今後のクライミング
今後のクライミングについてどうなっていくのか少し考えていきたい。
どこまで行っても『クライミング』は登るスポーツと言うことに変わりはないと思う。
目の前の課題と向き合い、自分なりの解釈や考えで完登を目指すのがクライミングと言うスポーツ。
思考し、失敗を繰り返し完成していくのがクライミングなのは、長年クライミングをしてきた中で思う一つの形なんじゃないかと思う。
最近は、僕らの時代とは違い、習い事やスクールとして指導者がいて教えてもらうと言う近道もできるようになってきた。
あくまでも、最初のスタートにブーストがかかるような印象なので、そこから先は本人の努力しだいなのは、昔も今も変わらない。
ただ、一つ大きく変わったのは『動画』の存在かと思う。
一概に『動画を参考にするのが悪い』と、いうつもりは毛頭ない。
その動画をどのタイミングで見るのか、どの状態で見るのかで大きく影響は変わってくると感じている。
登る前のタイミングで、動画でじっくり観察したうえで、どのタイミングでどこに足があって、どこを保持するのかを認識してから登ることに本人の成長はあるのだろうか。
これが自分の苦手な課題を確実に落とすために、上記の行動をとるなら一つの手段だと思う。
苦手意識を少しでも減らしてトライすることは決して悪いことではない。
だた、これを毎回のように行うのはどうなんだろうか。
思考していない、あくまでも動画を参考にしているだけで、自分の技量は上がるのだろうか。
もちろん、模倣することでスキルの習得には近づくだろう。
ネックになるのは、それをどこで使うかまで把握はできないし、理解できるわけでもない。
『使いどころのわからないスキル』を習得しても、何の意味もない。
自分で発見することで、『一つのスキルとして習得』という形が最短化されすぎて自分の物になることを阻害してしまっている気もする。
また個人的に登っている時によく耳にするのが『こんな小さいのどうやって乗るん』と言う一言。
特に3級あたりをトライされている方に多いような気がする。
Flathold(フラットホールド)のジブスや、TEKNIK(テクニック)のジブスが代表的かもしれない。
小さいホールドであっても、大きいホールドであっても、乗り方さえ工夫できれば『乗れない』ことはない。
個人的によくあるのは、脚力や体重にラバーが負けてしまって滑ることはたまにある。
それはあくまでも、『乗り方が下手』なだけで、工夫すればどうとでもなる。
あくまでも趣味で楽しむ程度のクライマーも多くなってきているので、好き嫌いは目立つようになってしまっているのかもしてない。
一つ理由としてあげておきたいのは、ホールドの大型化と課題のパフォーマンス重視化と言うことも考えておきたい。
昔に比べて選択肢が多くなったのは非常に良いことだと感じる。
個人的にはカチホールドの課題が多かった15年前の課題は辛く険しいものだった。
それがあるから今がるとも思う。
では、この大きなホールドの弊害は何かと言うと、前述した『小さいホールドに乗れない』人が増えたと言う一つの事実である。
ハリボテにべた乗りした状態でも動けてしまう。
そして、課題のパフォーマンのみを重視した結果、『持てれば足は雑でも問題ない』と言う課題が増えたということだろう。
もちろん、選手クラスが行う課題は持てるだけではどうしようもない課題になっている。
それ以外クライマーがトライする課題で、どこまで内容のあるクライミングを提供しているのかが、重要なのではないだろうか。
ホールドの乗り方、ポジションへの入り方、保持面をどう抑えるのか、取り先のホールドからどう動くのか。
考えることはいくらでもある。
その内容を伝えてくれる課題や、指導者はどれくらいいるのだろうか。
正直そんなに多くはないと感じている。
人に伝えることは難しいのは十分に理解しているが、きちんと教えられないのに『教えているつもり』になっている人が居るのも一つの事実だと感じる。
届けば持てる、足を上げれば取れる、握れば動ける、怖がらないで取りに行けなど。
それは誰が見てもわかるし、言ってることに間違いはない。
ただ、それは『教えている』のか、という疑問になる。
これが指導している相手が選手クラスで、『持たないとどうしようもない』のか、はたまだ中級クラスで体の動きが上手くできないのかで、大きく変わってくる。
『指導』はあくまでも、個人のレベルを把握したうえで適切な指示をするから、成長に繋がる。
当たり前のことを押し付けることが指導にならないと、個人的に感じるところだ。
話が大きく逸れてしまった。
課題のパフォーマンス化というのも、ある程度は仕方ないのは十分に理解できる。
市場を広げる、認知してもらうにはもちろん目を引かなくてはならない。
そして、知らない人でも理解できるように大きな動き、大きなホールドになるのもある種、仕方ない選択だっただろう。
そこからの派生で、ハリボテの上を走る、連続でのランジなどのひと昔前では考えられないような動きもできるようになってきた。
この二つはあくまでも『インドアクライミング』つまりはスポーツクライミングだから成立してる部分がある。
これをアウトドアでやればケガをするのは誰でも明白でしょう。
しかし、インドアとアウトドアを大きく切り離してしまうことは、正直できないと思います。
なぜならアウトドアからいきなりクライミングを始める人がどれくらいいるのでしょうか。
ごく少数だと思います。
そのうえで、前述した三つの項目(『動画を参考する』『小さいホールドが乗れない』『パフォーマンス重視の課題しかさわらない』)を常に念頭にある人がアウトドアのクライミングを行うことを考えてください。
ケガしかないですよね。
これまでのクライミングの選択が間違っているとは思いません。
だからこそ、少し方向転換であったり、修正が必要な時期に来ているのではないかと感じざるおえません。
きちんと競技を行い選手として活躍してきた指導者、基礎指導がきっちりできる指導者、ナマーやルールを理解している指導者などのランク付けなども必要かと思います。
既にある、既存の資格がどれくらい機能しているかは、不明確ですが。
『昔のクライミングも、今のクライミング』も全て先への糧だと考えるのなら、一新するのも一つではないでしょうか。
もっと長く続くスポーツであって欲しい、今後もよりよいコミュニケーションが取れるスポーツであって欲しい明確に技術を伝えられる指導者がいるスポーツであって欲しいと願います。
今の楽しみだけを追求するのではなくもっと先を見て、子供たちや初心者に必要なことをもっと伝えていけるスポーツでありたいですね。