鈍器
脳内裁判 満場一致バイバイ。
RainyBlueBell(雨天決行、AO、ill.bell)の3人組によるキューーーーートなラップカバーです!
原曲はGIGA様&KIRA様のGETCHA! まず初見の方は、原曲・元動画を必見!!!!! まだの人は先に今すぐ見てきて!!! 控えめにいっても最高すぎる!音づくりも超気持ちいいし、音・歌詞・動画がすべてハイセンスに融合していて本当に素敵な作品です。
原曲を知ったのはずいぶん前で(踊ってみたの動画がきっかけでした)いつかカバーしてみたいとずっと思っておりましたが、構成上ひとりでは決して作れないような曲だったので、こうやってRBBのカバー版として発表できたことをとても嬉しく思います。
以下6000字超えの解説。暇なときに読んでね。
(1) 原曲について
まずこのボカロ楽曲"GETCHA!"をお聴きになって、そのテーマはどのようなものだと思われましたか?
「束縛からの解放」
「過去の思い出を振り切って前へ進む」
このあたりではないかと私は感じました。
そして原曲がMIKU×GUMIの歌唱ということもあり、
女性ふたりが歌う「自由な未来」の印象があります。
>ばら撒いてた愛取返し撤退だ
>Now I can finally open my eyes
今までは無理して愛をばら撒いていた。
だがそれらをすべて回収して撤退しよう。
ついに目が覚めた/視界が開けた。
>そんで来世もっかい君への返品サイン
万が一、来世で君に会えたとしたら
君の中にわずかに残っているかもしれない私の愛ですら、返品を要求しよう。
または
たとえ来世に君から愛を与えられたとしても、
一切受け取らずに突き返してやろう。
ここの「サイン」は中指を立てるサイン(The finger)の攻撃的なイメージと、返還要求の書類への「署名(signature)」のイメージの両方が込められているのかも?
その後の
>Getcha out my life boy
>I'll getcha, getcha, getcha!
の部分は
「私の人生から君を追い出すよ」
(I'll get you out of my life)
または
「私の人生から消えて!」
(Get out of my life!)
あたりの意でしょうか。
>待ちっぱなしの恋なんで
>錠をかけキー捨て去って
原曲のこの言い回しもすごい!
ずっと待つのに疲れた。
もうガチャッと全て施錠・封印して、
二度と開封できないようキーを捨て去る。
情景描写は詩的で美しいのに、
心理描写が現実的ですさまじい。
ハイブリッドですごい歌詞です。
ひとつの恋を「振り切った」ときに現れる
美しさみたいなものが
ギュッと2行に集約されているように感じます。
>もう息も止まるときめきすらない今
>酸素吸ってはいっちょ泳いでくか like na nana na na
ここの表現も好き!(そしてメロディも好き!!!)
「息の止まるようなときめき」
という比喩的な表現から出発して、
そんな素晴らしい瞬間など
もう訪れることはないと分かって、
「酸素吸って」という
物理的な表現に着地する。
非常にテクニカルです。
さらにそこから繋がる
「いっちょ泳いでくか」
もイイですよね~~~
他人の力を恃まず、今後は自分自身の力だけで
荒波をスイッと泳いで行ってやるか。
という感じで
「恋の終わりや別れを重く捉えずに、
あえて軽く言い放つ」
といった雰囲気が、
自立した強い女性像を想起させます。
また
「息がの止まるようなときめき」
というフレーズから
「酸素」という具体的なモチーフが選択され、
さらに息継ぎの連想から
「泳ぐ」という動作が選択され、
そこから美しいマーメイドのようなイメージさえ連想することができます。(ちなみにマーメイドって肺呼吸なんでしょうか…?)
この連続性こそが
「メタファーの跳躍力」
換言すると
「異なった2つのイメージ間をジャンプする力」
です。急に真面目な解説っぽくなってきた!
