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24歳、春。私は新しい土地で新生活をスタートさせた。

別に好きで引っ越したわけじゃない。転勤というやつだ。

引っ越した場所はなかなかの都会だった。

ひしめくビル。歩くとぶつかる人。大通りには排気ガスの匂いが充満していた。

中華料理店の排気口から漂ってくる匂いは私をなんとも言えない気分にさせる。

おいしそうな匂いなのに排気口は油で黒ずんでベトベトで。

素直においしそうと思いたくない天邪鬼な気持ちのまま自然光が一切ない地下へ潜る。

みんなゾンビみたいな顔してるなあ。

そう思っている私もきっとその種族の一員。

駅から会社までは自転車で10分。

会社に着きたくなくて、いつも長い信号が少しでも長くありますようにと願ってペダルを踏む。

会社に着いたら地獄の始まり。

意味が分からない電話、仕事内容。

同期は先輩と仲良くしてるのに私は1人PCと向き合う。

この仕事ができてキャリアアップになる？

そんなこと考えず一生懸命やる人が成功するってネットで誰かが言っていた。

成功するってなんだろう。

お金持ちになること？昇進すること？転職でいい企業に行くこと？

…分かんないなあ。

別にお金持ちにならなくていいし、昇進なんてむしろしたくない。いい企業には行きたいかな。

でもいい企業ってなんだろう。

いろんな考えがぐっちゃぐちゃに混ざって真っ黒なボールが頭に浮かぶ。