【朗読】溶け合うものたち

2011-10-03投稿 こえ部過去作品


ちがう・・・

違う違う違う

違う!!

こんな筈じゃなかった。私の望みは

こんな結末じゃなかった。

なにこれ・・・何なのよ!これは誰の手?この触角は何?

いやぁああああああ!!!

ー ひとつだけ、願いを叶えてあげよう。

かつて、誰も私のことを分かってくれなかった。

分かって欲しかった。愛して欲しかった。

友達が欲しかった。家族が欲しかった。

恋人が欲しかった。寂しかった。繋がりたかった。

溶けあって、何もかも理解して、ひとつになりたかった。

だから願ったの。そんな世界を。みんながひとつになれる世界を。

すると世界は変わった。

全ての生き物が、細胞の拒絶反応をやめたのだ。

生き物は、ひとつになり始めた。

ネズミを捕まえようとした猫が溶け合った。

たくさんのオキアミが鯨と混ざり、鷹とウサギが交じり合う。

手を繋げば自己紹介は必要ない。

愛し合う者に隠し事はない。

人種も性別も関係ない。ペットと飼い主の違いも無い。

溶け合うものたちは、幸せだった。

異形の姿になりながら、「残りの欠片」を探して歩く。

『すべてのいきものとひとつになる』

その為だけに いきている。

あぁ、ワタシは独りじゃない。

もう、怖いものなんてない。

アナタが私を騙して世界を終末に導いたのは知っています。

でもいいんです。

これが私の、ワタシタチの本当の望みなんだから。

・・・あぁ、ワタシは幸せです・・・幸せです。

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