別々のイメージだったものが自然に繋がり
意味の通るひとつの文脈となって
説得力のあるストーリや情景が生まれる。
巧みな詩(詞)の要件のひとつは
このメタフォリカルな上手さのことです。
少し話は逸れますが…
逆に上手でない詩(詞)というのは、
「一見意味ありげに見えて
どこにもジャンプできない」
ものを指すそうです。
いかにも意味深なそれっぽい言葉だけを並べて、実はそれらが繋ぐはずの窓と窓、ドアとドアは閉じられている。またはジャンプ台として機能していない。そんな詩。深読みするだけ時間の無駄。いわば詐欺みたいなものです。
でも言葉遊びや音の気持ちよさ(特に韻とか)のことばかり考えてるといつの間にか俺もそんな歌詞になっちゃうので… 反省ですね。
ラップならとりあえず
(1)メッセージや主張
があれば十分ですね。さらに
(2)詩的情緒と
(3)音の気持ちよさ を足せれば満点です。
いや簡単に言うけどそれって難し過ぎる。
いつか満点獲ってみてえな。
本題に戻ります。
この曲はいわゆる「失恋ソング」でしょうか?
そう感じた方もおられると思いますし、
色んな解釈が可能なはずです。
ただ曲調からも、一般的な「失恋ソング」の
過去に囚われた哀愁漂うような雰囲気はなく
「失恋をあえて明るく割り切ったり、
思い出を全部まとめて鍵掛けて捨てる!」
ような強い態度・前向きな姿勢が
描かれた曲なのではないかと
私は解釈しています。
(2) 今回のカバーのテーマについて
この原曲に惚れ込んだ結果、もしこの曲を男3人でラップカバーできるならどうしよう?と色々思案いたしました。
その結果、
「前を向いて歩き出す女性目線に近い形で、
過去の束縛や未練からの解放を祝福しながら、
これからの歩みを応援する」
的なスタンスに落ち着きました。
あまり過去の恨みごとばかり言ってても暗い雰囲気になってしまうし、もしこのカバーを聴いてくださった方が、堂々と次の一歩を踏み出せるような、それを後押しできるような、そんな雰囲気のラップ詞にできたらいいなと思いました。
そして、テーマの根幹に関わる部分なので、
動画についてのお話も先に。
今回イラスト・動画を手掛けてくださったのは
STAR BURSTの動画も作ってくださった
北川ミズキ様です!
https://twitter.com/kitami_mk
究極に可愛いお顔と衣装デザイン!
アイドルだ!3人組アイドルクルーだ!
さらに原作のモチーフ(幾何学模様や、ホログラムマーブル系統色)を使いながらも、全く新しい画面構成や演出を多数工夫していただきました。
この3名のキャラクタ(決子、ハム子、ベル子)はRainyBlueBellの黎明期に路地子様がデザインしてくださったもので、以来ずっと3人のアバター的な形で存在し続けています。
もしRBBという3人組を知らない方が
全く初見の状態でこの曲を見つけて
「女の子3人組の曲か?聴いてみよ」
とホイホイ釣られてきたところに
重たいラップを喰らわせる…
という不意打ちのような行為を、
昔から(半ば意図せずに)やってきました。
ギャップ萌えというやつですね。
それを踏まえて、今回の映像についてミズキ様と相談するうち「3人の女の子が、それぞれ辛い恋愛を抱えていたけれど、3人で同時にそれを振り切って前を向く!」という瞬間を表現していただくことになりました。
それぞれが抱えた呪縛(首輪 足枷 手錠)を
それぞれが手に持った武器で直接破壊して、
それぞれの好みのファッションを身にまとい、
それぞれの方法で新しい出会いへと歩きだす、
的な感じです。
ちなみに過去のお姫様ファッションにあしらわれた花は テッセン という花だそうです。花言葉は「甘い束縛」「縛りつける」「高潔」。束縛の強い彼氏だったのでしょうか。
そこから一気に変身して露出度が上がって「行くぞオラァ!!!!!」って感じの楽しい動画にして頂きました。
最高のイラストと動画を、
毎回ありがとうございます!!!!!
(3) カバーの追加歌詞について
ようやくここから
カバーの歌詞の話です!
