私はまるぼうず

1月、まるぼうずにしてすぐ、頭から風邪をひいてしまった。
「時期を間違えたわね」
代表の奥さんがうふふと笑った。
生まれてはじめてのまるぼうずだった。こんなに寒いなんて知らなかったし、知ってたら1月を選ばなかった。
髪の毛はあたたかいものだったんだなあと身をもって思い知った冬。

「なんでまるぼうずにしたの?」
私は適当人間だけど、聞かれた時にその場その場で真摯に説明している。
どれもこれも事実なので、私が坊主になった理由について話し合う時に「私にはこう言ってたけど…」と悲しくならないで欲しいと思う。

本質的な理由は「髪を洗う時間が地獄だから」。単純ながらいちばん言いづらい。

私は幼い頃から風呂嫌いで、洗われる度に泣いていて、母にはよく「そんなに髪の毛洗うのがいやなら、まるぼうずにしちゃいなさいっ!」と脅されていた。

それが事実、バリカンひとつで長年の風呂嫌いが完治してしまったのだから驚きである。
あれから20数年経って本当にまるめた頭をお披露目したとき、母は腰を抜かした。

風呂嫌いの女性は多いという統計がある。
そして別の話、風呂に入れないことは心の病の大きなサインという。
女性は女性というだけで、「髪は女の命」などと、髪を伸ばす選択をさせられがちだ。

命に男女はなく、髪に命を宿すのは本人で、命はその人の命そのものであり、生活そのものだ。
私の人生の質を下げていたのが髪の毛だったという発見は、誰かを癒すかも知れないと本気で思っている。
どうにもならないと思ってた生きる苦しみがひとつ解決したので、記録しておこう。

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