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爆破のエネルギーで異界と対話する芸術家・蔡国強
[蔡国強 宇宙遊 - <原初火球>から始まる]見に行ってきました。
同時開催中のテート展と迷いましたが、展覧会概要で見た「火薬絵画」や「爆破プロジェクト」という言葉に惹かれ、こちらを選びました。
どう考えても気になる。
蔡は中国福建省出身の66歳。
日本移住を経て、現在はニューヨークを拠点に世界各国で作品を発表している現役バリバリアーティストだとか。
爆破という手法を通して蔡が表現したかったものは何なのだろう。
そもそもなぜ火薬を使うことにしたのかというと、保守的な父親や社会的統制への反発心、西洋文化との差別化、純粋な好奇心など…。
様々あったようですが、一番は「テーマ作成」、特に初期作品に「人類の文明と地球的な危機」というテーマが色濃く反映されているそうです。
確かに、原爆投下やベルリンの壁崩壊など、世界で起きた物理的な破壊をモチーフにしている作品が多かったかも。
その後創作を通して「火薬のエネルギーって宇宙誕生のエネルギーとイコールで結べるんでね?」と火薬の本質に気づいた蔡は、宇宙という空間に興味を惹かれつつ、西洋美術にも目を広げたそう。
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後期になるにつれ、色彩が加わります。
火薬・ガラス・鏡を使用って書いてあったけど、ガラスって爆破に耐えられるんだということに驚き。
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「〈原初火球〉の精神はいまだ健在か?」とタイトルをつけられた第4章では、AIなどのデジタル革命がめまぐるしい現代と芸術についてこう語っていました。
「コンピュターの時代、情報時代の到来にワクワクしている。この大変革の時代を生きるアーティストであることに心から興奮している。印象派が産業文明の発展に直面したとすれば、私たちはより本質的でより偉大な時代と対峙することになるだろう。この自覚から、より一層の努力をしなくてはという覚悟が生まれる」。
蔡は積極的にAIを用いており、自身のこれまでの作品や様々な学問知識をのみ込ませたcAI™︎(AI Caiと読むらしい)を創作のパートナーとしています。
今はアイディアの生成に留まっているが、将来的にはオリジナル作品を生み出すとか…。
何の話もしていてもAIが登場する世の中ですね。
AIアートは賛否両論ありますが、技術やその活用についてかなり前向きに捉えていて、この受容する精神こそが火薬絵画の源泉なのかなと感じました。
今回の1番の目玉であったLEDインスタレーションは、メキシコにて現地の花火師たちとコラボした作品のオマージュらしく、原寸大のオブジェは圧倒的でした。
白い光、オレンジの光、カラフルな光と変化するようプログラミングされており、見ていて飽きなかったのはもちろん、当時の空を照らしたであろう火花や人々の熱狂が想像されて印象に残っています。
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昔の作品と現代の技術を交叉させる手法はままありますが、その分かりやすい一例だったように思います。
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日本に住んでいたことも影響してなのか、どことなく馴染みのある作品たちであり、蔡自身の人柄にも親しみを覚えました。
好みの問題でどうしても西洋美術に目が向いてしまいがちですが、たまに東洋の芸術を見るとそうした安寧を感じます。
また機会があれば見に行きたいアーティストです。
蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる
開催概要
会期
2023年6月29日(木) ~ 2023年8月21日(月)
毎週火曜日休館
開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場
国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
主催
国立新美術館、サンローラン