主にイルベル作詞部分を抜粋しつつ解説します!
>"So long."
「さようなら、お元気で」という意味です。
スペルはLだけどRの発音(Wrong) してます。
右(R)も左(L)も分からない、といった皮肉です。
>そのLからR カラカラ鳴る頭で
左右に頭を振るとカラカラ音が鳴るんじゃねえか、ってくらい「脳が詰まってない」「スカスカの軽い頭」という意味のつもりだったのですが…
今ようやく改めてこれを書いてて気づいたんですが、これってひょっとしてあまりメジャーな表現ではない…?ウチの地元だけで言ってた悪口なのでしょうか…?
>軽々しく転がしたら屍(カバネ)
「ウチら最強女子たちを軽く扱おうなんて
チョーシこいた男は撲殺だかんね!」
ていう意味です!
>Baby let me do it do it
「ねえねえ、それアタシに殺らせてよ!」です。
おい序盤から物騒すぎるだろ!!!!! 正気か!
>あなたの元には戻らない
>踊るならもっとヤバい方
「彼のところには戻るつもりはありませんわ。だってこちらの殿方のバースの方がイルですもの。」
>愛憎 倍増 ない将来像
「愛が憎しみに転じて、それが思い返すたびに増して… ああもう、将来なんて見えませんわね。」
>So wrong
「全ては間違いだったのですね。左様なら、ごきげんよう。」
ここでRからL、またLからR… と末尾から冒頭に延々とループするような仕掛けになっています。
>Loveヴァリガルマンダ
Giga様作曲の「ギガンティックO.T.N ver れをる」の一節からの引用です。
この「ヴァリガルマンダ」という歌詞について、以前に(何年前だろう)れをる様・Giga様とお話をしたことがありました。それ以来、いつかGiga様のトラックでラップカバーする機会があれば是非この部分を含めさせていただきたいとずっと願っていました。夢が叶いました!!!
ちなみにNo title-に収録されていた
「Gigantic O.T.N -Big Death Edition-」
も超ハードでヤバすぎです。
んで結局「ヴァリガルマンダ」って何なんだよ!!!!!
細かく解説すると長くなるのですが…
ひとことで言うと
Final Fantasy VI という古のゲームに出てくる幻獣 です。
いや、それと今回の歌詞に何の関係が…?
とツッコみたくなりますよね!
もうちょっと続きます!
>Weトライディザスター
これは何?トライディザスターって何?
細かく解説すると長くなるのですが…
ひとことで言うと
Final Fantasy VI という古のゲームに出てくる幻獣である
ヴァリガルマンダが使う技 です。
Tridisaster(三重の災害)みたいな意味で
炎・氷・雷の三属性複合攻撃です。
なんか三属性複合攻撃って、RBBみたいじゃない?
と思って勢いで歌詞に採用しました。
>フリジングダスト
これは何…?
そう、お察しの通り、
細かく解説すると長くなるのですが…
ひとことで言うと
Final Fantasy VI という古のゲームに出てくる
敵モンスターが使ってくる技 です。
氷漬けになって動けなくなります。
>コーリンゲンでGood-bye
これも…?
そう、Final Fantasy VI に出てくる村 です。
どんだけこのゲーム推してんだよ!!!!!!!!
って感じですね!
このゲーム中盤に出てくるコーリンゲンという村があるのですが、そのあたりのストーリーを全部スキップしていきなりエンディングに行けてしまう手順(バグ)が色々存在します。
ですが非正規の手段でエンディング呼び出しを行うと「エンディングでコーリンゲンの町が画面内に映った瞬間にフリーズしてイベントが進行しなくなる」という、バグがバグを呼ぶ現象があるのです。
これを有識者たちは
「コーリンゲンフリーズ」と呼び
恐れていました。
要するに???
