好きになる人をまちがえてしまった話 01
3人以上で集まって、すごーく楽しい場だったとき・・・
「この人こそが中心人物」ってわかりますか?
3人グループでいつも遊んでいたのに。
ある日2人っきりになったとき。
中心人物だったあの子がいないと、何を話していいやらわからない。
急につまらなくなってしまう。
場のキーマン、盛り上げ役・・・。
「この人さえいれば、楽しい!」っていうカリスマって、世の中にいますよね。
わたしは人の観察がすごく苦手。
TVの有名人も顔の見分けがつかないし、性格を捉えられません。
バラエティ番組も、テラスハウスも、あまりうまく楽しめない。
だって、いったい誰が誰だったか覚えていられないから・・・。
人間がちょっと苦手なスットコドッコイだったんですよね。
そんなわたしの大学生時代(20歳になる手前)ぐらいの話。
***
その当時、大学2年生。わたしは、とても焦っていました。
20歳って、特別な数字だなぁと思っていて・・・
それなのに、自分自身、思い描いていた20歳じゃなかったんですよね。
夜更かしばっかりして、夜3時ぐらいに寝て、2限が終わるギリギリの12時ぐらいに大学に行って、友達がいないからすぐ帰って……
学校で学んでいるデザインも、うまくいってんだか、いってないんだか、全然わかんない。
わたし、このままでデザイナーになれるの?このままでいいの・・・?
あと、まともな彼氏がほしい。彼氏がほしい。彼氏がほしい。彼氏がほしい。彼氏がほしい。彼氏がほしい。
そんなことばかり考えていました。
***
20歳になる、10日前。大学の文化祭がありました。
デザイン系の学校だったので、文化祭ではそれぞれが作った作品を売ったり、展示したりしていて。わたしも自分がデザインしたTシャツとか、ポストカードなどを売っていました。
・・・あのね、厳しい話すると、そーいうグッズ、ぜんぜん売れないの。
閑古鳥?っていうの??あんな鳥が鳴いている感じ・・・。
そう。メンタルがやられる。
店だすのって、こんなにつらいものなんだ。
みんな見てくれないし、見てくれても買ってくれない。
文化祭は夕方5時ぐらいに終わるんですが、「こりゃ売れ残るな・・・」と思ってたころ。
20代後半ぐらいの男の子2人組が、わたしの目の前にきたんです。
男の子ふたりは「大智くん」と「尚人くん」(仮名)とでもしましょうか。
大智くん:「これ、君が作ったの〜〜〜!すごいね〜〜〜!俺こういうの好きだよ!!!!」
尚人くん:「俺もこれ好き。家に飾りたいな」
わたし「え〜〜〜〜!?ありがとうございます〜〜!(はーと)」
大智くん:「すごくセンスがいいし、おしゃれだよ〜、友達にもあげようかな〜」
尚人くん:「俺、これ買うよ。いくら?」
大智くん:「俺も買う!!!!」
・・・といった感じで・・・
なんとラスト1時間で、在庫がぜんぶ掃けたんですよ。
その2人組が買ってくれて。奇跡かよ!???
在庫ないし、もう店じまいするか〜。るんる〜ん〜〜♪と思ってたら、男子2人組が、まだその辺にいました。
大智くん:「あ!こねぴぃちゃん!文化祭、まだ見たいんだけど、こねぴぃちゃんも一緒にどう!??」
わたし「わ〜、いいですよ〜案内しますよ〜」(え!モテ期?!)
***
この図・・・わたしが、憧れ続けた・・・この図・・・
男子2人に囲まれてるわたし・・・
これよ!これ!これ!!!!みんな見て〜!〜!!みんなわたしのこと隠キャだと思ってたでしょ〜〜!?
でも〜〜〜わたし男子2人連れてるんですけどーー!!わたし、マドンナ的なやつになっちゃいました〜!???
あっははっはははっははは〜〜〜!!
