今日もピアスを開けれなかった
アクセサリーやジュエリーが大好き。ピカピカひかるものを身につけていると気分が高揚する。自分がいい女になったような気がしちゃう。
好きなブランドはアーカーやスタージュエリー、ティファニー。
人生の節目ごとに、アクセサリーを買ってきた。
大きめの宝石も大好き。ずっとキラキラ輝けるように、磨いてあげてる。
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8年前、友達が、「ハワイのお土産!」といって、大きめのピアスをくれた。
しかし、わたしは、ピアス穴を開けていないのだ。困った。
「ごめん。ピアス穴。あいてないんだけどw」
「え〜〜!?ピアス穴、あいてたかと勘違いしてた!」と友達が動揺する。
「じつは、軽い金属アレルギーだから、開けないようにしてるの」
と言い訳をしたら、
「そっか〜、それじゃ仕方ないね!」と納得してくれた。
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・・・金属アレルギーなんて、嘘。
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10年前、ピアスがまだまだ全盛期だった。
その当時、かわいいイヤリングは少なくて。
おしゃれな女性ならみんなピアスを開けていた。
わたしの周りの子、みんな開いてたし。
・・・20歳過ぎた女性が「ピアス穴を開けれないの」という言い訳をするには、「金属アレルギー」と言うしかなかったんだ。
だって私、別に、そこまで痛がりじゃないし・・・
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祖母から、ピアスを開けるのを禁止されていた。
「親からもらった身体に穴をあけるなんて!ピアスなんて付けようものなら、勘当するからね」と言われていた。
え、本当に、どうしてダメなの?と聞いたら、
「細木数子が昔、ピアスはダメって言ってたの!!!身体に穴を開けるのなんて運気が下がる!!!!」
と、祖母が怒鳴っていた。
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まぁ・・・無理やりピアスをあけてしまっても
「祖母に怒られるだけ」ではあるのだけど
私は祖母の言うことに反抗できないのだ。
でも、ピアスあけたい。
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しかしまぁ、4年前ぐらいから、ちょこちょこと、イヤリング売り場が増えてきたように感じている。
それでも、私は、耳たぶが薄くて、イヤリングをうまく固定できない。
イヤリングをつけた日は、頭が痛いし、なんだか居心地がわるい。
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「もう ピアスにすればいいのに」
と、心の声がささやく。
ダメだ、祖母に怒られるから。
そんなことで怒らせて、高血圧で倒れられたら困るし。
「祖母が死んだら、私はピアスを開ける。それまで待つ。」
と、自分に言い聞かせていた。
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「ピアス穴なんて、なんでもないよ。あけちゃいなよ。」
と思う人は多いだろうけれど
祖母が、そこまで怒ることを、わざわざやるほどの勇気がなかった。
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祖母の死とピアス
今年の5月、祖母が死んだ。
ふと、祖母にずっと禁止されていた「ピアスをあけること」を、やってみてもいいんじゃないかって、ふと思い立ったんだ。
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ピアスは皮膚科で開けれると聞いたのだけれど
いざ、予約しようとすると、スマホを持つ手がふるえる。
「・・・できない」
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死んだ人は、もうそこにはいない。
と思うことは簡単だけれど、ほんとうにそうだろうか?
むしろ、死んだ人のほうが、生きている人よりも、近くにいるような気がする。
祖母が生きていたとき・・・実家や、病室にいたとき、
「今なら祖母にバレないだろうけど」という実感があった。
でも、死んだ今・・・、
どこか、上の方で・・・わたしを見ているんじゃないかって、感じることがある。
「ピアスはダメ!」って怒ってる、死んだ祖母が、頭の上に住み着いて、永遠に、離れない。
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生きていた時なら、ピアスを開けたとしても、髪の毛なんかで隠しちゃえばよかったんだ。
生きてた祖母の目から、見えるはずがない・・・。
でも今は? 死んでるんだから見えないって? 怒られないって?
ほんとうにそうかな?
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今日もピアスを開けれなかった
結局、私は、今もピアス穴を開けれていない。
ピアス穴も、死んだ人も、運命に付与しないなんて、いったいどうしてわかるのか。
いま、わたしには、夫と、1歳の娘がいる。今すこぶる幸せなのだ。
1歳児を守るのなんて、もちろん、努力もあるけど、「運」って大きいよね。
努力しても、運が悪くて、守りきれないものって、あるじゃん・・・。
災害や事故。病気。怖いものがいっぱい。
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祖母はなんだかんだ わたしが、祖母の「理想の孫」でいたときは、
すごい、おそろしいぐらいの味方になっていた。
・・・祖母が嫌がっていたピアスをあけることで、死んだ祖母に、運命を味方してもらえなくなるのが怖い。
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学生時代、わたしがバイト先で、お局みたいな女性ににイジメられたときがあった。
裏で陰口をいわれたり、わざと失敗するように仕向けられてしまったり。
やんわりとしたイジメなので、辞めるほどじゃないけど、ストレスだった。
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そんなとき、ふと、祖母に「バイト先にお局さんがいて、イビられるんだよね」と愚痴をこぼした。
そしたら、祖母が、「その人、どこの人?苗字は?」と、目をギラギラさせながら聞いてきた。
こね:「コメモトって人(※仮名だよ!)」
祖母:「ちょっと待って。電話帳と地図もってくる。コメモトはこの町に3件しかいない。つまりこの中の誰かってことね・・・!
近所のスーパー、どこ使ってるとか、最寄りの駅は聞いたことない!?」
と、根掘り葉掘り聞くのである。
(ば、ばあちゃん・・・もしや特定して、やんわりと報復する気では・・・・)
と感じたが、もう後の祭りであった。
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バイト先の、わたしをイジメてきたお局さんは、数ヶ月後・・・。
・椎間板ヘルニアを発症し、3ヶ月ほど働けなくなった
・不倫がバレて、子供や家族とも別居
・・・いちおう言っておくと・・・祖母のせいじゃ・・・ないからね・・・?(こわいよ・・・)
そして、お局さんは、いつのまにか、いなくなった。
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そんなエピソードもあってか
祖母は、「敵にするとめちゃくちゃ怖いけど、味方につけるとスゴイ」というか、霊的な力すらあるんじゃないかと思ってしまった。
(もちろん、物理的な力もこわい。ご近所コミュニティを使って、根も葉もない噂を流したりなどもできたのだ。)
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そんな祖母のパワーを思うと
「死んだ祖母の言いつけに背いて、ピアスを開けたら、いったいどうなるか・・・!?」
想像すると・・・寒気がするんです・・・。
なんだか、悪いことが、起きそうで・・・。
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今日もピアスを開けれなかった
ティファニーの1粒ピアスを、ネットショップで見ては、ため息をつく。
「ピアスを開けれなかった今日」を繰り返して生きていかなきゃならない。
わたしは、祖母のことが怖い。今でも怖い。
怖いからこそ、祖母には味方でいて欲しい。
私は言いつけを守るから。
ピアスは開けないから。
その代わり、ずっと、私と娘のことを守ってください。お願いします。
と、仏壇に向かって、今日も祈っている。
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