或る景色と音楽のプルースト効果を

2月の雪が降る寒い頃、First love初恋 を観終えた。
エンドロールを見ながら、アイスランドの氷に覆われた景色と晴道と也英の人生について思い馳せた。

人生のひとつひとつのパーツが磨き上げられた宝石のように輝くひとつの断面で、その輝きは研磨されて、様々な角度を持ってより美しく輝いていくのだと。

全てに意味があったのだと思わせてくれる。
過去の私の、今の私の、悲しみも後悔も、この瞬間瞬間の経験は、きっと伏線のひとつ、ダイヤモンドの輝きの断面のひとつ。
そう思って、前へ進む。 息を吸って、前進する。
そう思わせてくれる。

シーンひとつひとつが、組み合わせの妙と相まって美しく
とても完璧で、震えた。
ラストシーンの也英が、かっこよかった。

宇多田ヒカルさんのFirst love、それから、初恋
その2曲が今までよりずっと色濃く美しい曲に聞こえるようになって
とても好きになった。
First loveに至っては、解釈が良い意味で変わってしまった。

私自身が中学生のときに聞いていたその曲は、タバコのフレーバーという歌詞から、少し大人の淡くて苦い恋を想像して聞いていた。
その記憶を書き換えるように、このドラマを見て
芯の強い、人生の真ん中を貫く初恋の曲という印象に変化したこと、その変化がとても嬉しい。
そして、ラストに”初恋” が母性のようなものを纏って、その壮大な愛の物語を包み込んでいた。

ナポリタンを作って食べるとき
飛行機の機内食をいただくとき
札幌の街のタクシーに乗ったら
也英の健気に生きた日々のことを思い出すだろう

戦地や被災地に向かう自衛隊のニュースを見たら
ビルの警備員さんを見かけたら
金髪の男子中学生を電車や駅で見かけたら
晴道を思い出すかもしれない

晴道と也英の人生を思い出せるように
アイスランドの氷に覆われた風景とライラックの花の写真を飾ろう。

スイスの山々と湖の景色と、エーデルワイスの花は
リ・ジョンヒョクとユン・セリを思い出す

パリの街とニューヨークのセントラルパークの景色とギターで奏でるバッハの曲を聴くと、蒔野聡史と小峰洋子を思い出す

イタリアのフィレンツェのドォーモの景色とエンヤの音楽を聞くと
順正とあおいを思い出す


恋をして、運命に翻弄されて離れ離れになっても思い続けるふたりが
再会したときの震えるような狂おしい感動が景色や音楽とともに、私の心のどこかに記憶されている。

それもまた、私の無意志的記憶として心に宿っているのだろうと。

そのキラキラと光輝く感動を呼び起こして
人生のお守りにできるように
アイスランドの景色とライラックの花の写真を部屋に飾ろう。
そして、ときどき愛でるように First love と 初恋 を聞こう。
そう思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?