「過去の思い出を凍らせて進行不能にする」
ことを表現したかったのです。
(1行で要約できてしまった…)
>蘇る緑 君なしで再生開始
「蘇る緑」は、そのゲーム内で流れる
壮大なエンディングテーマの曲名です。
「世界が崩壊した後に萌え出ずる緑の芽吹き」
つまり
「新しい世界を、君なしでまた作っていくよ」
というくらいの意味です。
「このサビどういう意味っすか???」
と雨天に問われて、
「深い意味はないのでお気になさらず!!!!!」
とだけ答えてました。(適当)
この場を借りてちゃんと説明しましたが、
改めて考えると
結局あんまり深い意味はなかった。
細かく解説すると長くなる気がしたが
要約してみると実は1行で十分だった。
でもわざわざ読んでくれてありがとう。
>ドッキリ度はドッペルゲンガーか
>ってくらいに目で追ってリメンバー
この直前のAOの「ごっきげんいか~が?」のフロウがとっても可愛くて面白かったので、どうにかしてリズムを合わせたくて韻を繋いだ部分です。
「別れた彼に偶然会った」「割り切ったと思っていたのに、つい目で追ってしまう」「昔のことを少しだけ思い出してしまう」
そんな瞬間です。
ドッペルゲンガー(独: Doppelgänger)
は自分の姿をした分身みたいなもので、
生霊とか超常現象の類であり、
「見ると死ぬ」とか「死の前兆」などと言われる存在です。
そのくらい偶然出会ったのがドッキリ!っていう意味です。
>Cut! 鈍器でまず一切れずつチョップしてく
>この未練と思い出の全部
「けれどそんな未練や思い出も、ドスドスッと叩き切っていこう」といった決意を描いた1シーンです。
「鈍器」つまり決して鋭利な刃物ではなく
スパッと気持ちよく「切れる」こともなく
獲物の重みを確認し、両手に体重を込めて
手応えを感じながら押し潰すイメージ。
「一刀両断」できるならば
楽かもしれませんが
人と人との繋がりは
そんな風にはいかないのでしょうね。
それと、この後のサビ部分の雨天の
>後ろ見ない様に細工を
という部分がとても好き。この箇所は、人によって色んな想像ができるんじゃないでしょうか。
「未練がましい想いがまた沸き起こってこないように」するために、あなたならどうしますか?
過去の写真を消す?
過去の履歴を消す?
プレゼントを捨てる?売り飛ばす?
一緒に聴いた曲のことを嫌いになる?
一緒に食べたことのあるお店を避ける?
SNSをブロックする?連絡手段を絶つ?
周りの友達に愚痴る?協力してもらう?
この短いたったの1フレーズで、そういった選択肢の全てを想像させる力があるのがすごい!
あとAOの中で他にも好きなフレーズは、
本記事の冒頭にも挙げた
>「脳内裁判 満場一致バイバイ」です!
これも映像付きで想像しやすいですよね。
「脳内裁判」つまり頭の中で
自分と同じ顔をしたちっちゃい陪審員たちが
あらゆる過去の言動や証拠を持ち寄りながら
今後どうするべきかを裁いているのでしょう。
「別れるべきかどうか?裁判員の皆さん、最終判決をお願いしまーす!」
「別れる!」
「別れる!」
「別れる!」
「別れる!」
「別れる!」
「はい満場一致~!クソ彼氏バイバ~~~イ!」
っていうノリの明るい法廷!!!!! 楽しそう。
そしてこのフレーズを原曲のメロに上手く合わせてるのが上手い!
…という感じで、色んな聴きどころや発見が
まだまだたくさんあるので(俺も気づいてない)
ぜひ皆様も一緒にリピートして頂けると幸いです。
最後になりましたが、
最高のクオリティのMIXをして頂いたのは
n/a様 https://twitter.com/n_a_1817 です!
あなたにここまで美しくMIXして頂いたお陰で
カバー全体のクオリティが爆上がりいたしました。
とても聴きやすくて艶やかで、彩りのあるMIXです。
誠にありがとうございました。ぜひまたお願いします!
とても長くなりました!最後にご挨拶を!
2023年、楽しかった!頑張ったーーー!
本当に素敵な一年になりました。
来年もよろしく!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?