・・・と心の声をおさえながら、ニコニコしていました。
大智くん:「せっかく仲良くなったんだしさ〜!文化祭終わったら、食事でもいこうよ!」
尚人くん:「あ〜、いつもの、あそこにする?ピザがおいしいんだよね」
わたし「わーい、行く行く〜〜★」
***
連れて行かれたレストランは「サイゼリヤ」でした。
わたし、大学生になるまで、サイゼリヤって行ったことがなかったんですね。
入ったら、なんか西洋美術史に出てきそうな天使やら、高尚そうな絵画がいっぱいあるし、鏡はコテコテしててエレガント(っぽい)感じだし・・・。
センスいい店知ってるなぁーって思いました。(アホw)
わたし「こんな店はじめて来ました★ なんか高そう〜〜」
大智くん:「へー、サイゼ初めてなんだ!?すごく美味しいよ」
そんな感じで、サイゼリヤで、ピザやらパスタやら食べた田舎者のわたしは大満足。こんな店知ってるなんてすご〜い!って、真顔で言ってました。
8年経ち、アラサーのわたしは、もうサイゼじゃ感動しない。
***
3人での食事はすごく盛り上がりました。
とにかく、わたしのことをちやほやしてくれるんですね。
「デザインできるなんて、すごいね!かっこいい!」って。
その当時、しょぼい美大生だったわたしは、自分の何を褒められるよりも、自分の作品が褒められることがうれしかったんですよね。それでちやほやされるなんて最高でしょう?
大智くん:「そういえばこねぴぃちゃん、いくつなの?」
わたし「19です。あとちょっとでハタチ」
大智くん:「そうなんだ〜〜〜!お祝いしなきゃね〜!!」
***
彼らは、わたしの20歳の誕生日を、祝ってくれると言ってくれたんです。
20歳の誕生日って、自分が生きてきた20年間の・・・答え合わせができるのではないかと思っていました。
わたしにとって、20歳の誕生日はひとりぼっちで過ごすのは嫌で。
できれば、家族以外にも、祝われたかった。
***
とくに何事もなく、男子2人組は、ふつーにわたしの家まで車で送ってくれて、メルアドを交換して、バイバイしました。
次の日、「あ〜昨日は楽しかったな」と思っていたら、尚人くんからメールがきました。
「誕生日プレゼント、なにがいい?」と。
わたし、てっきり大智くんと尚人くん、どっちも、わたしのことをお祝いしてくれると思ってたんですよね。
そして朝がきて、・・・思い出すと・・・、
大智くんと尚人くん、どっちがどっちだったか、分からなくなってしまっていたんです。
わたしは3人以上の会話がすごく苦手で。
会話はノリでついていけるんですが、「だれが何をしゃべったか」を把握するのが苦手なんです。
この話は便宜上「大智くん」「尚人くん」とセリフを書き分けましたが、
わたしにとっては、質問に答えるのに必死で、誰がなにをしゃべっていたのか、わかっていなかったんですよ。
***
でも、メールなら、誰が送ってるのかは分かりました。
名前書いてあるし。
このメールの相手は、「尚人くん」から。
それで、メールを何往復かしていると、
「おれ、こねぴぃちゃんのこと、好きになったんだけど・・・付き合わない?」って書いてありました。
ほう?早いな?
とりあえず、この人と付き合えば、20歳の誕生日に1人ぼっち、ってのが免れると思ったんです。
逆に、断れば、ひとりぼっちに逆戻り。
わたしのなかでは、「もうOKしたほうがいいんだろうなぁ」と、思ってしまいました。
だから、「いいよー!」って、なんとなくOKしちゃった。
***
後日……尚人くんとふたりっきりで会うことになりました。
いままでは大智くんと尚人くん、3人で遊んでいたので
尚人くんとふたりっきりで話したことがなかったんですよね。
でも、あのサイゼリヤでは、あんなに楽しかったんだから、
尚人くんと、2人でいても、楽しめるはずって、思いました。
***
尚人くん、きました。
沈黙の嵐。
尚人くん:「・・・いい天気だね」
わたし「そうだね」
両方「・・・」
沈黙
ん・・・?
