサンを倒すことができればロックは解除される。そこにとどめを刺すのが《氷結界》だ。
加賀美は残った攻撃力2000以上のモンスター「1体」でリバイアサンの戦闘破壊を狙うことになるが、そこに《氷結界》が①で強烈なカウンターパンチを食らわせ、②で後続を呼んでくる。そう、《氷結界》はモンスター1体に対しては非常に有効なのだ。
ここまで理解できると加賀美の《灰流うらら》がいかに劇的だったかがわかるだろう。
遊戯王の面白さ
そしてここまでのやり取りがたった3ターンで行われている、このスピード感こそが遊戯王の最大の魅力だ。
1ターンに何枚ものカードが飛び交い、目と鼻の先にある勝利を全力で奪い合う。ときにはお互いが疲弊してジリジリと削りあう試合展開になることもあるが、それは開幕の全力疾走の結果に他ならない。
加賀美は試合後に「脳が焼けるかと思った」と振り返っている。
それほどまでに濃密なやり取り、濃縮された時間。それはお互いが自分のデッキ、そして相手のデッキすらも知り尽くした2人によって生み出された。
この記事を読み終えたなら、ぜひ2人の戦いをもう一度観てほしい。
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