中小企業でスコープ3算定が必要なケース
現在、全世界で脱炭素社会の実現を目指す取り組みが行われています。日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラルの実現」を宣言しました。
以降、大企業を筆頭に脱炭素化に取り組む企業が増えており、中小企業にも取り組みが求められている状況です。脱炭素経営を行うためには「スコープ3」の算定が必須といえます。
この記事ではスコープ3とは何か、中小企業がスコープ3算定を行うべき理由やメリット、算定方法とともにお伝えします。
大企業と中小企業のスコープ3算定が求められる理由
サプライチェーン(物が作られてから廃棄されるまでの一連の流れ)全体における温室効果ガス排出量は、国際的な基準「GHGプロトコル」で示され、スコープ1・2・3に分類されています。
スコープ1は自社で直接排出する温室効果ガス、スコープ2は他社から供給された電気や熱、蒸気の使用によって間接的に排出される温室効果ガスを指します。そしてスコープ3は、サプライチェーンの上流(原材料の購入や輸送など)と下流(完成した製品の輸送や使用、廃棄など)の段階で排出される温室効果ガスのことです。
スコープ1・2・3のすべてを合わせることで、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の把握が可能になります。
今やスコープ3の算定は、大企業と中小企業のどちらにとっても不可欠なものといえます。その理由を見ていきましょう。
1-1:スコープ3算定の義務化とは?
特に大企業は大規模なサプライチェーンを持っているため、スコープ3にかかる温室効果ガスの排出量も増える傾向にあります。
日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2024年3月末に公開したサステナビリティ開示基準の公開草案には、「スコープ 1 ・ 2・ 3 温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示しなければならない」と記載されています。
このSSBJ基準はまだ検討されている最中ですが、2025年3月までに公開される見込みです。また金融庁は、東証プライム上場企業を対象に、スコープ3も含む温室効果ガス排出量の開示を義務づけることを検討しています。
出典:金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」
1-2:中小企業にとってもスコープ3算定が重要になる理由
大企業のサプライチェーンにおいて、上流・下流で排出される温室効果ガスを減らすには、中小企業の協力が必要です。
JETROのデータによると、「国内/海外の顧客から脱炭素化の方針への準拠を求められているか」という質問に対し、国内で17.0%・海外で12.1%の企業が「何らかの準拠を求められている」と回答しました。中小企業においても削減方針への準拠が求められている実態があります。
なおスコープ3を含む温室効果ガスの排出量は、対外的な企業の評価にも影響します。温室効果ガス排出量が多いと、投資家から敬遠されたり、大企業のサプライチェーンから除外されたりなど、多くのリスクが考えられるでしょう。
こうした不利益を被らないためにも、中小企業はスコープ3の排出量を算定・把握しておく必要があるのです。
出典:JETRO 日本貿易振興機構「脱炭素化へ大きな波―中小企業に求められる『算定と把握』」
中小企業がスコープ3算定をするメリット
中小企業が積極的にスコープ3を算定すると、さまざまなメリットを享受できます。
2-1:スコープ3算定のメリット
中小企業がスコープ3を算定するメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
・取引先とのエンゲージメントの強化
・効率的な対策による排出量及びコスト削減
スコープ3を算定することで、大企業の取引先からの質問に対応できるほか、環境経営指標に活用したり、CSR報告書やWEBサイトなどに掲載したりすることが可能です。
こうした対応によって環境保護への取り組みをアピールし、自社の評価を高めることができます。
脱炭素化が当たり前の社会になっていく中で、スコープ3算定に取り組んでいる企業は、市場における競争優位性が高まるでしょう。
また、スコープ3を算定すると、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を可視化できます。それにより、サプライチェーンの中で温室効果ガスを削減すべき優先順位が分かり、効率的な対策が可能です。的確な対策を行うことでコスト削減にもつながります。
そして、他の事業者との連携が進むこともメリットです。スコープ3を算定することによって、サプライチェーン上の他社と情報交換をしたうえで、共同で対策を行うこともできるでしょう。
出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」p.1
算定にはいくつかの方法がある
ここでは、中小企業がスコープ3の算定を行う具体的な方法を解説します。
3-1:自社で行う
自社だけでスコープ3を算定するためには、サプライチェーン全体のそれぞれの活動について、細かくデータを収集・計算しなければなりません。
しかし、スコープ3の算定には以下のような課題もあります。
・スコープ1・2と比較してルールが複雑
・データ収集に多くの手間がかかる
・算定範囲や精度の社内調整が難しい
スコープ1・2と比べて、スコープ3の算定ルールは複雑です、そのため、自社だけで行おうとすると無駄な労力やコストがかかってしまう恐れがあります。
また、スコープ3の算定に必要なデータのほとんどは、取引先など社外で保管されています。社外にあるデータは社内データより収集が難しく、多くの手間がかかるでしょう。
さらに、スコープ3を算定する際は、さまざまな項目を社内で取り決めておく必要があります。例えば算定の目的や算定範囲、算定の精度、担当部署などを擦り合わせる必要があり、その分手間と時間がかかります。
3-2:企業にコンサルティングを依頼する
中小企業におすすめしたいのは、社外のコンサルティング会社にスコープ3の算定を依頼する方法です。専門知識を持つコンサルタントが算定を支援するため、スコープ3の排出量を正確に把握し、適切な対策を立てることができます。
Believe Technologyでは、各企業の要望に沿い、スコープ1・2・3の排出量を正確かつスピーディーに算定可能です。
複雑かつ柔軟な分析を行ったうえで、総排出量やカテゴリごとの排出量、分析グラフ・表などをまとめたエクセルデータと、算定方法や算定結果、アドバイスをまとめたレポートを提供いたします。
コンサルタントが正確なスコープ3算定を支援
世界的に脱炭素社会を目指す動きが顕著になる中、各企業がスコープ3を算定することはますます重視されるでしょう。
Believe Technologyは温室効果ガス排出量を算定するプロフェッショナル企業です。中小企業から大企業まで幅広く対応しています。スコープ1・2・3の基礎知識、スコープ算定の方法など、要望に合わせて丁寧にご説明したうえで、算定の内製化も支援いたします。
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