楽しかった、あの、サイゼリヤでの時間は、・・・どこに?
***
わたしは、やっとわかったんです。
あの場でのキーパーソンは「大智くん」だったんですね。
わたしと、尚人くん・・・コミュ障の2人の会話を支えていたのは、大智くんだったのです。
わたしと尚人くん、ふたりっきりでは会話は成立しない・・・
そして、わたしは、付き合うべき、相手を、間違えているんですね。
いっしょにいて楽しいのは、「大智くん」のほうだったのです。
沈黙に耐えられず、わたしは、尚人くんに言いました。
「大智くんも・・・いっしょに、遊ばない・・・?」
と。
***
そしたら、大智くんも来てくれました。
「ふたりは、・・・付き合ったんじゃないの?
俺、じゃまかな〜〜〜って思ってたんだけどw」
と言われました。
どうやら、大智くんはすでに、わたしたちが付き合ったのを知っていました。
とはいえ、大智くんがいると会話がもりあがります。
私も尚人くんも、大智くんが場をとりなしてくれれば、ちゃんと発言することができ、たのしく会話ができるのです。
***
わたしは尚人くんと2人で会うのがしんどいなあと思っていました。
尚人くんも同じような気持ちでいたのか
「おれ、こねぴぃともっと仲良くなりたい!だから、交換日記しない?」と言われました。
ハァ・・・?って思ったけど、せっかく提案してくれたのだから、最初の1ページぐらいは交換日記をしてみようと思いました。
(単純に、尚人くんがどんな日記を書くのか少し興味があった)
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はじめのページは、尚人くんが書いてくれることになりました。
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「今日はピザ屋のバイト。バイクで配達はすごくさむい
でも、こねぴぃに会えると思ったら、心がぽかぽかしてきて、がんばろうって思える。
こんどは手をつないでいっしょにどこかへ行こう。
冬のさむさなんて、ふきとぶぞ!
風邪をひかないようにね☆」
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尚人くんは会話がつまらないのですが、文章はすごくポエム・・・。
ごめんなさい。
「うぇっ! なんかキモっ!!!!」
って思ってしまった。
「20歳の誕生日だからといって・・・
独りでいるのが嫌だからといって・・・
こんな妥協すべきなのか????」
と私は悩みました。
けれども、20歳の誕生日まで、あと2日しかありません。
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別れるとなったら、それはそれで面倒。
わたしは、大智くんに助けを求めました。
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こねぴぃ:「大智くん!見て!この交換日記!助けて!」
大智くん:「うわっ!キモっ!尚人キモっ!!!」
こねぴぃ:「でしょ?」
大智くん:「うーん。尚人と仲良くするよう仕向けた俺にも責任がある。」
こねぴぃと付き合ったら?って尚人にけしかけたの俺だし。」
こねぴぃ:「はあ?」
大智くん 「実は、おれ、こねぴぃと同じ大学の子で、好きな人がいて」
こねぴぃ「はぁ?」
大智くん「この前の文化祭で、「田中千尋(仮名)」っていう子の絵を見て、俺、ビビッときたんだよね」
大智くん「この子のこと、好きだ〜〜〜〜!って!こんな絵を描ける子は、いい子に決まっておるんだ」
こねぴぃ「はあ」
大智くん「だから、尚人とこねぴぃを付き合わせて、こねぴぃに千尋さんを俺に紹介してもらえば、万事OKだと思ってたんだ!」
こねぴぃ「ほ、ほう・・・大智くんは、千尋さんが好きなんだね?」
大智くん「うん」
こねぴぃ「わたし、尚人とは別れたいんだけど、
でも、千尋さんのこと、協力してもいいよ!面白そうだし。」
大智くん「やった!!!よろしく!!!!」
と、なぜか私と大智くんは握手を交わし
それぞれの目的に協力し、突き進むこととなった。
(つづく)
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